第15話

心のどこかで疑っていた。


私をからかう為に八重さんと手を組んだのかと思った。


現実を、受け入れられなかった。





「霞さん、どうして」





「…まあ、落ち着きや、撫子。ひとまずその襖閉めてこっちへおいで」





本人を目の前にしてやっと現実味が増して来た。





彼の姿を視界に捉えて、やっと事の重大さを理解し始めた。




カタカタと震え始めた手を動かして襖を閉めれば、電気の付いていなかった部屋の中が一気に暗くなる。





「いい子や。ほら、こっちやで」




心許ない視界ではなく、彼の声だけを頼りに霞さんの方へと歩いていく。

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