第2章41話:襲撃

<ロッシュ視点>


俺は静かに弓を構えた。


矢をつがえて、引き絞る。


まずは馬を狙う。


「……」


集中力を高める。


そして。


矢を放った。


くうを裂いて、矢が馬へと吸い込まれていく。


「ヒヒィィインッ!!!」


矢が馬の胴体へと直撃した。


馬がもだえながら転倒する。


「な、なんだ!?」


御者ぎょしゃが慌てふためく。


俺は素早く弓矢ゆみやを片付けて、雑木林ぞうきばやしから飛び出した。


高台たかだいの下へと着地……と同時に、地面を蹴って、御者へと飛びかかる。


「ひっ!?」


御者が悲鳴を上げようとしたが、その前に俺は、御者に剣を振り下ろした。


「ぎゃ……ッ」


首を切り裂かれた御者が、御者台ぎょしゃだいから転げ落ちる。


馬と御者がやられたことで、馬車は完全に停止した。


兵士たちが口々に叫ぶ。


「て、敵襲だ!」


「盗賊か!?」


「わからん!」


「御者がやられたぞ!?」


突然の事態に、混乱しているようである。


俺は近くにいた女兵士おんなへいしに斬りかかった。


「くっ!?」


その女兵士は、俺の攻撃に対応できず、あえなく斬撃を受けた。


血がほとばしる。


女兵士が倒れる。


「こ、こいつ!?」


男兵士おとこへいしが声を漏らした。


俺は素早く剣を横凪よこなぎに振って、男兵士の首を切り裂いた。


男はあっけなく絶命する。


と。


そのとき。


「ルーカーだ……!」


男兵士が叫んだ。


どうやら階級判定魔法かいきゅうはんていまほうを使ったようだ。


俺がルーカ―であることがバレる。


他の兵士たちも口々に言う。


「ほんとだわ、ルーカーよ!」


「こいつ……自分が何をしたかわかってるのか!?」


と兵士たちに動揺が広がる。


すると、兵士たちを治める兵士長へいしちょうが、青塗りの馬車から出てきた。


兵士長は周囲の状況をざっと把握してから、告げた。


「よくも仲間を殺ってくれたな」


彼は俺を睨みながら、さらに言った。


「貴様、ルーカーか。人間以下にんげんいかの存在であるルーカーが、よもや監視兵かんしへいの馬車を襲うなど……死罪をまぬがれんぞ」


「安心しろ。俺は捕まらないから、誰も裁けない」


と俺は答える。


兵士長が俺をにらむ。


そして彼は、命令した。


「やれ!」


すると生き残った兵士たちが武器を持って、俺に斬りかかってきた。


最初に斬りかかってきたのは、男兵士だ。


ショートソードを振りかぶってくる。


「遅い」


俺はつぶやきながら、剣を水平に走らせる。


その一閃いっせんが、男兵士の腹を切り裂いた。


「がはっ!?」


血に沈む男兵士。


さらにもう一人の男兵士が、横凪よこなぎに剣閃けんせんを放ってくる。


俺はそれを、斬撃で打ち返した。


「ぐっ!?」


たたらを踏んだ男兵士。


そこに俺は踏み込んで、男兵士の首をハネる。


これで兵士のうち4人が死んだ。


残る兵士は1人。兵士長も1人。


生き残った女兵士おんなへいしが、冷や汗をかきながら言葉を漏らす。


「な、なんでこんなに強いの!? このルーカー!」


彼女はおびえて、足がすくんでいた。


チャンスだと思った俺は、素早く間合いに踏み込んだ。


「ひっ!?」


女兵士おんなへいしが恐怖にゆがんだ顔をする。


俺はそんな女兵士おんなへいしに剣を走らせ、斜めに切り裂いた。


「がっ……!?」


さらに俺は剣をいで、首をハネとばす。




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