第25話 感覚の回廊

風の感覚を胸に、彼女は旅を続けた。その中で、彼女の心には一つの問いが浮かび続けていた。「感覚の境界線を越えた先に、どんな世界が広がっているのか?」その答えを求めて進む道は、次第に岩肌のトンネルへと変わっていった。


トンネルの入り口は暗く、奥が見えなかった。しかし、彼女はその先に自分が探しているものがあると直感した。躊躇することなく足を踏み入れると、冷たい空気が全身を包み込み、音が反響するように広がっていった。その音は、まるで彼女の心の中の声が増幅されるかのように響き渡った。


「ここは、私の内側を映し出している場所かもしれない…」


彼女は静かに呟きながら、足を進めた。トンネルの中を歩くたびに、足音が複雑なリズムを刻み、彼女の心に不思議な感覚をもたらした。そのリズムが次第に螺旋の感覚と結びつき、彼女の中に新たな広がりを生み出していった。


進むうちに、トンネルの壁には無数の光の模様が現れ始めた。それは、彼女が過去に感じてきた静流、螺旋、波紋、そして風の記憶を呼び覚ますような模様だった。彼女はそれに見とれながら、自分がその模様の一部であるかのように感じた。


「これは、私の感覚そのものが形になったもの…」


彼女は模様に触れた。光が指先から全身に広がり、彼女の体を包み込んだ。その感覚は、これまでにないほど強烈で、同時に深い安心感を伴っていた。それは、彼女が感覚の旅の中で得てきたすべてが一つに融合する瞬間だった。


トンネルの奥から微かな光が見えた。彼女はその光に向かって歩き続けた。足元のリズム、壁の光の模様、そして静寂が彼女を導いていた。


光の出口にたどり着くと、そこには広大な平原が広がっていた。空は澄み渡り、風が柔らかく吹いている。その景色は、これまでに見たどんな風景とも違っていた。平原全体が、まるで彼女の感覚そのものを映し出しているように感じられた。


「これは、私の世界…」


彼女はそう呟き、平原に一歩踏み出した。トンネルを抜けた彼女は、自分が感覚の回廊を通じて新たな自分に出会ったことを確信していた。これからの旅がさらに未知の感覚をもたらしてくれることを期待しながら、彼女は平原を歩き続けた。

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