第518話 飛ぼう


❝セ、セカンド・ゾーン!?❞

❝モデレイター(リッカ):まて、止めろスウ!!❞


 私は、避けきれない弾幕に、右側のにぶつける。

 右の翼右腕が弾幕に当たった。

 右の翼右腕がもげた。


「腕の一本くらいなら・・・あげる」

 

❝おい、右側の翼がなくなったけど!? スウ、大丈夫か!?❞

❝片翼で飛んでる・・・嘘だろおい・・・❞


『ちがう、確かに被弾だが、スウはわざと右側を選んで破壊したんだろうな』


❝マイルズの言葉を誰か訳して❞

❝マイルズさんがいいたいのは、反トルクの事だともう。スウはあの弾幕の中を抜けるために翼をわざと破壊したんだ、それも右をわざわざ選んで❞

❝――そうか、あのプロペラ戦闘機はプロペラが右回転だから、左に機体が回転しようとする反作用が起きてる。だからスウは右側の翼だけをもいだんだ。機体サイズを小さくするために。――左側をもいだら、機体が回転して大変なことになるけど、右ならまだ大丈夫❞

❝頭おかしい❞

❝解釈一致。しかも満場一致❞

❝ビーナスの弾幕がどんどん濃くなっていく・・・❞

❝ビーナスのHPゲージ見ろ、ビーナスも必死なんだ! いよいよ追い詰められてる!❞

❝でも、スウもあんな状態じゃ長くは戦えないだろう❞


 一気に倒そう。


 上空がほしい。


「一斉掃射」


 私は〈時空倉庫の鍵・大〉の武器も使って攻撃しながら、ビーナスの上空に行って、〈単分子波動翼〉を発動。


「パージ」


❝ちょ、落下する〈単分子波動翼〉をぶつけたのはいいけど、翼を全部なくしたぞ!? リフティングボディじゃないよな!?❞

❝どう見ても普通のレシプロ戦闘機!❞

❝落下してる! 左右舵ラダー――昇降舵エレベーターと、方向舵だけで弾幕を避けてる!❞

❝てか左右舵ラダーと、昇降舵エレベーターしかないのに横転までしてるぞあの子!❞

❝た、確かに左右舵ラダーでも横転できるけども❞


『怪物じゃないか』


❝マイルズまで驚いてるし。軍人驚かせるってもう・・・❞


❝スウが、決めに行った!❞

❝てかもう本当に弾幕の隙間がない、飛行機の胴体も通れないぞ❞


 プロペラも折れた。


❝だめだ、マイルズが攻撃してるけど相手のHPが削りきれない。もう衝突する! 方向舵じゃ弱いか、昇降舵で回避しないと――って、回避しない!? なんで❞

❝って、回避運動とらないの!?❞

❝スウが、飛行機から飛び降りた!?❞

❝ちょ、飛行機をヴィーナスにぶつけた!❞

❝スウはどうするんだ❞


 飛行機は通れなくとも、人はまだ通れる。


「〖飛行〗」


❝なるほどスキル!❞

❝駄目だ、飛行機をぶつけたくらいじゃ威力が弱い!❞

❝ビーナスのHPがミリだ!❞


「まだ」


❝まだなんか、隠し玉が有るの!?❞


「隠し玉はもうない」


❝・・・・じゃあ❞


 私は落下しながら思いつく限りのスキルを使って、ビーナスに渾身のパンチを叩き込んだ。


 ビーナスが一気に飴色になって、ヒビが入る、ヒビから光が漏れて――、


◤70層ボス、ビーナスを倒しました! 銀河クレジット1000万、勲功ポイント1000万を手に入れました◢


 倒した。


『今回はコアは無しか』


 マイルズが呟いた。


❝やりやがった、発狂デスロすら超える強さを見せてきたビーナスに勝っちまいやがった❞


 勝ったから、ゾーンを解除・・・・あれ?


 え・・・なに・・・なんで。


 ゾーンが切れない!?


❝どうした、スウ❞


 ・・・・視界が戻らない!

 青いまま、ゾーンが解けない!!


「ゾ、ゾーンが解けないんです!」


❝モデレイター(リッカ):なっ!❞

❝モデレイター(アリス):ス、スウさん、大丈夫ですか!?❞


 リッカとアリスが配信を見ていたのか、心配そうなコメントをする。


「わ、分かんない! なんでゾーンが切れないの!?」


『スウさん!』


 突然開くVRの通信ウィンドウ。


 アリスの青ざめた顔があった。

 すると、アリスの顔を見た途端。


 視界に色が戻ってきた。


「あ・・・・解けた・・・良かった」

『よ、良かったです』

「うん、ビックリした」

『ゾーンが解けない事なんて、あるんですね』

「ちょっと怖かったよ」


❝モデレイター(リッカ):スウ❞


「えっ、・・・なに、リッカ」


❝モデレイター(リッカ):セカンド・ゾーンはもうやるな❞


「え・・・でも、アリスがいたら戻れるし。多分これからさらに強力な敵が現れるだろうし」


❝モデレイター(リッカ):お願いだから・・・もう止めてくれ。・・・・そうだ! サード・ゾーンなんて物を見つけても絶対にやるなよ・・・!!❞


「・・・う」


❝モデレイター(リッカ):・・・お願いだから❞


「わ、分かったよ。心配かけてごめん、リッカ」

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