一 家政婦ヨーキ7
そして、しばらくたったある日。
「アイシャ、遊ぼう」
「遊ぼう」
アイシャのもとにテラとエラが遊びを誘いに来た。ニヤニヤしている二人を見て、アイシャは悪い予感がする。前、同じようにかくれんぼしたときは、掃除道具入れに閉じ込められた。アイシャは一瞬断ろうと思う。しかしふと、プルトが言っていたみんな仲良くな、という言葉が蘇る。大好きな父の成果が気になった。
「うん、何するの」
「かくれんぼ」
「かくれんぼ」
テラとエラがニヤニヤしながら言う。
「わかったわ」
怪しさ満載だが、前回と同じ手は食わないぞ、と内心意気込む。
「敷地内ならどこでもオッケーってことにしましょ」
テラがそう言う。
「わかった」
アイシャはそう言った。そして、三人でじゃんけんする。負けたのはエラだった。鬼はエラだ。エラが十秒をゆっくり数える。
アイシャはすぐにダイニングルームの机の下に隠れる。ここなら、閉じ込められることはないと思った。すぐ見つかるかもしれないが、そんなのどうでも良いと思った。
しかし、アイシャの予想に反して、一向にアイシャは見つからなかった。エラがこちらにダイニングルームに入ってくる気配がないのだ。様子を見ると、どうやら家を探していないらしい。外を探しているのだろうか。とにかく見つからなければそれで良い。そう思った。
おかしい。流石に見つからなさ過ぎる。自分で言うのも何だが、こんな簡単な場所が見つからないわけがない。アイシャは自分の席に座って、見つかるのを待っていた。と、
ガチャ。
ダイニングルームに入ってくる人がいた。エラだ。と思ったが、それは違かった。
「アイシャ様。どうやら嵌められてますよ」
そう言って、入ってきたのはヨーキだった。
「どういうこと」
アイシャは状況が飲み込めず、ヨーキに聞いた。
「エラ様はアイシャ様を見つける気はないようです。今は外でメルトさんとテラ様と一緒に遊んでいます」
ヨーキが説明した。
しまった。嵌められた。
アイシャは説明を聞いてそう思う。なるほど、放置プレーときたか。迂闊だった。無駄な時間を過ごしてしまったようだ。悔し涙が出てくる。
「アイシャ様、泣いてはだめですよ。泣いたら負けです。強く戦いましょう」
ヨーキはそう言った。
「戦うってどうやって」
アイシャはヨーキの言ってることがわからなかった。二対一である。戦って勝てる相手ではない。そもそもアイシャは暴力が好きじゃない。もちろん、母のヒルドには武道を教わったことはある。でも、ヨーキの言ってることはたぶんそういう戦うではないのだ。
「相手の出来ないことを出来るようになるのです。家事と裁縫なら私も教えられます」
アイシャはヨーキの言葉を咀嚼する。正直、アイシャは二人より出来ることは多いのだ。五歳までは家事も少しやっていたし、ヒルドが死ぬまでは毎日一緒に武道の基礎鍛錬をしていた。そう考えてみると、人間として負けている部分は少ないのだ。今は母親がトーラに変わって礼儀作法はやりにくくなっている部分があり、そこは負けているのだろう。ただ、そこだけである。
仮に、ヨーキの下で家事に磨きをかけてと裁縫をならったらどうだ。テラとエラには真似の出来ない事が出来るのではないか。そう考えるとヨーキの提案はとても魅力的なものだった。また、それに気付かせてくれた恩義もある。裁縫が出来るようになれば、仮に一人でも楽しめることも増える。至れり尽くせりではないだろうか。
「わかった。ヨーキ。私に家事と裁縫を教えて」
アイシャは決意した。
「もちろんです」
ヨーキは嬉しそうに頷いた。
それからというもの。アイシャはヨーキに付き従って、色々と家事を手伝った。
また、空いている時間は裁縫に時間を費やしたため、あっという間に時間が過ぎてった。時折、テラとエラがニヤニヤと遊びに誘いに来たが、それは全部断って、ヨーキとの時間に費やした。
すると、テラとエラもアイシャをからかうのがつまらなくなり、やがて、嫌がらせはなくなっていった。
一方プルトはというと。三人を仲良くさせることはもう諦めていた。人間的なウマが合わないのだ。ただ、せめて嫌がらせが起きないように、振る舞いとしてのバランスをはかる。アイシャの努力もあって、嫌がらせがなくなった頃には、胸をほっと撫で下ろすのだった。と、同時にアイシャが毎朝続けている武道を軽く教えてあげようと、ヒルドに代わってアイシャに武道を教えることになった。
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