第30話・葵(アデリーナ)視点01
「加奈がいなくなっただけで……
ずいぶんと静かになったな」
みっちゃんをシーマの入院部屋へ残し、
アタシたちはナースステーションで待機
していた。
「たっぷり物資を持っていったのである。
どうせ3日くらいしか、かからないのに」
「しかし今回の件は、ちょっと
反省すべき事ですわ~」
理奈と詩音が、飲み物に口をつけながら
そう語る。
確かに―――
アタシたちも少しやり過ぎたと反省する。
そりゃあもう、広い病院内で……
食事やインフラの心配はしなくていいし、
やらなければならない事は無いので、
ヤル事はヤっていた、って感じ。
目と目が合ったら即合意、みたいな。
「まあでも、みっちゃんみたいな存在、
この世界では珍しいってモンじゃ
ないからねー」
「普通、男というのはどこかの一族に
所属している―――
というのが当然なのである。
でもみっちゃんの場合、献上用に運ばれる
途中で、魔物に襲われ消息不明という事に
なっているのである。
つまり事実上のフリー状態である!」
「しかも、前世からわたくしたちの事を
暴走するなという方が無理が
ありますわ~」
詩音の言葉に、アタシも理奈もうなずく。
それに男が絶対的に少ない世界で……
みっちゃんみたいな美少年を前に、
手を出さないっていう方が無理過ぎる。
「アタシらのロッカーに、ある程度
私物が残っていたのも助かったし」
「おかげでプレイの幅が広がったのである」
「売店も、下手なコンビニより品揃えが
いいんですけど~……
お酒とかアダルト系の物は、さすがに
置いていませんからね~。
私物が残っていたのは、ラッキー
でしたわ~」
しみじみとこれまでの生活を思い出し、
「ま、骨休めにちょうどいい機会だと
思うようにしよう。
それにみっちゃん、無限の体力だし―――
まさか健康体になったらあそこまで元気に
なるなんて、思わなかったわ」
「それは同感なのである。
正直、4対1はどうかと思ったが……
今ではそれで良かったと実感している
のである」
「それに、している最中の生みっちゃんを
見るだけでも
イケメン美少年って、それだけで体力と
精神を持っていくから反則ですわ~」
結局は下ネタになる会話に、アタシは
苦笑するが、
「―――あれ?
ちょっと待って。
今、みっちゃんとシーマ、2人っきり
だよね……?」
「そのはずなのである」
「それがどうし―――」
そこでアタシを含め、理奈と詩音の時間も
停止する。
「普段はアタシら4人で分担していた
アレが……
1人に集中する、としたら」
「い、急ぐのである!!」
「ど、どれくらい時間が経った
かしら~!?」
アタシたちはナースステーションを
飛び出し、シーマの入院部屋へと
駆け出すが、
近付いていく過程で、
「あひぃん! はひぃ!
ごめんなはい!!
もう許して!!
ダメッ、これ以上されたら……!
い、嫌ですの!!
お願い、もうやめてぇーーーっ!!」
シーマの叫び声を耳にしながら、
何とか部屋にたどり着いた。
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