第511話 高速ステージを頑張ります

   ◆◇◆◇◆



「〖暗視〗〖超・暗視〗」


 洞窟の中が暗いので、私は視界を確保してからVSフレーム用の倉庫から弾丸と燃料を取り出して、機体に補給する。


『スウ、すまない。こちらにも貰えるか?』

「あい〖念動力〗」


 機体を寄せて、念動力でマイルズの機体の翼に付いている機関銃に補充してあげる。


『空中でこんなに楽に弾薬補給や燃料補給とか、本当に便利だな、お前は』

「これ、ほかの人どうしてるんだろうね?」

『パワーアップ武装は、弾数無限だからな、それを使うらしいぞ。燃料は追加タンクだな』

「なるほどぉ、私達もパワーアップを取らないとね」


 補給を終えていよいよ加速。傾斜角80度な洞窟を一気に降下していく。


「うわ、もう時速500キロ出てるよ。機体が空中分解したりしないよね?」

『レシプロ機とは言え、流石に銀河連合の機体だ。マッハ2まで耐えられるらしい。マッハ2程度では摂氏800度を越えないので、爆発の危険もない。――だが、ベルトはきっちり締めておけよ』

「う、うん」

『しかしこの機体の終末速度は、だいたい時速1000キロだ。それ以上はプロペラで速度を上げるだけだ』


❝終末速度ってなに?❞

❝空気が有ると、落下で加速できる限界があるん。虫がどんなに高い場所から落下しても死なないみたいなやつ❞

❝はえー、知らなんだ❞


「レシプロ機なのにマッハ超える想定とかしてるんだ」

『レシプロ機でも、落下しながらならマッハを超えるからな。このステージを想定してらしい』

「なるほど」


 私達は落下しながらどんどん加速していく。


『スウ、お前がレースでやっていたように、重力に対して翼を縦にして降りるぞ』

「りょ」

『最速降下曲線は、流石にこのステージでは難しいがな』

「障害物多いもんね――・・・・いや・・・まってマイルズ、さらに良いこと考えた」

『良いこと?』


 こうするの。私は機体を前後反転。

 さらにプロペラを逆回転させた。


『な―――なんだ、何をしてる、スウ』

「昔、震電っていう前翼機があったんだけど」


 前進翼機じゃなくて、前翼機。


 飛行機を、前後逆にしたみたいな形のプロペラ機。


『震電・・・・日本のエンテ翼機か』

「うん、震電は空力特性から普通の飛行機より早かった」

『らしいな』

「そして翼を前後逆にしたら、空気が剥離しやすくなって落下しやすくなる」


 マイルズも、私みたいに戦闘機を前後逆にして飛び始める。


『なるほど』


❝確かにスウの乗ってる機体は前進翼機だし、逆さに飛ぶと、まるでレシプロ機の震電だけども・・・どうやってロールとかの向きを変えるん❞


「翼自体を捻れる様にしてきました。この状況も想定していたので!」


❝いや、こんな状況想定するってなんだよ・・・・❞

❝うわ、翼自体が動いてる・・・準備いいなあ❞


 私とマイルズの機体が前後逆さのまま横転して、落下しながら加速していく。


 でも柱みたいなのとか、壁みたいなのがいっぱいあるし、上下左右の壁からチンアナゴみたいなのがワラワラ出てきて弾幕を飛ばしてくる。

 そこを高速で降りてるから、躱すので精一杯。最速降下曲線とかも意識できない。


 翼もできるだけ縦にしてるだけで、横転しないと避けれない。


 障害物を避けたり、後ろ向きにも設置しておいた機銃で、チンアナゴを撃ち抜いたりしながら降りていく。


 チンアナゴは確実にパワーアップを出すのが助かる。


『しかし速いのは良いが、壁際を後ろ向きで躱すのはヒヤヒヤするぞ――左右が逆は流石にキツイ。それからパワーアップも取りにくい』

「〖念動力〗はい、マイルズ」

『素晴らしい取り方だな』

「この男、さっきまで横着とか言ってたくせに」

『浅はかな男だ』


 こうしてパワーアップを取りまくった私達は、完全武装となった。


 左右から発射する機関銃が、なぜか片方3方向――合計6方向に飛ぶようになり、プロペラの真ん中から水レーザーが飛ぶようになり、機体の周囲には謎のドローンが2つ浮かんで衛星のように周り、そこからも機関銃が飛んでいる。


『凄まじいな、全く意味不明なテクノロジーだ』

「まあ、相手は夢の世界を具現化するような感じの存在だし・・・」


 こうして、当たったら死ぬジェットコースター状態で、若干怯えながらもどんどん降りていく。


「時速1200キロ出てる! 凄く飛行機が揺れる!」

『音速に入るぞ、吹き飛ばされるなよ!』


 機体に白い傘が掛かり始めた。


 やがて振動も消えて静かな世界に。

 音速を超えた。


 と、視界の先の壁が移動し始めた。


『・・・・なんだあれは』

「動く地形かな・・・高速ステージのお決まりみたいなの」

『面倒な・・・!』


 変則的な動きをする壁を、私達はなんとか躱していく。

 すると、トビウオみたいなザコがワラワラと出てきた。

 しかし、こちらの速度が早すぎるのか、ザコを追い越してしまう。

 追い越したザコをみれば、後ろの至近距離から攻撃しようとしている。


「させない!」


 私は操縦桿を右に倒して、翼の端をザコの前に持ってくる。

 するとザコが猛烈な勢いで吹っ飛んで、きりもみ回転をしながら落下していった。


❝なにあれ・・・・? なんでザコがあんなに吹っ飛んだの?❞

❝さっき言ってた後方乱気流だよ。音速で飛ぶ飛行機の後方乱気流なんか受けたんだから、タダじゃ済まない❞

❝それは、もう衝撃波なんよ、凶器なんよ。爆轟に近いんよ❞


 そこからも何度かザコに後ろに回られるけど、その度に、私は翼端が生み出す乱気流で相手を吹き飛ばした。

 こうしてしばらくトビウオゾーンを飛んでいると、


『まて、通路が全て壁で覆われているぞ、進む道がない』


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