第44話 ヒールでそんな声が出ますかね?
国家騎士や聖女様との未踏ダンジョン探索中に、俺がエミルにヒールをかけてもらっていると、聖女様がいつの間にか近くに来ていた。
「あの、エミルさん? さきほどのヒールでレベルアップしたかもしれませんね。なので私にもヒールをかけていただけますか?」
「聖女様にですか? もちろんいいですけど私、レベルアップした感覚がないんです」
「大丈夫です。エミルさんがどのくらい魔力を制御できているのか、見極めさせてください」
「はい、わかりました」
確か聖女様いわく、今のエミルは魔力の制御が上手くできていないらしい。
例えるなら、ほんの一滴の水でいいのに大きな滝が全て流れ込んでしまうと言ってたっけ。
「あの、どこをケガしたことにすればいいのでしょうか?」
「そうですね……、手にしましょう。先ほどリクトさんにも同じことをしていましたから」
俺が覚えている限り、聖女様は四回目のエミルヒールだ。最初が顔で次が胸、その次が背中だった。それを考えると手というのは、ずいぶんと普通に思える。
今この場には俺達以外にも十数人の騎士がいるから、こんな所で盛大に百合を咲かせるわけにはいかないのだろう。……いやいや、俺はなんて失礼なことを考えているんだ。聖女様にそんな不純な気持ちがあるわけないじゃないか。
エミルが聖女様と立ったまま向き合い、そっと手をとった。そしてそのまま両手で聖女様の手を優しく包み込む。
「ヒール……」
「んっ……!」
(なんだ今の声は……!)
聖女様の声で間違いない。まるで我慢しきれずに漏れてしまったかのようだ。ヒールでそんな声が出ますかね?
表情は普通に見えるけど、果たして聞いてよかった声なのか。
おそらく聞こえたであろうカリンカさんとミヤの様子を見てみると、二人ともほんのり頬が赤く染まっており、少しうつむいている。
まるでその表情を見られたくないかのようだ。ミヤに至ってはなんだかモジモジしている。
騎士の人達はというと、魔石の回収をしていたり周囲の安全を確認したりしている。
もちろん聖女様がどこにいるのかは把握してるんだろうけど、さっきの声が聞こえていたとは考えにくい。あれは多分聞かせたらダメなやつ。
「あの、聖女様? 私のヒール、少しは上達しているのでしょうか?」
「はっ……! そ、そうですね。魔力量は以前よりも増えていると思います。ただやはり制御については上手くできているとは言えないでしょう」
「そうですか……。でも! 私は負けませんっ! 私のヒールがみなさんのお役に立てたらいいなと思います」
(やっぱりエミルは本当にいい子だなー)
改めてそう思っていると、今度は聖女様が俺のところに来た。
「あの、リクトさん? 先ほどエミルさんからヒールをかけてもらっていましたけど、リクトさんは魔法に耐性がおありなのでしょうか?」
「魔法耐性ですか? 特に無いと思います」
その代わりダメージ調整というチートはあるけど、さすがに言えない。
「そうなのですね。それで、その……おかしなことをお聞きするようですが、エミルさんからヒールをかけてもらっていた時、どのような気分だったのでしょうか?」
「気分ですか? 考えたことなかったですけど、強いて言うなら『気持ちいい』ですかね。あ、別に変な意味じゃなくて、ケガが治っていく様子が心地よいってことです」
「気持ちいい、ですか」
聖女様はそう
なんだろう、エミルとはまた違った温かさと柔らかさ。聖女様とはいえ、俺にとっては年上の美人お姉さんだ。
「そうですよね! 気持ちいいと感じるのは私だけではないですよね!」
まるで子供のようにはしゃぐ聖女様。
「リクトさん、もしよかったら活動拠点を王都に移してみませんか? エミルさんが本格的に聖女を目指すのであれば、私も少しはお力になれると思います」
「聖女様が直々にエミルを指導してくれるということですか?」
「はい、それはもちろん親切かつ丁寧にさせていただきます。それにリクトさんからも何か特別な力を感じるのです」
「俺ですか?」
もしかしてチートスキルのことがバレてるのだろうか?
「別に俺はただの冒険者ですよ」
「そうでしょうか? いずれにしても今はここまでですね。先を急ぎましょう」
それから全員が集まり、再び先遣隊との合流を目指す。さっきまでと違うことは、パーティーメンバー全員が俺の至近距離から離れなくなったこと。
それにもう一つ。聖女様を見ていると、さっきの声が脳内再生されることだった。
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【あとがき】
ここまで継続して読んでくださり本当にありがとうございます! 間が空いて申し訳ないです。
実はこっそり新作はじめました。8月29日時点で4話なので、サクッと読めると思います。
尖った作品にしようと思い、ハーレムに焦点を合わせた(つもりの)作品です。
ランクイン3日目ながら週間ラブコメランキングで71位に入れました。
とはいえ転がるように落ちた経験もありますので、もし興味があれば、ぜひ応援よろしくお願いします!
https://kakuyomu.jp/works/16818792437888839611
公募とのタイミングを考えた結果、同時連載にはなりますが、この作品(可愛い女の子から——)をおろそかにするつもりはありません。
PVを含め、みなさんからの応援が本当に励みになっています。これからも楽しんでもらえるよう頑張りますので、よろしくお願いします!
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