第555話 嵐がきます

 そんな作業をしていると、綺雪ちゃんが私達の方へやってきた。


「スウさん、海峡を渡るんですか?」

「あ、うん1週間以内くらいだけど」

「しばらく止めたほうが良いかも知れません」

「えっ」

「台風みたいな嵐が来ますよ」

「まじで!?」

「さっきブルーサーマルが発生したんで、風に乗って空を散歩してたんです。そしたら遠くに回転を始めてる大きな雲があって、それがこっちに流れていました」

「えええ!? ちょっと見てくる!」


 私は〖飛行〗で高く高く飛び上がる。

 ほんとだ、南の上空に回転しだした大きな雲がある。

 それに雲が海峡付近を帯状に流れてる・・・・。

 この惑星は地球に似た自転をしてて、現在の緯度は赤道のちょっと上だから(北緯は北極星で計れる)―――・・・確かに、一週間以内にあの巨大な低気圧が嵐になって、海峡付近を通過するかも。

 私はゆっくりと降りて、綺雪ちゃんの方へ戻る。


「確かに来そうだね。あの嵐はどんどん発達すると思う。――そして海峡に帯状の雲があった。近々海峡が嵐に包まれそう」


 私は強くなり始めた風を感じながら言う。


「この辺りも、いつもより温かいし風が強い――低気圧が来てるから、こっちにも来るかも」


❝スウって、天気までわかるのかw❞

❝グライダー乗りって雲で風を読むんだっけか?❞

❝つか綺雪ちゃん、ブルーサーマルを普通に見つけるとか、天才のそれワロw❞


 するとオックスさんが、こっちをビックリした目で見てた。


「お前スウ、・・・・マジかよ・・・天気まで分かるのかよ・・・」

「あ・・・飛行機に関係あるので――それにやってたゲームが気象とか、やたらリアルだったんで・・・・攻略サイトで覚えちゃったんです」

「な、なるほどな・・・」


❝サブカルすげぇなw❞

❝俺等も、漫画で色々覚えたしw❞

❝猫じゃらしでラーメンが出来るのとかな!❞

❝あの人も言ってただろう、温度が上がった、湿度も上がったって❞


 そうそう。


「空気の動きやすい場所で起きるんですよ――ちな、赤道の真上はコリオリ力が足りないんで、空気の移動が足りません」


 私が言うと、聡い視聴者がいた。


❝なるほど、温度が上がって嵐が来る――空気が移動しやすい場所で嵐は起きる? なあ、もしかして運動や熱なんか、エネルギーの高い場所で嵐は起きやすいのか?❞


「そうです。温められた空気が登り、コリオリ力で回転し嵐が形成されます。また温められた空気が上昇したり、冷めた空気が下降する事でも風は起きます。あとはジェット気流なんかも関係してきますね。なので、赤道付近はほとんどの場合、できて熱帯低気圧ですね」


❝俺、日本人として嫌なことに気づいた。コリオリ力、高温多湿、赤道付近の熱さらに水蒸気からのエネルギーの提供――そりゃ毎年太平洋の赤道付近から熱帯低気圧ができて北上しながら回転して、日本に台風が来るわけだわ! やめちくり❞

❝それなー❞


「台風ウンザリですよね」


 綺雪ちゃんが私を見る。


「もしかして、磁石を作るチャンスでしょうか? 嵐なら雷が落ちますよね――落雷が作った天然磁石もあるんですよね?」

「うんうん、その通り。よく知ってたね! ――でも、それに関しては私達は、嵐の中でワンチャンを狙う必要はないかも」

「私、スウさんみたいに学年首席狙って勉強して頑張ってるんです。だから知ってました! ――でも、嵐の中でいっぱい避雷針みたいな鉄を立てなくて良いんですか? 『そこに落ちて!』って、お祈りしないと、強い磁石は作れないんだと思ってました」

「うん本来そうなんだけど。私達は雲の上にも行けるから。――ほら、宇宙から遮光フィルターなしで雲を見ると、厚い雲の上ってよくビカビカ光ってない?」

「あー、結構光ってますよね。さっきの積乱雲もずっと光ってました――雲の下は光ってないのに不思議です。アレってもしかして雷なんですか? 私は、地上から信号でも送ってるのかと思ってました」

「――そう、あれは雷。――というか、放電現象かな。厚い雲の上ではよく放電現象が起きてるから、色々なスキルがある私達なら、鉄に絶縁体を塗って銅線を巻いた物を雲の上から〖念動力〗とかで安全に鉄のワイヤーとかでで吊るして、鉄に巻いた銅線に電気を通せば、強い磁石が出来るかも」


❝ほんと、何でも有りだなこの娘❞

❝サバイバルでやりたい放題すぎるw❞


「絶縁体は、どうするんですか?」

「多くの木の樹液が絶縁体にできるけど、この地域の環境ならゴムの木とか有りそう。セコイヤとかでもいいけど、松脂は固まると割れやすくなるしなあ――。最悪粘土を塗って固めたものでも良い」

「粘土とかアリなんですか・・・」

「うん。ある樹液が絶縁体として機能してるかは、塩湖の水と銅と炭で電池を作って、電磁石ができるかどうかで確認できそう」

「な、なるほどです――流石・・・爽波の首席。こんなに何も無いのに電池を作れるんですね」


 塩水から石鹸を作るのには電気がいるからねぇ。


❝流石首席❞


 首席と言うか、よくたまに〖サイコメトリー〗でズルしてますからね。

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