第1章13話:弓集めと別視点

用が済んだので【クラゲいし小遺跡こいせき】をあとにする。


続いて俺が訪れたのは、ゴブリンの縄張なわばりである。


ゴブリンがたくさん生息しているスポットだ。


ここに訪れた理由としては、ゴブリンアーチャーという魔物を倒すためである。


ゴブリンアーチャーは弓を持ったゴブリンしゅ


倒すことで【ゴブリンの小弓しょうきゅう】と【ゴブリンの小矢しょうや】を入手することができる。


もちろんゲーム知識である。


(ルーカーはここで弓を入手するかどうかで、難易度が段違だんちがいに変わるんだよな)


大きな岩石が横たわる場所に、ゴブリンアーチャーが2体いる。


俺はしげみから様子をうかがう。


――――今だ。


斧を持った俺は茂みから飛び出す。


「ぐぎゃっ!!?」


まず一匹目いっぴきめを即座に殺す。


すると、もう一匹のゴブリンアーチャーは、ビビって逃げ始める。


その背中に、俺は斧をぶん投げた。


逃げていくゴブリンアーチャーの後頭部こうとうぶに、見事、斧が突き刺さる。


倒したゴブリンアーチャーから、弓と矢を回収する。


2体倒したので、弓は2ちょうゲット。


矢は1体あたり4本ずつ持っているので、2体で8本の矢をゲットできた。


「あなたの知識って……本当に恐ろしいわね。まさかここで弓が手に入るなんて」


とラミアリスが驚愕していた。


「そういえば、あんたは弓を使えるのか?」


「一応、兵士見習へいしみならいのときに練習したから。……まあでも、そこまで射撃能力しゃげきのうりょくに期待しないでほしいけど」


「十分だ。使い方は難しくないから、持っておけ」


と俺は弓と矢をラミアリスにも渡した。


これらの弓は、もちろん、このあと衛兵と戦うときに用いる。


衛兵は、俺たちが弓を入手したことを知らない。


だから有効な不意打ちになるだろう。





しばらくゴブリンアーチャーを狩る。


ついでにフラウにゴブリンどもを狩らせて、レベリングもおこなっておく。





<衛兵視点>


シフォンド森林の前。


ロッシュとラミアリスの捜索をおこなうため、衛兵たちが集まっていた。


総勢そうぜい12人である。


「では、これより、逃亡したルーカー2人の捜索そうさくをおこなう」


衛兵隊長えいへいたいちょうが主張した。


深い緑色の髪をした男性の隊長である。


瞳の色は赤色。


身長は175センチほど。


ロングソードを腰にたずさえている。


服装は、他の衛兵よりも少しだけ重厚な鎧に身を包んでいる。


衛兵隊長だけが着る鎧である。


するとチャラついた茶髪の男性が言った。


「それにしても、12人で捜索かよ。たかが2人のルーカーを探すのに、大げさすぎじゃね?」


このチャラついた衛兵の名前はクレオンである。


身長は167センチほど。


瞳の色は黄色。


まるでおおかみのごとき雰囲気を持っており、八重歯やえばが特徴的だ。


衛兵隊長が答える。


「ルーカーは、いくらでも使い道があるからな。どんなことをしても許される存在ってのは、貴重なんだよ」


ルーカーは殺してもいい存在だ。


つまりルーカーに対して、何をしたとしても、罪は免除されるということ。


そういう人間の使い道はいくらでもある。


たとえば、落盤らくばんの危険がある炭鉱たんこうで働かせたり……


たとえば、人が立ち入れるかわからない危険地帯きけんちたいに調査にいかせたり……


たとえば、人間を材料にして行使する大魔法だいまほうを使うときにルーカーを用いたり……


クレオンが告げた。


「ははは。ほんとにマジで、無能力者むのうりょくしゃに生まれなくて良かったぜ。ルーカーになんてなっちまったら、死んだほうがマシな人生しか残されていねえんだからよ」


世の中には、どうあっても貧乏くじを引かされる存在がいる。


それを安全地帯あんぜんちたいから笑うぶんにはいい。


しかし自分はそうなりたくないというのが、全員に共通する意識であった。




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