第2章43話:対決

ラッガルの斬撃。


上段の攻撃である。


俺は右方向みぎほうこうよこステップをして回避しつつ……


左足ひだりあしじくにして、くるりと回り、回転斬かいてんぎりを放つ。


ガキィンッ!!


ラッガルが俺の斬撃を防ぐ。


「ははは! ルーカーのくせに、俺の攻撃をかわすとはな。それになかなか重い斬撃だ!!」


ラッガルがロングソードをブン、ブンと振り回して斬撃を放ってくる。


俺はそれを受けたり、いなしたり、避けたりしながら、的確にかいくぐり、ラッガルに反撃を放つ。


その反撃にラッガルが合わせてきて、つばぜりあいの状態になる。


「どこでそんな剣を習った? ルーカーとしては信じがたいレベルの実力だぞ」


「独学だ」


と俺は短く答えた。


嘘はついていない。


強いていうならば、ゲームで学んだというべきか。


「そうか。ルーカーでなければ、俺のもとで雇ってやっただろうにな!」


ラッガルがロングソードを肩にかつぐように構える。


その構えに、俺は見覚えがあった。


(来るか……最初の大技おおわざが)


と俺は身構みがまえる。


「受けてみろ! 俺の必殺技だ。ドラアァアアアアッ!!!」


ラッガルがロングソードを構えた状態で、まるで大車輪だいしゃりんのごとく縦回転たてかいてんしながら俺に突っ込んできた。


ラッガルの大技の一つ【車輪斬しゃりんぎり】である。


こうから受けたら激しい斬撃の連打を食らい、こちらの剣を叩き折られて死ぬことも有り得る。


しかし的確に対処することで、反撃チャンスにすることも可能だ。


(ここだ!)


と俺はラッガルの動きを見切る。


俺はまず左前ひだりまえへ移動。


次に右前みぎまえへ移動するジグザグなステップで、回転するラッガルの側面に入り―――――


横向よこむきに剣を突き出して、ラッガルの側面から斬撃を差し込んだ。


「ぐぬっ!!?」


ラッガルが苦悶くもんの声を上げた。


回転をやめて、体勢を立て直す。


俺が放った斬撃は、ラッガルの右上腕部みぎじょうわんぶを切り裂いていた。


ラッガルの右上腕部みぎじょうわんぶ斬傷ざんしょうが走り、血が吹き出している。


「バカな……? 【車輪斬しゃりんぎり】にカウンターを合わせただと?」


とラッガルが驚愕きょうがくしていた。


「お前の攻撃なんざ、初見で見切れる」


と俺はあおるような言い方で、そう告げた。


実際はゲームで散々さんざん見たから、初見じゃないのだが……


初見で対処したかのように宣言することで、ラッガルにプレッシャーを与える狙いだ。


実際、ラッガルの表情には動揺の色が広がっている。


「……やはり只者ただものじゃないな。本当にお前、ルーカーか?」


階級判定魔法かいきゅうはんていまほうを使えばわかるだろ。ルーカーであることは、隠せない事実だ」


「……」


ラッガルが強い警戒心けいかいしんをあらわにしながら、俺をにらむ。




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