兵士

3.兵士

 翌朝。休日を潰されたイライラを噛み締めながら朝食を食べる。

「しょうがないじゃないですか。仕事なんですから。」

と颯斗。

「休みたい時は休みたいんだよ。」

口ごもりながら愚痴をこぼす。

なんやかんやで朝食を飲み込み、皿を洗う。自室に戻り、対になっている刃渡60センチほどの匕首をとる。長年使ってきたその2本はよく手に馴染む。その他の暗器などを懐に忍ばせるとちょうど迎えの車の音がした。

「迎えの車が…」

「わかってるよ。」

「後、影山が…」

「諜報だね?どこ入ってるの?」

「例の組織と手を組んでいるブラックマンバに部下と2人で入ってるぽいです。」

「ブラジル系か。最近裏社会では目立ってきたな。」

「はい。マフィアの中でも結構強い部類でしょう。かなりの武闘派が揃っていると聞きます。」「CIIPのやつでブラジル系マフィア上がりのやつがいるから色々聞いとく。」

「そうですね。是非。」

「てか、会合遅れるぞ急ごう。」

「はい。」

何回も車を乗り継ぐこと2時間半。やっと会合場所に着いた。一見普通の廃墟ビルだか、地下へ下るとかなりの高装備を揃えた基地となっている。

「オンラインにしてほしいよ。いい加減。」

長い移動で固くなった体を伸ばしながら最高機密への一室へと向かう。

「仕方がないです。オンラインでは盗聴の可能性が格段に上がります。」

「それはわかってんだけどさ...」

ゴンッと鈍い音がした。

いかにも最高機密な雰囲気の廊下を歩き出す。やがて鉄製の扉の前に着き、パネルに手のひらをかざす。

「瞳を枠内に映してください。」

なんとも癪に障る声が命令してきた。静脈、虹彩、指紋、暗号、など立て続けに提示された解除条件をクリアした。

「遅い。」

イライラした口調で通称ダウトと呼ばれる吉永が愚痴る。

「集合時間内だ。問題ない。」

通称ストレンジバレットの颯斗が冷静に答える。

「会議をスムーズに始めるためにもっと早くきてください。」

トリッカーと呼ばれる吉永を慕う佐々木が立ち上がりながら言う。傍でライフルバックを抱く通称ノーワードの蓑沢が気だるそうに押し黙っている。

「まぁまぁはよ始めよな!」

通称チェックの薬師が明るくなだめる。

「そうです。時間の無駄ですよ。」

通称シャドーの酒田が唸るようにいう。諦めたようにトリッカーがわざとらしくため息をつくと、元忍で通称ミストの剣華が背中に回してある忍者刀のつかに手をかけながら

「何か文句でもあるんですか!」

とすごい剣幕で怒鳴る。その言葉によって再び火がついたトリッカーが立ち上がり、ナイフを取り出す。

「やんのかコラァ?!」

「腑引き摺り出してやる!」

ミストもこれまたすごい剣幕で忍者刀を音もなく抜く。白けたようにストレンジバレットが足を机に乗せ空を見つめる。すると、先から黙っていた通称シガーの緋山が一喝した。

「うるせぇんだよ、ガキども!」

途端に刃を交えそうだった2人が立ったまま凍りつく。3秒ほどで解凍し、静かに席についた。

「はぁい。会合始めるよー。単刀直入にチェックからた作戦内容を話してもらいます。」

「了解!えーとね。まず、Jackの弱点をやなー....」

Jack。日本を中心に活動するアジアの代表的な殺し屋組織。Netはその廃絶の試みを現在進行中。


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