第2章34話:ダンジョン

シフォンドダンジョン。


推奨レベルは17ぐらい。


初心者を脱したぐらいの冒険者がやってくるダンジョンだ。


ちなみに俺のレベルが11。


ラミアリスのレベルが12。


まあまあレベル不足である。


しかもルーカーなのでユニークスキルが使えないという縛りつき。


この状況ではボスを倒してダンジョンクリアすることは不可能だし、するつもりもない。


なんなら魔物と接敵するつもりもなかった。


魔物と戦わなくて済むルートを選んで、かく通路つうろまで一直線いっちょくせんといこう。


「ダンジョン内は素早く巡りたいから、駆け足でいくぞ」


と俺は指示してから、走りだす。


ラミアリスも了解して、俺に追従してきた。


すぐに分かれ道が現れる。


「こっちだ」


と俺は指示した。


また分かれ道になる。


そこを越えると、さらにいくつもの分岐があらわれる。


「次はこっち……ここは右……ここは左だ」


俺の頭の中にはダンジョンの地図が完璧にインプットされている。


目をつむっていても目的の場所に辿り着けるぐらいだ。


「ここをまっすぐいけば一番近いが、魔物がいるので迂回するぞ」


なるべく魔物と戦わないルートを取りつつ、進んでいく。


やがて階段があらわれた。


「階段を下りるぞ」


俺たちは駆け下りる。


階段を下りた先は、何もない行き止まりである。


「はぁ……はぁ……はぁ……ふう……」


ずっと走ってきたので、俺もラミアリスも息が荒れていた。


汗をぬぐう。


「……行き止まりね?」


とラミアリスが聞いてきた。


「ここに隠し通路があるんだ。壁を3回攻撃したら、通路が現れる」


俺はそう告げてから、行き止まりの壁をショートソードで3回叩く。


すると。


壁が消えて、通路が現れた。


「ほんとだわ……! こんなの、誰も気づかないでしょ?」


「いや、どうかな……」


さっきの階段を下りたら、この行き止まりにたどりつく。


行き止まりの他に、いける道もないし部屋もなく、魔物もいない。


つまり『階段を下りたのに何もない』という状況だ。


普通のプレイヤーなら、この行き止まりの壁に、何かあるのではないかと疑うはずである。


だから隠し通路がないか確認するため、攻撃したり、魔法をぶつけたりするだろう。


3回攻撃しないと通路が現れない――――という仕様は確かにわかりにくいが、絶対に気づけないというほどではない。





俺たちはさっそく隠し通路を進む。


一度だけがりかどがあったが、一本道いっぽんみちの通路。


やがてたりに扉があった。


扉を開けると、隠し部屋である。


部屋の中央には宝箱が置いてある。


俺は宝箱を開けた。


アイテムバッグが2つ入っている。


1個は俺のぶん。


もう1個は、ラミアリスのぶんだ。


「あたしのぶんもあるのね」


「まあ……な」


このアイテムバッグは、1人でダンジョンを訪れたときは1個しかない。


今回は2人で訪れたから2個なのである。


いや……どうかな。


ゲームではそうだっただけで、異世界では、最初から2個のアイテムバッグが配置されていた可能性がある。


まあ深く考えても仕方ない部分だろう。


「ちなみにアイテムバッグといっても【低級ていきゅうアイテムバッグ】だから、収納量しゅうのうりょうはそんなに多くないぞ」


「ふうん、そうなのね。でも、あるだけマシよね」


「もちろんだ」


たとえ低級アイテムバッグでも、通常のバッグよりは何倍も収納力がある。


だからこそわざわざダンジョンに入ってまで、このアイテムバッグを取りにきたんだし。


俺たちは、さっそくバッグの中身を、アイテムバッグへと移した。


アイテムバッグに物を収納するときは、収納したいアイテムに手をかざしながら『アイテムイン』と詠唱えいしょうする。


逆にアイテムバッグの中から収納したアイテムを出したいときは、取り出したいアイテムをイメージしながら『アイテムアウト』と詠唱する。


また、アイテムバッグの中に何が入っているかを知りたいときは、目を閉じて『アイテムリスト』と詠唱すると、アイテムバッグの中身がリストアップされて脳裏に表示される仕様だ。


ちなみに詠唱えいしょう自体は声に出さなくても、心の中で詠唱しても構わない。


「よし」


バッグの中身をアイテムバッグにうつし終えた。


さらにバッグそのものも、アイテムバッグに収納する。


アイテムバッグは腰に提げておく。


ラミアリスも一連の作業が終わったようだ。


「もうここには用はない。帰ろう」


「わかったわ」


目的のものを手に入れたので、さっさとダンジョンを出ることにする。




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