フード
「...お兄ちゃん..?」
僕はため息をつくと
「あいつ、何だと思う?」
「...何か哀しげな人。明るさで隠してる感じがする」
「そうか?」
そう言われればユーナの強引さと明るさは少し空元気な気もする。
「お兄ちゃんが助けてあげなよ。エッチしちゃったんだし」
由依は明るく笑うと自室に戻って行ったのだった。
何でそうなった?
僕はユーナの謎を考え込んでいた。
そして月曜日。
朝のバス停は一段と冷え込んでいた。12月になり寒さがいっそう増している。
星乃先輩はいつも通りの暖かな格好でありながら、寒そうにしながら本を読んでいた。
「..先輩...」
僕は小さな声で声をかけるが星乃先輩は気付いていないようだ。
僕は星乃先輩に声をかけてみたのだった。
「おはようござ...ます...」
僕は途中で言葉を止めた。
星乃先輩の後ろにいた人物がいたからだ。
その人物はおどおどとした感じで俯いているため顔は見えない。
フードを被り、完全に顔が隠れてる。少し怪しいが寒さ避けか。
「おはよう」
先輩は僕に気づいて挨拶をしてくる。
「今日は寒いね。もっと寒くなるのかな...」
星乃先輩がそう言う。
「そうですね...」
やがてバスが来て、僕らはバスに乗り込む。
フードの人物も入ってきた。
席はいくらでも空いているが、なぜか僕らのすぐ近くに座る。
先輩も少し気になる様だった。
僕はいつか先輩が話していたストーカーのことを思い出していた。
「お前たち、勇者を名乗る変な女に会わなかったか?」
やがてフードはそう話しかけてきた。その声は女性のものだった。
僕と星乃先輩が顔を見合わせる。
「会いました...」
先輩が答えるのだった。
「そうか...気をつけろ」
フードはそれだけ言うと俯くのだった。
やがてバスは止まり、降りようとすると
「待て!」
とフードが言うのだった。
僕はフードの方を振り返った。
するとフードは顔を手で押さえて言った。
「私はお前たちの味方だ。何かあれば私を頼れ」
僕たちは何も言わずバスを降りた。
怪しい。なぜ僕らの周りには怪しい人物ばかりが現れるのか。
「桜井くん...あの...」
「大丈夫です」
先輩は不安そうな目をしていた。
「大丈夫です。何も起きません」
僕は星乃先輩を安心させたい気持ちになった。
先輩は安心したように微笑むと僕の方を見たまま頷いたのだった。
僕たちは校門を抜けると同時に
「桜井!」
山田の声が聞こえたので、振り向いた。
「...山田...」
僕は山田を見つける。
「あれ、保科先輩」
彼女は星乃先輩を見ると挨拶をしたのだった。
「おはようございまーす」
「おはようございます」
「桜井がお世話になっています」
山田は笑顔で余計なことを言う。
「私のほうが、桜井くんのお世話になりっぱなしよ」
「あれ?意外、そんな頼りになりますか?こやつ」
「...そっ...そうよ?桜井くんって何だか頼りがいがあって..」
「なるほど、なるほど」
山田がにやけるのが分かる。
「先輩!行きましょう!」
僕は強引に彼女を先に行かせたのだった。
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