第548話 我が世の春

   ◆◇sight:ゴロツキ集落の首領・キング◇◆




「キングさん、南西に女だらけの拠点がありました。それもスゲェ美人が4人もいましたよ。モデルみたいなのと、チビですが、顔は相当良いのと、まつげの長いのが特におすすめです」

「見せられるか?」

「はい――〖サイコメトリー〗」


 この有能な部下は、最初に俺の誘いに乗った男でカラカサという。女を犯させてやったら二つ返事だった。

 カラカサがスキルを使えば、ヤツの見た記憶が俺に移植され、俺も見れるようになる。


「おお、なんだこの美人――白人か? それにこのチビもエグい美人じゃねぇか。あと、後ろのガキの顔も悪くねぇ――このタレ目でまつ毛の長いヤツも、相当な美人だぞ」

「でしょ? ソイツとあとはギャルっぽいのがオススメです。リーダーっぽい天パは顔は普通ですが、気弱そうで嗜虐心をそそりますよ。小さな集落ですが、いい女共が9人もいました」

「こんな危険な場所で女で固まるとか、頭が悪い奴らだな――近くにこんな最高の狩り場があったとはな」

「ですね。男は、一人だけ手ごわそうなガタイの良いのがいましたが、後は小学生のガキだけでした。なんと11人中、9人が女です」


 俺は、革の鞘から海賊が持っているようなサーベルの形をした愛刀を取り出して、その黄金の光沢に自分の顔を映す。


「今夜あたり、狩るか」


 この青銅の武器が有れば、俺に怖いものなんて無い。

 銅とスズを見つけた時は、自らの幸運に感謝したぜ。

 銅とスズなら、ただの石の炉でも溶かせる。

 これがもし鉄だったら俺には加工できなかっただろうが、銅なら簡単だ。

 今も俺の部下が、石の炉でせっせと銅を溶かし、砂のかたで青銅の武器を作っているだろう。

 「青銅の武器なんて」と思うヤツは多いが、青銅は十分に強力だ。斧にして木を伐っても、刃こぼれ一つしない。

 人間に振るえば、頭なんて簡単にカチ割れる。

 「人間を殺しても大丈夫なのか」? この惑星で死んだら、生存者が死んだ人間を死亡申請するまで復活はされない。


 蘇生されたら俺達のやっている事がバレるだろうが、殺した人間の身内は全員、俺達が檻に捕らえるか殺してある。

 だから問題ない。


「おっとキングさん、今日の処刑ショーが始まるようです」


 俺は自分に逆らうヤツに、容赦はしない。

 逆らったヤツは男でも女でも処刑する。

 さて行くか。


 俺は、ひときわ大きく作らせた、自分の寝所から出た。


 砂の広場に突き立てられた丸太に、男女が一人ずつ括りつけられている。

 二人共何やら喚いているが、気にする必要は無い。

 周りには歓声を上げる俺の部下。

 さらにその周りには、檻の中で悲鳴を挙げる女や、青ざめている女がいる。


 檻の中の女等にも、俺に逆らうとどうなるか、しっかりその眼に焼き付けてやる必要があるからな。


 俺は、処刑場兼広場の中央に寄って演説を開始する。


「さて諸君、ここに非常に愚かな二人が縛られている。こいつらは俺に逆らった、脳のないバカ共だ」

「そうだ!」

「早くバカの死ぬところを見せてくれ!」


 俺は部下に尋ねる。


「どんな処刑方法が、バカには相応しい!?」

「火炙りだ!」

「ヤリで下から頭まで突き刺せ!」


 興奮して盛り上がる部下に、俺は手の平を見せ上下させる。


「なるほど、君たちの意見は分かった――だが、俺はこう思う。からっぽの頭など、必要ないだろう。ならばこの頭を切り離してやるべきだと」


 俺の部下達から爆笑が返ってきた。

 俺は彼らの笑顔に応える。


「俺は、この二人の処刑方法を決めた。斬首だ」

「斬首だ!」「斬首だ!」「斬首だ!」


 熱に浮かされたように叫ぶ部下たちを見た縛られた男女二人が、青ざめ震えている。

 いいぞ。怯えろ、怯えろ。その姿が見たかったのだ。


 縛られた女が叫んだ。


「た、助けて・・・お願い! こんなの可怪しいわ、あなた達狂ってる!」


 すると次は男だ。


「俺はどうなってもいい! 杏奈だけは、杏奈だけは助けてくれ!」


 俺は愚かな二人の無様を、笑い飛ばす。


「後悔しろ! もう遅いがな。――では最後に君たちへ、人生を生きる上で、とても大事な教訓を送ろう、」


 俺は愚か者を振り返り、両手を掲げ、おごそかに訓示してやる。


「『後悔先に立たず』――座右の銘にして生きたまへ」


 辺りに響き渡る、部下の爆笑。


「さて、では刑を執行する。おい、コイツ等の頭を地面に伏せさせろ」


 頷いた特にガタイの良い部下が、男を丸太から引きずり降ろして、ひざまずかせ頭を踏みつけ、地面につけさせた。

 女が叫びだす。


「誠司! 止めて、お願い、止めて! 誠司を殺さないで!! お願いですから、私をどうしても良いから! お願いよ―――ッ!!」

「誠司くん、言い残すことは?」

「地獄に落ちろ!!」


 俺は、斬首用の青銅の斧を振り上げる。


「はいはい、負け犬の遠吠えご苦労様。では、さような――」


 爆音が響いた。

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