第17話
敵はウォーリア10。
隊長機のバウンド1。
対してこっちはファインさんの指揮するナイツ5。
アイスキャット1。
プロトナイツ1。
7対11か。
アイスキャットに乗ると後ろに立つナイツが構えた。
サンはウインドイーグルの整備が間に合わず、サンが乗っていたナイツは他の騎士さんが使っている為出撃していない。
完璧な状態はありえない。
「アイスキャットに乗って突撃します」
「うん」
『その前にナリユキ殿、無理はしないでいただきたい。特に1回の戦闘で2度ブルーモードを使うと機体が破損してしまう危険もあります』
「分かっています、出来るだけブルーモードは使わずに済ませます」
ブルーモードは3分しか持たない。
そしてブルーモードを1回使うと整備にかなりの時間がかかる。
1回の戦闘で2回ブルーモードを使うと壊れる可能性がある。
でも、少しでも危ないと感じたら即使う。
死にたくないし!
「前に走ってください!」
『うん』
横に並ぶウォーリアとバウンドが走り出したアイスキャットに魔法弾を撃ちこむ。
アイスキャットが左右にステップしながら前に氷のバリアを発生させて進む。
その後ろから等間隔で距離を取るナイツの肩から魔法弾を発射する。
『ウォーリア1機に狙いを絞れ!』
『『了解です!』』
アイスキャットはまだ余裕がある。
『ふう! く、ん、ん!』
いや、魔法弾を受けてスノーさんのバストが衝撃で揺れまくっている。
重力魔法とスライムスーツで衝撃は緩和されている、それでも魔法弾を受ける衝撃と走る衝撃で消耗するだろう。
しかも前方に氷のバリアを張り続けているから魔力酔いの心配もある。
敵部隊に接近するほど魔法弾の威力が上がって行く。
ゲーム訓練と実践は違う。
「少し早いですがジャンプします! 一瞬だけバリアを解除してください!」
一瞬前方のバリアが解除された瞬間に前にジャンプした。
僕が前にジャンプした事によりアイスキャットの加速が衰えた。
それでもまた加速してアイスキャットが地上を走る。
その瞬間に敵の動きが鈍った。
これをやられると怖いよね?
人生で初めて受ける攻撃だろう。
恐怖が少し和らいだ。
何度も自分に言い聞かせてきた。
シャトロクリムゾンよりは怖くない。
『落ち着け! 近くにいる青いラインのナイツを狙え!』
着地した僕に魔法弾の狙いが集中する。
ナイツの魔法弾でウォーリア1体が倒れ次のウォーリアに狙いを定めた。
アイスキャットが側面に回り込む。
おとりになるのも無駄じゃない!
その分みんなが自由に動ける!
手をクロスしステップを踏みながら前に出て攻撃のほとんどを躱して敵に急接近した。
前の実践より動けるようになった。
魔法弾を食らってもシャトロクリムゾンの攻撃より衝撃もダメージも弱い。
『凄い! ナリユキが強くなっているよ!』
メンテが感情露わにしてはしゃぐ。
僕の前にバウンドが走って来る。
『勝負だ!』
バウンドが僕に接近した瞬間、ウォーリアによる魔法弾の攻撃が止まった。
攻撃し続ければバウンドにも当たってしまう、敵に張り付いている限り攻撃出来ないだろう。
バウンドが右手に持つ斧を振りかぶりつつ左手の杖で魔法弾を放つ。
魔王弾を受けながら振り下ろされる斧を殴って弾く。
『ぐううううう! 何という威力とスピード、まるでシャトロクリムゾンと同じ!!』
また接近して蹴りを食らわせた。
よろめくバウンドを無視して急に後ろにいるウォーリアに迫った。
普通にナイツとウォーリアが戦えば数の少ないナイツが負ける気がした。
盾・剣・杖3種を同時装備出来ても数の不利は大きい。
そしてみんな緊張している。
ウォーリアを混乱させる。
『ま、待て! 私と戦え!』
バウンドが体勢を立て直しながら叫んだ。
「ウォーリアを無力化する!」
「いっけええええええ!」
肩に乗るピュアがパンチを繰り出した。
ウォーリアに急接近すると、ウォーリアは慌てて斧を振りかぶる。
斧が振り下ろされる前にウォーリアのお腹にパンチを叩きこんだ。
お腹を殴るとそこが激しく光る。
お腹はパイロットを守る為に魔力を多く消費する。
手加減して3発殴るとウォーリアが無傷のまま転倒し動かなくなった。
出来る事なら無傷でウォーリアを手に入れたい、そう言われている。
パイロットが魔力酔いを引き起こして動けなくなったっぽい。
手加減の仕方が何となく分かった。
騎士さんが驚く。
『こんなにあっさりと、無力化した!』
『行ける、ナリユキ殿がいれば数の劣勢を覆せる!』
『ナリユキ殿に続け!』
ウォーリアが隊列を崩した瞬間に2体目に迫りお腹にパンチを2発叩きこんで倒した。
その隙にアイスキャットがウォーリアにシールドラッシュをお見舞いする。
『はああああああん!』
スノーさんのバストが揺れに揺れている。
ウォーリアがボーリングのピンのように弾かれ完全に混乱したようだ。
でもアイスキャットも転倒した。
ナイツが転倒したウォーリアの腹部に魔法弾を撃ちながら接近して倒していく。
態勢を立て直したウォーリアとナイツが剣と斧で打ち合い、アイスキャットが立ち上がり死角からタックルを食らわせる。
おし、これで騎士さんたちがウォーリアを倒してくれるだろう。
横からバウンドが魔法弾を撃ちながら僕に迫って来る。
バウンドと向き合った。
バウンドに接近してお腹を殴ろうとすると斧を振り下ろされて弾かれた。
強い、でも、シャトロクリムゾンほどじゃない!
『青いラインのナイツ、姿を見せて名乗れ』
「名乗ろう! アニメの定番だよ!」
上に画面を出しだ。
でも動きは止めずパンチを繰り出した。
バウンドが腕で攻撃を避けて後ろに下がった。
「ナリユキだ!」
「妖精のピュアだよ!」
『くうううう! 妖精を従えし強敵ナリユキ、覚えておこう!』
「ウォーリアは無力化されつつあります、降参しましょう!」
『断る! 騎士として最後まで戦い抜くのみ! 特に妖精を従えし者を放置すれば士気にかかわる!』
バウンドの横腹を狙ってパンチを繰り出すと体を捻るようにして肩で防がれた。
技量が高い。
でも、杖を持っていた手がだらんと垂れて杖を落した。
向こうの技量は高くてもマシン性能はこっちが上だ。
でも無傷で機体を手に入れるのは難しい、無理か。
全力で何度もパンチを繰り出す。
『ぐおおおおおおおおおお!』
バウンドが連続パンチに対処しきれず体勢を崩した瞬間に顔とお腹、腕に攻撃を受けて倒れた。
残るウォーリアに手加減パンチを食らわせるとあっという間に戦いが終わった。
ファインさんが剣を掲げる。
『我らの勝利だ!』
『『わああああああああああああ!』』
『ナリユキ殿の勇気に敬意を!』
『『流石ナリユキ殿です!』』
ウォーリアに乗っていたパイロットが降りてホバーボードで逃げていく。
バウンドに乗っていた隊長も大きな音の花火を鳴らして逃げて行った。
「あ、逃げていきますけど?」
『逃がして都市を手に入れる事を優先しています』
「あ、そうなんですね」
言われてみれば制圧する兵士さんの数に余裕はない。
『街にいる帝国兵を追い出します!』
ハーフエッグの内部を守っていた兵士さんが街に向かって行く。
ナイツ3機も制圧に参加した。
『ウォーリアを回収するよ! このまま使えそうな機体は白く塗って運用するからね!』
錬金術師さんと騎士さんが協力してウォーリアを回収する。
『僕も手伝います』
『プロトナイツはダメだよ、すぐに整備したいのと消耗させたくないからね』
戦闘の後もあわただしくみんなが動き制圧が進んだ。
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