DAIHUGO〜新幹線窃盗殺人事件〜

沼津平成

プロローグ 名探偵は東京駅にいる

 下田優人しもだまさひとの職業は名探偵である。名というのは本人の自惚れに過ぎないかもしれないが。彼は十九歳である。二年前、探偵になった。そして、学校生活の傍ら難事件を解決していった。しかし彼は、二足のわらじ生活が嫌になり、高校卒業後、大学進学は諦めた。


「今日は、報酬が高いよ」


 秘書は、同級生の宮間佳生みやまよしお。文学部のエース。ミステリ研で知り合った。


「おー、うれしい!」


 ここは東京駅のホーム。新幹線のりば。


「あれが今日の依頼人——って、三宅みやけさん、なぜいる!?」


 依頼人・三宅竿みやけさおはゆっくり笑っていた。十時半である。


『三宅竿、四十一歳、富豪。ポストを見たら殺人予告状。護衛を頼まれている』


 下田は宮間に今回の依頼の内容を手短に説明した。


「なるほどわかりました。つまり僕らが新幹線に乗って三宅竿師を狙っているやつを——?」


「うん、守ればいいんだね」下田は頷いた。宮間も頷いた。「どうしたもんかなあ」と腕組みをしているうちに、新幹線は出発してしまった。


『えー!』


 竿さんが悲しそうな表情をしている。次に下田と宮間が東京駅で三宅に会うのは、三宅竿さんの死後になる……。

 

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