第553話 脳を洗います(自分の)

 すると、服などを受け取ったツクヨミさんが目尻を拭った。


「ほんと何からなにまで・・・・、ありがとね・・・スウさんのお陰で、心まで救われていくわ」

「え―――!? 心が救われる!? ――いや、私、何もしてませんよ!?」


 メンタルケアのメの字も。

 するとツクヨミさんが首をふる。


「スウさんと接していると、人も捨てたもんじゃないって――絶望していた気持ちが、ちょっとづつ前向きになるんだって――もう、言わせんなし!」

「え、ええ・・・?」


 私にメンタルケアされてたの・・・? ビックリすぎるんだけど・・・。


「天然か、コノヤロー」


 ツクヨミさんが目尻を拭いながら、苦笑い。

 うーむ・・・コミュ障な私でも、人を癒せたのかな? ――なら・・・結構、マジに良かった。

 ツクヨミさんが静かに呟く。


「とても慎重に心に触れてくれるから・・・」


 そんな言葉に・・・私の性格も悪くないんだと思えた。





 キングとかいう犯罪者を銀河連合にしょっ引いたあと、私は思った。

「彼らは、どうやって剣とかの型を作ってたんだろう?」と。

 濡れた砂で型を取っていたのは分かる。でも、その原型は何から?

 そんな事を思いながら奴らのアジトの工房らしき場所に行くと、蜜蝋が出てきた。


「なるほど、蜜蝋は加工しやすいから蜜蝋を選んだのか」


(なら蜜蝋が有るということは、近くにミツバチが住んでいそう)


 キングの拠点で結構な量の蜜蝋を手に入れたけど――足りない、もっと欲しい(欲望)。

 私は飛んで花畑の有る場所を見つけ待機。やっぱりミツバチが飛んできた。

〖念動力〗で捕まえたミツバチに、コヨリを結んで逃がす。

 するとミツバチは巣の方へ飛んでった。

 こうして巣を発見。あーあ、ミツバチくん拠点を教えちゃった。

 夕食を豪華にしてもらうために、私はミツバチの巣を強襲。


「ごめんねー」


 と謝罪しつつ巣をゲットする酷い奴、まるでサイコパス。


「全部ちゃんと利用するからね(サイコパス)」


 という訳で私は拠点に戻って巣を絞って、ハチミツをゲット。

 甘い物が大好きな女子たちから歓声。


「お菓子を作ろう」なんて声がいっぱい。


 だけど、私にはハチミツを絞ってからが重要。

 するとルーローちゃんが、バラバラになっている絞りカスの巣を捨てようとしたんで、


「や、止めて!!」


 と、私は大声を挙げてしまった。

 捨てようとしていたルーローちゃんが、涙目になる。


「ス、スウさん! わ・・・私――お手伝いがしたくて、怒らせるつもりじゃ! ―――ご、ごめんなさい!」


 ルーローちゃんが本気で涙目なんで、「違うんだ」と抱きしめて頭を撫でる。


「お、怒ってないよ。――私、その巣が欲しかっただけなんだよ」

「えっ、ミツバチの巣が欲しかったんですか!?」

「うん、ミツバチの巣からはね、蜜蝋が取れるんだよ。ミツバチが巣を作る時に分泌する成分はロウソクにもなるし、他にも色々役に立つんだ」

「な、なるほどです! よく知らなくて、ごめんなさい!!」

「謝らなくていいよ、こっちも大声出してごめんね。私、ビックリしちゃったんだ」


 というわけで巣と水を銅の鍋にいれて、グツグツ。

 巣が完全に溶けたら銅線を編んで作ったザルに通して、下受けに置いた容器に流し込む。こうして本当の絞りカスと蜜蝋を分離。

 あとは容器を、一日から二日放置すれば――


「出来た、蜜蝋!」


 見事な蜜蝋が出来ました。

 

 蜜蝋は柔らかく、簡単に加工ができて、常温や人肌では溶けにくい――だけど加熱すれば簡単に溶ける。型取りには最高。ありがとうミツバチ――無駄にはしなかったでしょ!(サイコパス)

 などと自分は蜂さんの怒りは買ってない。と自分を洗脳して、蜜蝋で釣り針の型とか作ったりした。




 私は配信しながらオックスさんと相談していた。


「リイムに乗って、海峡を渡る・・・か」

「コケッ!」(お任せあれ!)

「はい、リイムなら一人づつ運べます」

「確かに不可能ではないだろうが、それよりむしろ・・・・戦闘要員と考えたほうが良いかも知れない。竹があるのでイカダ程度なら作成は簡単だ。竹が一本あれば、人間を十分に浮かせられる。しかし問題は、海の中にいる生き物だ」

「戦闘ですか? リイムは何度か私を乗せて戦った事がありますが」

「実はΩアムアたちが言うには、海峡にドラゴンが発見されているらしい」


❝そうそう、みんなにシードラゴンって呼ばれてるのが出るで❞

❝あれのせいで、俺等まだ海峡を渡れないんだよ❞


「えっ、また恐竜ですか!?」

「いや、黒いヘビのような見た目らしい。海に住んでいるらしいんだが、空を飛ぶ」

「空まで・・・もしかして、マンタドラゴンの仲間か・・・――って、待って下さい。死んだ経験のある方はいますか!? ――銀河連合で復活された方!」


 全員が首を振った。

 よかった。

 スキルを消してくるMoB相手で死んだ経験がある人がいたら、大変な事になる。

 オックスさんが続ける。


「海の上で巨大生物に襲われたら、船を壊されて終わりだ」

「確かにです」

「そこでリイムに乗った誰かが、ドラゴンと戦うというわけだ。――海峡に挑戦した組で、何組かは渡航に成功しているが、殆の組がドラゴンに船を沈められている。だから気球を作って渡った奴らもいるが、気球を作るのはちょっと大変過ぎるからな――。しかしドラゴンさえいなければ皆安全に渡航できるし、俺達がこの大陸で発見した素材も船が有れば運びやすい――リイムだと一度にあまり量が運べないだろう」

「なるほどです」


 それにスキルを消してくる奴は、別の意味でも処理しておきたい。


「リイムに乗って戦うのは、リッカが適任だろうな」

「ですね・・・・私はスキルも兵器も使えないと、ザコです――すみません」


 するとコメントが騒ぎ出す。


❝天は、二物にぶつを与えず❞

一物イチモツすら、男にしか与えないけどなwww❞


 ・・・・・・。


「『スウは激怒した。必ず、かの邪智暴虐のリスナーを除かねばならぬと、決意した。』」


❝!?❞

❝お、怒らないで、スウたん・・・・!❞

❝最後は一式さんとの約束を守るために、裸で駆けつけるんですね❞


「『スウはエロのことは分からぬ。スウは生粋の陰キャである。引きこもり、ゲームを遊んで暮らしてきた。けれども邪悪に対しては、人一倍敏感であった。』」


❝誰か知らんが、火に油を注ぐなワロwww❞

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る