【建設】職人街:うちのたぬき知りませんか?

 自販機コーナーにもガシャポン・ポンコーナーにも、たぬきはいなかった。

 でもあの子がいるなら街だろうし、近付きたくないけどしょうがないし、【商店街】に入った。


「うちのたぬき知りませんか?」


「何よっ、あたしよりたぬきの方がいいっていうのっ!?」


 まず一軒目の店。この人はツンデールさん。ニジエールさんの末の妹で、年甲斐のないツインテールで、ツンデレロリババァをしている。


「いえ、ただ僕はたぬきを探しにきただけで……」


「たぬきなんて見てないわよ!」


「そうですか、では失礼します……」


「ちょっと待ちなさいよ! アンタうちの店に入って手ぶらで帰れると思っているのっ!? もうっ、何か買っていきなさいよっ!」


「じゃ、たぬき下さい」


「わかったわっ、3日後にまたきて! あたしが本当のたぬき汁を食べさせてあげる!」


「うちのたぬきを勝手に調理しないで下さいっ!」


 30シルバーで売られていたガチャポン・ポン『子猫シリーズ3』の三毛猫人形を買うと、ツンデールさんはデレた。

 彼女にガチャ運はないようだった。


「あの……うちのたぬき知りませんか……?」


「まあっ、アルトちゃん♪ そんなところにいないで、ママのところにいらっしゃい♪」


「いえあの、たぬきの居場所だけ教えていただければ……」


 この人はマミエールさん。ニジエールさんのお母さんだ。胸が大きいところ以外は娘さんにそっくりだ。


「アルトちゃんがお探しのたぬきさんは、こちらの金のたぬきさんでしょうかー? それともこちらの銀の――」


 どこで仕入れたのやら、金と銀のたぬき像を見せられた。


「うちのたぬきはそんなにキリッとしてません。丸くて鈍くさくて普通の色のたぬきです」


「まあ、えらいわぁー♪ ではでは~、正直者のアルトちゃんには~、こちらの金と銀の――」


「いいからうちのたぬきを見たかどうか、それだけを教えて下さいっ!」


「シューン……。そうねー、きっと娘のところよー?」


 マミエールさんには7人の娘がいる。そのみんながこの商店街に自分の店を持っている。

 その全てを総当たりしていたら、僕は尻の毛まで抜かれてしまう。


 手招きするマミエールさんの誘いをかわしながら、それがニジエールさんの店であることを聞き出すまでに、説明しきれないほどの苦労があった……。



 ・



 ニジエールさんの店に入った。


「ひっひっひっ、ずいぶんやつれておるが、どうしたのじゃ?」


「この商店街にきた人はみんなこうなるでしょ……」


<「 こんにちは、ご主人様! 何かお買い物もきゅか? 」


「うん、ちょっと、たぬきを買いに……」


<「 ポンちゃんもきゅか!? ポンちゃんお買い得もきゅよ! 」


 やっと見つけたたぬきを抱っこした。

 こんな苦労をするくらいなら、そもそも1人で建築すればよかったのでは……。

 そう思いながらも、最近ふかふか感が出てきたポンちゃんを抱き締めると気も変わる。


「【職人街】を建てようと思うんだけど、ポンちゃんもくる?」


<「 そのためにポンちゃんを、探してくれたもきゅか!? 」


「おお、それは聞き捨てならぬな! わらわも連れてゆけ!」


「うん、いいよ。人数が多い方が楽しいし」


 ニジエールさんは僕の力を知らないはず。なのに知っているような素振りだ。

 しかし性格からして、ノワールさんが秘密の漏らしたとは考えにくい。

 僕は胸の中のポンちゃんを見下ろした。


<「 ぴくっ?! 」


「ツンデールさんが僕にたぬき汁を作ってくれるって」


<「 ぴぃぃっっ?! ポンちゃん美味しくないもきゅーっっ!! 」


「たぶんツンデールさんの冗談だよ。……たぶん」


 店を出て、商店街から離れて農地側に向かった。

 そして地図から内政画面を出して、【職人街】の建設コマンドを表示させた。


「ほぅ……これが話にあったやつか」


<「 ポンちゃん知らないですもきゅ! 」


 マヌケが見つかったようだな。

 事実上の自白をしてしまったポンちゃんをそっとしておいて、僕は予定していた候補地に目を合わせた。


 場所はコマネチ一族が管理する【畑】エリアの西側だ。


「あのエリアの光が強くなったのぅ? あそこに建てるということじゃな?」


「うん、あそこがいいと思うけど、どう思う?」


「我が商店街の隣でなければどこでもよい。カンカンやられたら営業妨害じゃ」


<「 ポンちゃんもここがいいと思うもきゅ! 工業には、水が大事ですもきゅ! 」


 2人の同意が得られたところで、僕はコマンドを実行した。


――――――――――――――――――――――――――――――――

 ザラキア領主:アルト(100/100)は【職人街】の建築を進めた!

 成功! 建設度が100%となり【職人街】が完成した!

 土地整備により木材29を獲得! 石材20を獲得!

――――――――――――――――――――――――――――――――


 畑の隣にあった荒れ地は、一瞬で光となってすぐさま散った。

 瞬時に整地を終わらせ、発生するはずのゴミを資源にしてしまうところがこの力はずるい。


 僕たちの目の前で、木工や鉄工の工場がなんと5軒も地面から生えていった。

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