特訓Ⅰ:お詣りと練習と揚げたてドーナツ
「お詣りにいかない?」
麗子が給食を食べながら話を切り出す。
「え、何で?」
「二人とも再来週、大会でしょ? 願掛けに行こうかなって」
「なら、俺、良いとこ知ってる」
***
次の日の放課後。
駅前に4人が集合していた。
「それじゃあ、行きますか〜」
麗子が、ウェアラブルデバイスを自動改札にかざした。
1番線ホームに上がり、電車に乗る。
そこから二駅。
駅から降りて、さらに歩くこと10分。
そこには、神社が建っていた。
「ここ?」
「ああ。ここ、ご利益がすごいって、
麗子がきき、廉が答える。
境内に入ると右にお守りやおみくじなどを売る、社務所があり、奥の建物に渡り廊下でつながっていた。
手水舎で手を洗い、拝殿に向かう。
その時に、一人の巫女とすれ違った。
「あれ、ここ、巫女さん一人しかいないの?」
ほむらが気づく。
「だって、ひとりで十分だぜ」
よく見ると、社務所の受付口脇の軒下のところに絵馬は自販機で、おみくじはガチャガチャで売られていた。
「なんという、ワンオペ神社。っていうか、おみくじ、ガチャガチャで売っていいの?」
レイが突っ込む。
「とにかく、お詣りしようぜ」
今度こそ、拝殿に向かう。
拝殿には、ところどころに、牛の彫刻が施されていた。
ほむらとレイが五円玉を賽銭箱に放り込み、鈴を鳴らし、手を合わせる。
「大会で優勝できますように」
祈っていたその時だった。
「ようこそ。僕の神社へ」
「「「え?」」」
音もせずに八雲が現れた。
廉を除く、三人が驚く。
「弟よ、それは唐突じゃない? それよりも、お腹すいた、冷蔵庫に何かある?」
「姉さん、テーブルの上に揚げたてのドーナツおいてあるから」
「流石は私の弟! 気がきくじゃないか!」
そう言って、姉さんこと、
「どういうことですか?」
「だからいったでしょ、僕は神だって」
麗子に訊かれ、あっさりと答える。
「「あ〜」」
ほむらとレイが納得したかのように頷く。
「ところで、おやつ食べてく? ドーナツあるよ」
***
「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
社務所の裏から玄関に周り、家に入る。
そこには、予知したのか、姉さんが立っていた。
――粉砂糖のまぶされたドーナツをぱくつき、同じものがたくさんのった皿を持ちながら。
「姉さん行儀悪いよ」
八雲が呆れながらいう。
「いいじゃない、美味しいんだから」
そう言いながら、もう一つ口に運ぶ……がすんでのところでドーナツを回収し、
「四人とも、そこに洗面台あるから、手を洗ってきて」
廊下の先を指差す。
***
「美味しい」
つい、声が漏れる。
外はカリッとしていて、中はふわっとしている。
甘い香りが、口全体に広がる。
まるで、お店のドーナツみたいだ……
「ところで、僕の知り合いが作った、β版ゲームあるんだけど、やってみる?」
そういった瞬間、廉が八雲を引っ張り、耳打ちする。
「それって、伯父さんが開発したマジの何も無いVRパッケージを魔改造して痛覚まで完全再現した、クソ戦闘シュミレーターじゃないよな」
「大丈夫。
とにかく、たくさんアップデートした。
家のWi-Fi経由で、ゲームサーバーのIPアドレスを送信する。
そのまま、端末のネクストライズの接続用システムとサーバーのゲームシステムがリンクし、肉体を、意識を電脳世界という異世界へ転送する。
肉体情報を読み取り、アバターに反映され正確に造形される。
***
ただただ、白い空間が広がる。
「何ここ?」
「何も無い……」
ほむらとレイが口にする。
「これはサバイバーズ・ギルド。現実を完全に再現した、訓練場だ。もちろん、死んでも生き返れる」
「それで、何と戦うの?」
麗子が訊く。
「色々あるよ。とりあえず、二人は、
「「え?」」
ほむらとレイを置いてけぼりにしていく。
システムウィンドウを開き、スパスパと設定をいじっていく。
「ほむらは、
「ちょっとまって」
ほむらの静止をスルーして、
「それじゃあ、頑張って」
廉と麗子と八雲が転送され、ほむらとレイだけが残る。
その後から、ほむらとレイの間に白い壁が形成され、空間を二分割、拡張される。
***
「ところで、ライズクロスって何なんですか?」
待機スペースに移動した麗子が訊く。
「それもしないとか。後で二人が戻ってからしたほうがいいかな、実際に使っている二人にも聞いててほしいし」
2つのウィンドウが開かれる。
「さて、二人はどれくらい生き残れるかな」
***
結果は二人とも第2ウェーブまで持たなかった。
ほむらは序盤に正面を意識しすぎて、後ろからの攻撃でダウン。
レイはクルクル回りながら、攻撃することで死角をなくしていたが、ボスに対しての火力がなくダウン。
「ムズい!」
「ボスが硬すぎ」
そう嘆く。
「でも、レイは結構、ちゃんと立ち回っていたと思うよ〜」
麗子が言う。
「ほむらは周り見えてなさすぎ。
廉も感想を述べる。
「そういえば、ライズクロスだっけ、それについてみんなに言っておきたいことがある」
「どうした?」
話を切り出し、廉が反応する。
「ライズクロスって何だと思ってる?」
「ワールドライズの武器枠的な感じですか」
麗子が答え、ほむらとレイが頷く。
「半分正解で半分ハズレかな。逆なんだ、順序が。もともと、ライズクロス――というよりも、それの前身である僕が創造の力で開発した総合魔導兵装、ライズシステムを
「で?」
話が長くなると思ったのか、廉が強制的に句切る。
「つまり、あれが本来のスペックじゃないんだ。だから、今からゲーム用のリミッターを外して、使いやすいように調整する」
ウィンドウを操作して、全員を強制ログアウトさせる。
現実のリビングに帰還する。
「端末の設定をこうこうこーやっていじって……できた!」
設定画面を高速で操作しデベロッパー権限を開放し、その先のライズシステムのブラックボックス化されていた部分の権限を突破、ワールドライズ用のリミッターを外す。
「何で端末のシステム自体にゲーム用リミッターをつけるだ? 外すのめんどいじゃん」
「ただいま」
少し低い、少年の声がする。
「あ、陽太くんおかえり」
姉さんが反応する。
「兄貴、来てたんだ」
「お、陽太」
そこには、ほむらたちろは違う制服を着た、黒髪の少年がいた。
「え〜。剣崎君、弟いたんだ〜」
麗子が驚く。
「ちげぇて、紹介する。こいつは俺の従兄弟で中1の」
「神崎陽太です。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね」
陽太と麗子が話す。
「陽太、レイと模擬戦してくんない? 僕、徒手空拳わからないから」
「了解、先輩」
制服の内ポケから剣のない柄のような細長い端末を取り出す。
「さあ、始めようか」
電脳空間に転移した。
***
「ゲームモードは
ゲームスタートボタンを押す。
『READY――』
レイはデッキケースを、陽太は端末を構える。
『――FIGHT』
『Player Log in ――REI』
レイがライズクロスを展開する。
「ヤァア!」
一気に距離を詰めて、陽太を思い切り殴りかかる。
だが、最小限の動きで避け、
「ライズアップ」
肉体がマナで構築された、
「獣?」
四肢が怪物のような鱗で覆われ、手の指先には鋭い爪が、つま先には大きな刃。
その姿はまるで怪物。
「ハァァァァ!」
陽太がレイに殴る。
それをレイは
「ヤァ!」
陽太を弾く。
すぐさま、陽太は体勢を立て直し、右つま先の刃を喉元に突き立てる。
即座に、レイはガントレットで弾く。
それで陽太は尻もちをつく。
「ヤァァア!」
何度も殴って殴る。
だが、全部、両腕の外皮で防がれる。
「これで終わりだ」
レイは背中を貫かれた。
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