第2話 掃き溜めへようこそ

「そんなにくっつかなくても。何も彼氏役ってわけじゃないんだから」


 月イチの美化委員会の集まりに出るだけだというのに、姫川は俺の腕に抱きついてきていた。


「おかげで性悪な女子たちも絡んでこないわ! 私は助かってるよ?」


「俺が助かってないんだが」


 高嶺の花、【三美神】の一人を連れて歩いているのだ。俺に対する男子からの視線が痛い。


「なんだアイツ、いつの間に姫川さんと付き合ってたんだ?」


「抜け駆けしやがって! で、アイツ誰だっけ?」


「名前忘れたけどムカつくな!」


 俺への陰口が止まらない。というか、俺の名前くらい調べてから悪口言えよ。まぁ、俺もクラスメイトの名前なんて覚えてないけどな。


 もちろん、姫川は有名人だし美少女なので例外だ。


「掃き溜めにようこそ。貴方たちの更正に心から期待しているわ」


 教室に着いてみると、なんか、美化委員長の大月先輩の様子がおかしい。先月委員長に指名されたときは真面目そうな人だったんだけどな。


「美化委員会は問題児の集うところ。一年生は知らないだろうけど、問題を起こした生徒、起こしそうな生徒は自動的にここに入れられるから」


 そうなのかよ。とんでもない委員会に入れられたな。だが確かに、姫川が美化委員なのは最初から先生が決めていたような気がする。口喧嘩で問題起こしそうなことは認知されていたんだろうな。


「真面目に掃除したい人はごめんなさいねぇ? 彼、彼女らの更正に付き合ってあげてね。じゃ、ごみ拾いに行くわよ!」


 委員長の号令で、俺たちは学園内のごみ拾いに駆り出された。


「そこ、仲良し同士でつるまない! 駄弁ってサボるつもりでしょ、ほら、散開!」


 どうやら、友達同士で固まっているグループをバラけさせているらしい。委員長も大した力の入れようだな。


 だが、俺たち二人がくっついているのは無視し、委員長は素通りしていった。どういう基準なんだ?


「掃き溜めだなんて、言い過ぎじゃない? ちょっと抗議しようかしら?」


 マジか。姫川のやつ、いじめっ子だけでなく先輩にまで突っかかっていくつもりか。


「ま、まぁいいんじゃないか? 勝手に言わせておけば。俺たちだけでも真面目に活動すれば、見方も変わるって。行動で示そう!」


 また虚勢を張って泣き出されても困るしな。


「柊木くん、真面目なのね」


「そうかな」


 ひとまず、俺たちは無事に今日の活動を終えた。

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