転生寸前のプログラム
沼津平成
第1話 死(1~3)
1
「ちょっと、早くしてくれないかなあ……」
アルバートの職業は勇者である。自分の頭上に表示されているのは、死亡までの数字だ。死因は不明。しかしどうやらトイレすると増えるらしい。
ここは街でたった一つのコンビニエンスストアの、自動ドアのはるか700m手前、寿命の秘密に気づいた街の住民たちがコンビニのトイレに押しかけていた。
「あ、お前勇者か? 新聞で見たぞ」
中年の男がアルバートを呼び止めた。アルバートは笑顔を返す。ここの対応次第で、トイレまでの順番を譲ってくれるかもしれないのだ。
アルバートの寿命は、残り80秒。
2
「なあ、早くしてくれないのか……!?」
勇者アルバートはもう怒りに火がついた。しかしここで町民どもを蹴散らすわけにもいかず、彼は考えを改めた。
——では、どうしたらいいというのだ。
……死ねばいいのか?
寿命は、残り30秒を切った。
3
アルバートは狂っていた。間違いなく狂っていた。誰が見ても狂っていた。
がしかし、自分の寿命は自分しか見れない。
「くそ!! どうしていつもこうなんだ!!」
生きている間数々の困難を乗り越えてきたが、こんなの初めてだ。
(遺言? そんなの残したくないぜ。)
そう思っているうちに、意識がだんだん朧げになってきた——。
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