第28話

「霞さんっ、」




泣いて欲しいと言ったのは間違い無く私。


悲しいならそう言ってと願ったのも私。


でも彼が泣いている姿を目の当たりにすると、自分まで釣られて泣きたくなるのだからもうどうしようもない。




「その結婚は、貴方の意思ではないと思っていいのでしょうか」




彼の方へと手を伸ばして、綺麗な茶色い瞳から流れる雫を指で掬いながら問いかける。



ほんの少しの期待と、ほんの少しの絶望を織り交ぜたその質問。



貴方の意思でないならば、それだけでほっとする。


だけれど、貴方の意思ではなく結婚が決まったのなら、それは貴方にとってどれほど苦しいことか。





「僕の意思やないことくらい、撫子が一番よお分かってはるんと違います?」





貴方の今後を考えただけで、私まで辛くなる、なんて。




そんな偽善的な台詞しか言うことができないのが心の底から悔しい。

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