無能力だけどダンジョン攻略しているようです。

@sige02

プロローグ

 ダンジョンが生まれて、ダンジョン探索者という職業が出てから20年が経過した。

ダンジョンという迷宮は突如として世界中に現れ、ダンジョンから産み出されるモンスター含めて大きな災害となった。


 モンスターは魔力の塊であり、通常兵器の銃やミサイルは通用しなかった。しかし、人間がダンジョンの中に入ることで力に目覚めモンスターと対抗する事が出来ることが分かりモンスターによる危機は治まった。


しかし探索者となった者達にも授かった能力を悪用する者達が現れた。中でも恐れられたのが服従系の能力であり、魔力差がある生物に対して無条件で操作するという能力だ。


つまり、ダンジョン内に入り魔力を貰ってない人々は操られたり、探索者の被害に合うということになるのだった。


この問題を解決するのは非常に単純だった。探索者の魔力に対抗するには、同じく魔力を持てばいいのだ。多くの国が人々に半ば強制的にダンジョンに入り、魔力を授けさせた。


ダンジョンから魔力を貰う方法は簡単である。中に入ると出てくる目の前に現れるウィンドウの用な物に契約書にサインするだけだ。


契約内容もダンジョンの魔力を受け入れるか……と言う物だった。


最初は渋る人も多かったようだが、ダンジョン内から大金を稼げるようになると多くの人々が探索者になり、我国日本でも8割以上が魔力を持っていると言われていた。


これだけ多くの人間がダンジョンと契約したのも理由がある。

魔力だけでなく、身体能力も大幅に向上するのだ。つまり、老人達が若いとき以上の身体を手に入れることが可能なのだから。

若返るということは、病気にもならないということ。


自分の健康が簡単に手に入るのだから、多くの人々がダンジョンと契約しようとする理由になるだろう。それに、ダンジョンの魔力を授かって、特別なデメリットが人間側に確認されなかったというのもあった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



俺は16歳で今月で高校2年生になる萩原祐樹だ。


学生同士の男女3人でパーティを組んで、初心者向けダンジョンで所謂ステータス上げという物をしている。


「ステータスオープン!お、筋力上がってるぜ!」


クラスの男子生徒の一人である男が、大きな声で言った。


「私は敏捷が上がったよ!」


女子生徒も上がったから喜んでいるようだ。


「萩原はどうなんだ?」


先程の男子生徒が聞いてきた。


「ステータスオープン!ッップ!おぉ!俺は器用が上がったぞ!」


このステータスウィンドウなる物は自分にしか見る事が出来ないらしい。


俺はステータスオープンと言っても目の前に映し出されない。


当然である、俺はダンジョンと契約していないのだから。


「お前…なんで、毎回ステータス出すとき笑ってるんだよ……」


「いや、なんかゲームみたいだなぁって思ってね」


「いやいやゲームじゃないよ?一応命かけてモンスターと戦っているんだからさ!」


「そうだね。ごめんごめん。そろそろ帰ろう」


「そうだな」


「うん。目標数は討伐したからね!」


そう言って俺達は来た道を戻った。



◆◇◆◇◆◇◆◇


ダンジョンから帰還した後、外のテント内で休憩しながら考え事をしていた。


ほぼ初対面の人達にもバレちゃう程に上手く演技が出来ていなかったようだ……反省だ。


でも変だと思わないのかね……。契約書が都合よく世界各地の言語に適応している。まさに、ゲームのようにステータスなるものがある。



モンスターを倒すとその肉体は光となって消えて、魔石という結晶を残して消え、探索者のステータスが向上する。


そして魔石が、使いやすいエネルギー源で二酸化炭素を出さないという理由で発電に使われている。


何もかも人類に都合がいい気がしてならない。

俺以外にも多くの人間がそう考えていたらしいのだが、それよりダンジョンから出てくる利の方が大きく、今のところ不利益が出てないから有耶無耶にされてるようだ。


魔力という機械で観測出来ない力でありながら、ダンジョンと契約していない人々なら魔力は感知することが出来た。


未契約者の俺の感覚としては魔力は不気味な力という感想だ。それこそ、先ほど討伐したゴブリン達と変わらないと言えた。


「まぁワクワクするからダンジョン探索は止めれないんだけどな」


テント内で一人でいた俺はつい言葉が出てしまった。


現代社会にはない未知が多くあるダンジョン。

この秘密を知りたいと思う欲求は、間違いかもしれないが。






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