第12話 自分だけのリズム

彼女は外の世界に存在する「雑音」から解放されたことで、内なるリズムを感じ始めていた。それは、周りのペースに合わせて生きてきた過去とは対照的なものであり、自分だけのリズムを持つことの喜びを初めて感じていた。


ある朝、彼女は目覚めると、時計を見るのをやめてみることにした。時間に追われることなく、心の赴くままに行動することで、彼女の一日はどのように変わるのかを試してみたかったのだ。


まずはゆっくりと朝食をとり、窓辺で日差しを浴びながらコーヒーを味わった。周囲の騒がしい通勤風景が遠くに聞こえ、彼女は静かに自分だけの時間を楽しんでいた。そのひとときの中で、彼女はすでに新たな自由を感じていた。


その後、ふと思い立って自然の中へと向かった。時計を持たず、ただ足の向くままに歩き、周囲の風景に身を委ねた。彼女は足元の土の感触、木漏れ日が肌に触れる瞬間、遠くで聞こえる鳥の声を、すべてをありのままに受け止めた。


「これが、私だけのリズム…」


そう感じると、彼女の心はさらに深い安らぎと快楽で満たされていった。誰にも急かされることなく、誰にも干渉されることなく、自分のリズムで生きることが、これほどまでに豊かなものであることを知ったのだ。


その日の夕方、彼女は川辺にたどり着き、静かに流れる水の音に耳を澄ませた。川の流れもまた、誰かのペースに合わせることなく、ただ自然の力で流れている。彼女はその光景を眺めながら、自分もこの川のように、周りに流されることなく生きていきたいと強く思った。


日が暮れ、彼女は家に帰ると、心の中で改めて自分のリズムを感じていた。過去に感じた不安や同調圧力から完全に解放され、自分の内なるリズムが、心の中で穏やかに鳴り響いているのを感じていた。


「私は、私のままでいることができる。」


彼女はその言葉を胸に刻み、静かに目を閉じた。自分だけのリズムに身を任せることで、彼女は新たな快楽と安らぎを手に入れたのだ。この感覚がある限り、彼女はどこにいても自分の自由を守り、真の快楽を味わい続けることができると確信していた。


こうして、彼女の人生は新たなフェーズに入った。それは外の雑音に惑わされず、ただ自分のリズムを信じて進む旅路だった。

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