第30話 決裂の先に
穏健派との対話が慎重に進む中、せりちゃんたちは新たな緊張感の中にいた。穏健派は「共に支配者たちの改革を進めたい」と提案してきたが、それは表向きの目的に過ぎない可能性があった。内部対立を利用して強硬派を排除し、自分たちの権力を維持するための策略かもしれなかった。
穏健派との密談
安全な通信ルートを通じて、穏健派の代表とせりちゃんたちの初めての具体的な対話が行われた。画面越しに映る穏健派の代表は落ち着いた口調で語りかけた。
「私たちも、すべての支配者が正しい行動をしているとは思っていません。強硬派の暴走は抑えるべきです。そのために、あなたたちの運動の力を貸してほしい。」
せりちゃんは毅然とした声で答えた。
「私たちの目標は真実を明らかにし、民衆が自由に意見を持てる社会を作ることです。あなた方の内部対立を解消するために利用されるつもりはありません。」
その一言で、穏健派の代表の表情が曇った。
「その理想が実現するのは簡単ではありませんよ。現実的な妥協が必要な場面もある。」
その言葉に、せりちゃんはしばらく考え込んだ。そして、はっきりと答えた。
「私たちが民衆の信頼を裏切るわけにはいきません。協力するなら、あなた方もその覚悟を示してください。改革ではなく、透明な真実を追求する意思を。」
対話は続かなかった。穏健派は「再考する」とだけ伝え、通信を切った。
強硬派の反撃
穏健派との対話の一方で、強硬派はついに直接行動に出た。支配者たちが操る一部のメディアが「せりちゃんの運動の裏に外国勢力がいる」というデマを大々的に流し始めた。それは、民衆の中に恐怖を植え付け、せりちゃんたちへの支持を減らすことを目的としていた。
そのニュースを見た視聴者の中には動揺する者もいた。「本当にそうなのか?」というコメントがSNS上に現れ始めた。
影の住人がすぐに分析結果を送ってきた。
「これは完全に操作された情報だ。証拠はどこにもない。しかし、これが広がれば、民衆の支持に影響が出る可能性がある。」
せりちゃんは迷わず配信を開始し、視聴者たちに語りかけた。
「皆さん、支配者たちは私たちの運動を弱体化させるために、またしてもデマを流しています。真実に基づかない情報に惑わされないでください。私たちが求めているのは、すべての人にとって公平で透明な社会です。それを脅かすものなど何もありません。」
コメント欄には「信じています」「デマには負けません」といった応援の声が溢れたが、同時に「もっと詳しい説明を」という慎重な声もあった。
民衆の力の結集
強硬派の動きに対抗するため、地域リーダーたちはさらに民衆を巻き込む活動を強化した。集会では支配者たちのデマに対する反論を徹底的に説明し、運動が何を目指しているのかを改めて共有した。
「私たちはデマに負けません。」あるリーダーが集会で語った。「私たちが目指すのは、支配者たちの嘘を暴き、真実を取り戻すことです。それを疑う必要はありません。」
その言葉に応えるように、多くの住民が集会に参加し、運動はさらに勢いを増していった。
穏健派の分裂
穏健派は、せりちゃんたちの運動が揺るぎない理想を持ち続けていることに気づき、内部での意見対立を深めていた。一部は「彼らを利用できないなら、強硬派と共闘すべきだ」と主張し、他方は「強硬派と決別し、民衆側に立つべきだ」と主張した。
その結果、穏健派の中でもさらに分裂が進み、支配者たち全体の結束は崩壊寸前となった。
次の戦いへの決意
その夜、せりちゃんは秘密基地で仲間たちと会議を開いた。フェニックスからは「支配者たちの分裂が決定的になった」という情報がもたらされ、影の住人は「次が彼らにとっての最後の抵抗になるだろう」と予測した。
「私たちは勝ちつつある。」せりちゃんは静かに語った。「でも、最後の戦いが一番厳しいものになる。私たちは真実を貫き、彼らの嘘を完全に崩壊させる必要がある。」
仲間たちはその言葉に頷き、それぞれの役割を確認し合った。
「月夜の光を信じて、私たちは進む。」せりちゃんはそう呟き、次なる戦いへの決意を新たにした。
運動の行方は、民衆の力と支配者たちの最後の抵抗の中で、決定的な局面を迎えようとしていた。
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