9日目3 救援物資


 ということで想定外の本日3パート目であるが、新怪物モンスターの出現に対抗するために市庁舎の生存者コミュニティへタイプBタレットドローンくんを派遣していくぞ。



 さっそく、地上の車庫ガレージ屋上に出現させた7.62mmNATO弾汎用機関銃PGMGタレットドローンを浮上させてみると…うん、やっぱり『荷物』無しでも上昇力が微妙だな。


 クアッドドローン部分の機構はタイプAとタイプBで共通であるため推力はまったく同一、そこに吊り下げた本体の重量の違いの分だけ差が出ている。


 タイプAを10とした場合、タイプBの空中機動力は7といったところか…今回はさらに『荷物』も運ばせるので、機動力には一切期待できまい。


 まあ、このドローンで空中戦をするわけでもないので、今のところさしたる違いでも無いがな。



 …なんか空中戦フラグみたいな発言になったが、たとえ空中タイプの怪物モンスターが出現したとしてもドローンは地上に据え付けて撃たせるだろうから、どのみち空中格闘戦ドッグファイトをする可能性なんて無いだろう。



 ともかく、ちょっと実験したいことがあるからさっそく試してみよう。


 えーと、こうして意識の半分ではドローンを操縦しながら、もう半分の意識で地上のタレットウォーカーたちに作業指示の予約を…ぐはっ。


 ただでさえ地下拠点でソファーに座っている俺自身の視界との二重処理のところに、ドローンの空中機動まで意識すると感覚のオーバーロードで頭がパンクしそうになる…!



 こりゃイカン。

 もっとやり方を工夫せねば。


 せめて地下にいる俺本体は乃愛のあの膨らみに顔をうずめて視界を閉ざし…その上でまずはタレットドローンを真っ直ぐ高く上昇させながら、その単純動作の間にタレットウォーカーたちに手早く作業予約を入力していく。


 そして今度はタレットドローンを前傾させて、高度を消費しながら一気に加速して距離を稼いで…ある程度進んだら地下にいる俺本体の顔を左右に動かして乃愛のあの柔らかさを補給した後に、またドローンを垂直上昇させながらウォーカーたちに手早く指示を出す。



 …よし、かなりせわしないが、なんとかこのサイクルで操作の両立が実現できそうだぞ。


 柔らか担当ギャルの乃愛のあも俺の頭部を抱擁ホールドして安定感を補助してくれるので、これで地上の鉄条網陣地構築とドローン派遣を並行して進めていこう。



 あっ、こら…せっかく動作が安定したのに操縦桿ジョイスティックいじってはいけません!


 あっ、ほら! 地上のタレットウォーカーたちの作業内容がだんだんメチャクチャになって、三段にしなくちゃいけない鉄条網が四段になったり、バラ線同士がねじれてX状になって…おわっ! タレットドローンが完全に天地逆転した!?


 落ち着け…ここは落ち着いて態勢を立て直そう。


 まずはゆっくりと大きく深呼吸して…乃愛のあの柔らかさの中に満ちたボディクリームのバニラの香りフレーバーをたっぷり鼻腔に取り込む。


 …すると、ますます操縦桿ジョイスティック反応レスポンスが固くピーキーになって、結局俺は二度ほどタレットドローンを樹木に接触させながらもギリギリで墜落を免れるのであった。











「わあ、頑張ってるね! すごい広くなってるじゃ〜ん」



 乃愛のあが賞賛の声を挙げる通り、およそ48時間ぶりに新たなタレットドローンを飛来させて見ると、市庁舎の生存者たちは大いにに彼らの生存圏を拡張しているのが見えた。



 市庁舎を含む道路で囲まれた一区画を完全に制圧した彼らは、自動オートタレットを装備した自衛隊高機動車をグルグルと巡らせることで区画付近の怪物モンスターを排除している様子だ。


 そして単管パイプを立てた物にワイヤーを巡らせ、あるいは廃材を積み上げて外周を防御し、武器を手にした生存者たちが10人ほどのグループ単位で隙間なく監視することで、怪物モンスターが防衛線を乗り越える破綻に目を光らせている。



 …ふむ、おおよその状況は『掲示板』で把握していたが、こうして直接…いや、結局タレットごしの観察なのだが、ともかく実際に見ると本当に彼らはよくやっている。


 まず、一区画を丸ごと制圧したことで商業ビル二棟を勢力圏に治めたのが大きいな。


 それぞれ5〜6階建ての中型ビルではあるが、推定でこれまでの数倍に及ぶ床面積を確保したことは、生存者たちの居住性の向上に加えて生存者収容そのものの余地が大幅に拡大したことを示しているだろう。


 さらに、『掲示板』の履歴によれば市庁舎に隣接する倉庫を接収したことも大きな意義を持っていて、その貯蔵品であったミネラル飲料水を大量に獲得できたことはもちろん、備品であるフォークリフトが防衛設備構築に大活躍しているようである。


 もっと言えば、これらの敷地を含む一周りの道路区画を制圧していることは、そもそもそれ自体がタレット車両による機動防衛を格段に効率化していることも見逃せないだろう。



 …ふーむ、さすがは警察と自衛隊による共闘体制である。


 タレットによる援護射撃があったとはいえ、数千人規模の生存者コミュニティ防衛という難事をこれほど見事に軌道に乗せてみせるとはな。


 相変わらず中型護送車によるマンション救出作戦を積極的に展開しているようだし、それ以外にも市庁舎コミュニティの安定を聴きつけた生存者たちが、決死の覚悟で怪物モンスターどもの中を走り次々と合流しているらしい。



 …おっ、また防衛柵の外側から一家族が駆けてくるのを見て、数グループの生存者隊がいっせいに飛び出して怪物モンスターを抑え救出に当たっているぞ。


 こりゃあ、士気の高さも相当なものだな。


 単管パイプ加工の槍やら怪物モンスターから奪取した手斧やらの武器を手にした男たちが、一人ひとりがまるで古代の戦士のごとく雄叫びウォークライを発しながら小鬼ゴブリンに殺到していく。


 抑え込まれた小鬼ゴブリンの頭を棍棒で砕いて回っている中年男性は、あれはおそらくスキル持ちのトドメ要員だろうな。


 何グループかに一人はスキル持ちが配置されている体制と推察できる。



 …よし、彼らが十分によくやっていることは分かったので、早いところ今日の『援護射撃』を済ませてしまおう。


 まずは、新たなタレットドローンの飛来を見て市庁舎の中庭に集まる人垣の中に慎重に着陸して…『荷物』を切り離す。



 タレットドローンのきゃくが離した小コンテナに、市庁舎コミュニティ防衛隊長(推定)の少壮自衛官と数人の警察官たちが近づいて鍵のかかっていない蓋を開けると…その顔面がいっせいに喜色に包まれる。


 すぐに警察官たちが駆け出して、中庭に何人かの男女を連れて来た。


 警察官たちにかされて小コンテナの中をあらためたその男女は俺の想像に反して、喜色を浮かべる暇もなく鬼気迫る勢いで物品を手に取る。


 そして、注射器や外科処置用ツールの数と種類、経静脈抗生物質セフトリアキソン麻酔薬ケタミン止血薬剤トランサミンアドレナリン注入器エピペンなどの製剤ラベルを指さしながら手早く確認していくのだ。



 …実はこれも『掲示板』でリサーチ済みなので、急に連れてこられたこの男女についても、その属性は分かっているぞ。


 もちろんこの男女は、市庁舎生存者コミュニティに少なからず存在していた医師や看護師たちである。


 ちなみに彼らは市庁舎の救護室があるフロアを丸ごと臨時の前線病院として傷病者の治療にあたっていたのだが、なにしろ医薬品や器具が絶望的に不足していたため、これまで事実上の傷病者収容空間として感染症リスクの増大に備えるのみであった。


 そこで、俺が総重量5kg程度という制限はあるものの、こうして医療品の救援物資を届けてみたのだが…喜んでもらえるかと思いきや、ちょっと怖いくらいに眼の色を変えているので周囲の警察官たちも声をかけられなくなっているぞ。



 …うんまあ、物品自体は討伐ポイントにして1000ポイントかそこらの出費でしかないし、役に立ちそうならばよかったということで。


 …決して医療班の様子が想像より怖かったのでビビっているわけではないぞ(虚勢)

 でも、今日はもう早いところタイプBタレットを設置して終わりにしよう…なにしろちょっと怖かったからな(吐露)


 …設置場所は安定の自衛隊高機動車でいいとして、代わりに従来のタイプAタレットはパトカーに移動させよう。


 …タイプBタレットであるMAなんとか汎用機関銃も彼ら自衛隊の制式装備と瓜二つの姿であり、自衛官たちも何の補足説明も要らないくらいウンウンと頷いているので…はい、今日はこれにて撤収!



「はい、おつかれさま〜」



 なんだか急に疲れてしまった俺は、タイプBタレットを自動射撃オートモードをオンにすると接続を切り離し、モゾモゾと身じろぎして乃愛のあ乃愛のあの間に深く顔面をうずめ直して、よしよし担当ギャルに頭を撫でられながら気分を落ち着けるのだった。


























 …なお、その夜にはついに安全装置セーフティを解除した『射撃ガンゲーム』が行われたわけだが。



 ちょっとこれはもう、我ながらこの小説はこのプラットフォームに適合しているのか、ラインをどこに置いたらよいのか、なんだかよく分からなくなってきたので…詳細な描写については割愛させてもらおうと思う。



 すまんが、どうか了承してもらいたい。
















 …了承してほしいんだが、まあその…言える範囲で言うとだな。




 …なんと言ったらよいか、その…俺と乃愛のあがより近づくことが出来たというか…





 生まれたままの…本当に真の意味で生まれままの俺たちがだな…





 その、まあ、つまり…0.01mmのへだたりもなく完全に0距離で…いや、やはりこれ以上は難しいだろう。






 …しかも、何度でも何度でも湧き上がる俺の情熱を、乃愛のあはその全て受け入れて…いや、これ以上は。






 ともかく、とても感動的であったとだけ…いや、もう一つだけ付け加えるならば、俺たち男が地上に生をけることの意味が…少なくともその一つの究極的な意味が、ここにあったのだと…そう実感したことを伝えておきたい。






 …なんなんだこの小説は。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る