第12話 勤務評価ランキング

 私が所長室でおとなしく待っていると界魔さんがやって来た。


「美音さん。配属の職場について簡単に説明しますね」


「はい。お願いします」


 私は少しドキドキしながら界魔さんの次の言葉を待った。


 いったいどんな職場に配属されるんだろう。


「美音さんの配属の職場は保養所係です」


「保養所係?」


「はい。このお役所では役人モンスターの普段の疲れを癒すために役人モンスターが安い金額で利用できる保養所があります。まあ、簡単に言えば職員専用の旅館のようなモノです」


「疲れを癒すための旅館なら温泉旅館みたいなモノですか?」


「そんな感じです。保養所はいくつかありますがその運営や管理をする担当が保養所係です」


 へえ、そんな仕事もこのお役所の仕事なんだね。

 役人モンスターさんだって仕事をすれば疲れるのは人間と同じってことか。


「保養所にはいろんな役人モンスターたちが来るのでモンスターを知るためにはよい職場かと思います」


 なるほど。所長の言っていたモンスターさんたちを知るのに適した職場かあ。

 いろんなモンスターさんと関われるなら少し楽しみかも。


「分かりました。頑張ります」


 どんな仕事でも私に与えられた仕事なら頑張るしかない。


「それとこれは貴女の勤務評価ランキングの順位です」


「勤務評価ランキング?」


「はい。このお役所ではどれだけ仕事に貢献したか及び周囲の職員や上司からの評価などを踏まえてランキングにして定期的に発表するのです」


 う~ん、学校の通知表みたいなモノ?


 私がその紙を見ると99999位と書いてあった。


 え? これってかなり下の方なのかな。

 そもそも何人中の99999位なんだろ。


「勤務評価ランキングの上位になればボーナスも多く貰えます」


「そうなんですか?」


「はい。このお役所にはこの本庁だけでなく出先の事業所も含めて約10万体の役人モンスターがおります」


「え? 10万体もいるんですか?」


 私は役人モンスターさんがそんなにいるとは思っていなかった。

 そもそもモンスターさんたちがそんなに数がいるとも思っていなかったから当然だ。


 10万体もモンスターさんがいるとちょっと怖いかも。

 役人モンスターさんが10万体ならこの世界のモンスターさんの数はもっと多いってことだもんね。


 そんな気持ちが私の心に過ぎった時に妖月様の声が聞こえた。


「当たり前だ。このモンスターお役所はこの世界の全ての役人モンスターが所属しておるからな」


「そうなんですね。それにしてもモンスターさんたちってたくさんいるんですね」


「……人間の方が人数は多いだろ」


 ん? そうか。日本の全ての公務員の数からいったらこの世界の役人モンスターさんたちが10万体しかいないなら確かに少ないかも。


「確かに。そうですね」


 すると私は10万体の中の99999位ってことか。

 ほぼ最下位だけど今日から仕事始めるんだから当たり前だよね。


「よいか? 保養所には界魔の申したとおり様々なモンスターたちが癒しを求めてやって来る。役人モンスターたちが日々の仕事を頑張れるように応援するのが保養所係の目標だ」


 なるほど。役人モンスターさんたちが仕事を頑張れるように応援する係かあ。

 縁の下の力持ちって感じかな。


「分かりました。頑張ります」


 私は妖月様に返事をする。


「では美音さん。保養所係の職場までご案内します」


「はい。よろしくお願いします。界魔さん」


 私と界魔さんは所長室を出てエレベーターに乗ってある階に着く。


「ここが保養所係のあるフロアです」


 フロアは机がたくさんあっていろんなモンスターさんたちがいる。

 人型モンスターさんもいるが妖月様たちのように完璧な人型ではなく角があったり尻尾がある人型モンスターさんたちだ。


「こちらです。美音さん」


「はい」


 私が界魔さんに連れられて行くとそこには紫の角と牙を生やして紫の尻尾のあるモンスターさんがいた。


「ブオン係長。新しい職員を紹介します」


 界魔さんに声をかけられたブオン係長と呼ばれたモンスターさんが席から立ち上がった。

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