11月22日 幽霊には“アレ”が効くらしい

気がついたらベッドの上にいた。


シングルサイズのスチール製のパイプベッドに、白いマットレスが引かれただけのシンプルなものだ。せめて枕と毛布ぐらいは欲しいと思った。それ以外は特にものはない、というより真っ暗な空間にベッドだけが浮かんでいる状態だった。


特にやることもないので寝てやろうかと思った時、唐突にベッドが大きく揺れた。驚いて上を見ると、巨大な女がベッドを鷲掴みにしていた。紙のように白い肌に少々パサついた黒髪の女性だ。彼女はこの世の全てが憎いと言わんばかりの恐ろしい形相でこちらを睨みつけてくる。


「………」


「………」


数秒間見つめあった後、おもむろに女は掴んでいたベッドを上下に振り始めた。振り落とされそうになり、慌てて私はサイドについている転落防止用の柵を掴む。何するんだ!と女に抗議したが彼女はただひたすらにベッドを激しく振り続けている。


最初は慣れない感覚に恐怖心を抱いたが段々と楽しくなってきた。なんともひねりのない単調な動きだが、まるで某夢の国にあるタワー・オ◯・テラーに乗っているかのようなスリルと浮遊感だ。しかしそう思っている間にも女は射殺さんばかりに私を睨みつけてくる。それを見ていたらなんだが楽しさよりも怒りの方が勝ってきた。


さてどうしてやろうか、と考えた時、私は幽霊にはファブ◯ーズと下ネタが効くということを思い出した。残念ながらファ◯リーズはこの場にないので私は下ネタでこの女と戦おうと決意した。


「ピ──────────!!!!ピ─────!!ピ───ッ!!ピ──────────── !!───!!!!!」


私は叫んだ。思いつくばかりの下ネタを叫んだ。なぜか勝手に自主規制ピー音がつくセルフサービス付きだったのでなんと叫んだかは定かではないが、おそらくそれなりの単語を言ったのだと思う。気がついた時には女は消えていた。


目が覚めてから、私は本当に幽霊には下ネタが効くと証明した達成感と、久しぶりに見た夢がこんな内容でいいのかという困惑を同時に覚えた。

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