第10話 内なる光

森での深淵な体験以来、彼女の内面には明確な変化が生まれていた。それは単なる感覚の変化だけではなく、心の奥底に確固たる「内なる光」が芽生えたかのような感覚だった。その光は、彼女が歩む日常の道を照らし、すべての行動に自信と安らぎをもたらしていた。


周囲の人々が彼女に違和感を抱いているのを、彼女は薄々感じていた。以前は無難に従っていた会話や行動に対して、彼女はもう合わせようとは思わなかった。自分を押し殺してまで得られるものが、どれほど虚しいものかを知ってしまったからだ。彼女は他人の期待や評価から解放され、自分の内なる声にのみ従って生きる道を選んでいた。


ある日、彼女は同僚たちと昼食をとることになった。周囲では無難な話題が飛び交っていたが、彼女は黙ってそれを聞き流していた。心の中には、森で感じたあの深い感覚が今も息づいており、その心地よさに浸りながら周囲の雑音がただ遠くに聞こえるだけだった。


ふと、彼女の様子に気づいた一人の同僚が言った。「なんだか最近、何か変わったよね。何を考えているの?」


彼女は微笑みながら答えた。「ただ、自分を感じているだけよ。」


その言葉に同僚たちは少し戸惑いの表情を見せたが、彼女は気にしなかった。それは、彼女にとっての真実であり、もう隠す必要のない自分の心の声だった。


その夜、彼女は再び森へと足を運んだ。満月が空高く輝き、森全体が銀色の光で包まれていた。彼女はその光の中で深呼吸し、自分の中に生まれた光が外の光と調和しているように感じた。まるで、自分が自然と一体になり、この世のすべてと繋がっているかのようだった。


「私は私のままでいい。私の感覚が、私を導いてくれる。」


彼女は静かにそう呟き、目を閉じた。周囲の同調圧力や世間の声は、もう彼女に届かない。彼女は、自分の内なる光に従い、真の快楽と自由の道を歩んでいるのだ。


それは、彼女が人生で初めて見つけた「自分だけの道」。誰にも縛られず、誰にも理解されなくても構わない。彼女の心は、真の自由と快楽に満たされていた。そして、その感覚は、彼女にとって消えることのない光となり、これからも彼女を導き続けるだろう。


この瞬間から、彼女の人生は真に始まったのだ。

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