第15話 海の王
今日はリルと海岸を歩いている。
「もう、サトシ様はちっとも海にこないし……」
「ごめんね。寂しい想いさせて。」
「寂しくないし……」
リルはセパレートタイプの白い水着を着ていてとても目のやり場に困る。
胸が大きく、水着面積が狭いので胸もお尻もはみ出ている。
「もう、サトシ様そんなに私の体見ないでよね。恥ずかしい。でもサトシ様ならしょうがないから見てもいいよ。」
いったいどっちなんだ。
リルは色白のスラっとした体形で今は人化しているが黒髪を長く伸ばしている。人化を解くと黒髪がタコ足になる。
リルからは海に沈んだ財宝や狩ってきた魔物の素材が毎日届けられていて、多いと一日5万シーロ(500万円相当)にもなる。
それに魔素も僕の体に届けられている。
「海の中に入れたらいいのになぁ。」
「海の中に入りたかったの?」
「えっ、できるの?」
「私の魔法を使えば簡単だよ。
私は水魔法が使えるんだけど、海は特に相性が良くて色んなことができるの。」
そう言って僕の手を引いて海に入っていくリル。
すると僕の体の周りに薄い空気の膜が覆われて、服が濡れていない。
顔を水面につけても息ができる。
「水の中から必要な空気を取り込んでいるから大丈夫だよ。」
水中から酸素を取り出して二酸化炭素を排出しているのだろう。
リルに手を引かれて海の中を進む。
「水の中をこんなに早く進むのは初めてだ。
声も聞こえる?」
「うん。声も届くようにしてるよ。」
普通は海底だと声が聞こえない。
綺麗な珊瑚や、色とりどりの魚が泳いでいてとても幻想的だ。
たくさんの魚がリルの周りに集まってきていて、海の生き物に愛されていることがわかる。
「こんなに綺麗な海をを見たことない。」
「私のことを褒められるよりも、海のことを褒められる方がなんだか嬉しいわね。」
リルは僕の手を引きながら照れているようだった。
その時、海の奥底で何かが動いた気がした。
「ん?何だ?」
次の瞬間、目の前が真っ暗になった。
「えっ、リルどこ!」
「お前がリルとオクトーを
海の王である私の娘たちに手を出すとは言い度胸だな。」
暗いなかに一つの目だけが黄色く光って見える。
その目は目だけで、僕の体くらいの大きさだ。
体丸ごと丸ごと取り込まれたということか。
「パパやめて!
その人は私の大事な人なの!」
「こんな人間が大事な人?
人間はどいつも浅はかで愚かだ。
いつも人間同士で争い合い、他の種族を見下し傷つける。
お前に一つチャンスをやろう。」
いや……ちょっと無理……この王様に認められるとか……
僕は懸命に足掻いて目のある方へ泳いだ。
「無理だぞ人間。私からは逃れられん。」
手に硬い何がが触れた。
(テイム!)
すると体の力が抜け、真っ暗だった空間に光が差し始めた。
「サトシ様!」
リルが僕に抱きついてきた。
吸盤でもみくちゃにされて気持ちいい。
「サトシと言われるのか。
話が主よ。」
「あ、うん。
リルとオクトーのことは僕に任せてもらえるかな。」
「お任せします。」
「海はこれまでどおりあなたが取り仕切ってね。
人間に必要そうな財宝とか魔物の素材あったら届けてね。」
「承知した。」
海の王が僕から離れるとその全貌を現した。巨大なタコだった。
僕の話を聞いた後、海の底へと潜っていった。
「怖いお父さんだったね。」
「パパを分からせるなんて、サトシ様すごいですね!」
無理矢理にだけど……
リルは僕の体にずっと抱きついてきて、そのまま海の中で2人で気持ちよくなってしまった。
▽
海の中で浮かびながら寝てしまい、リルの吸盤に吸われながら目を覚ました。
「あぁ、暖かくて気持ちいい……」
「海の中は寒いんだから、仕方ないでしょ。」
リルは水の中で漂う僕をしっかりとホールドしてプイッと目を逸らした。
海から上がり、浜辺で海岸を見ていると海面が盛り上がって海の王様が姿を現した。
「主よ。財宝をもってきたぞ。」
王様の無数の足には宝箱や宝石、硬貨など様々なものがくっついていた。
「海から巨大な魔物がきたぞー!」
僕たちの後ろで魔物進行を知らせる鐘が勢いよく鳴らされた。
「王様、一旦それは持ち帰って指示があるまで待っていてほしい。」
「わかった。
指示を待とう。」
王様は静かに水面から沈んでいった。
「少年大丈夫か?でかいタコの魔物が現れたようだったが。」
「はい、すぐにどこかにいってしまったので。」
危ない危ない……
また、被害を出してしまうところだった。
「リルも僕の家においでよ。」
「えっ、いいの?……まぁ仕方ないわね。」
きっと嬉しいのだろう顔がにやけている。
▽
「海の王様からたまには会いたいと言われてんだけど、何がいい案ないかな?」
「パパはすぐ魔物認定されて討伐対象になっちゃうからね……」
「船とかいかがですか?」
「船か……」
「サトシ様、海から続く洞窟があるから、一度見てみる?」
リルからの提案でその洞窟を見に行くことになった。
「海からは何度も来たんだけど、たしかこの辺り……あった!」
リルは防壁の外側の森の中にある大きな下穴のある場所についた。
中は洞窟になっていてごつごつした岩場を降りていく。
下まで降りると海と繋がっていてそこだけ少し砂浜がある。
秘密基地のようでワクワクする。
「いいんじゃないかな。この入り江に拠点を作ろう。」
「サトシ様、いい案ですね。
ここでしたら船着き場もできそうです。
海の素材取引もここで行えそうですね。」
コリーナも賛成してくれた。
「しかし、街の大工達に建設を頼んで場所を知られるのは嫌だな……」
「サトシ様、このイドにお任せください。エルフの薬製造所建設で培われた技術で必ず全うして見せます。」
「何言ってんのよ!私と一緒だから出来たんでしょ!
サトシ様、私もこの建設やらせてください。」
「イド、ヴァランテーヌ、あとノアもこの建設任せていいかな?」
「はっ、建設についての書物を復習し、必ずお役に立てるよう尽力します。」
その日から3人を中心に入り江拠点の建設が始まった。
「まずは、この入り江の目的から決めよう。」
「やはり、海の魔物達が素材や財宝を持ち込める場所なんでしょうね。」
「容量の大きな指輪じゃない収納の魔道具を置いておいたらいいんじゃないかしら。」
「体の疲れをとれる休憩所みたいな感じの場所があったらいいな。」
「屋敷にあるみたいなお風呂がいいー。」
「あの風呂はいいものだ。」
思い思いの案が出されて建設の工事が始まった。
陸上の魔物と海中の魔物が共同で作業にあたり、魔法と亜空間収納を駆使する。
岩肌を魔法で整えたり、穴を掘ったりする。
「サトシ様、容量の大きな亜空間収納の魔道具を入手したいです。
競売に参加したいのですがいいでしょうか。」
「おもしろそうだね。僕もついていくよ。」
「はい、一緒にまいりましょう。」
競売が開催される日にイドとヴァランテーヌに挟まれて競売が開かれる場所を訪ねた。
「いらっしゃい。今日は商工組合が開催する競売があるよ。入場料一人100シーロ(1万円相当)必要だけど入るかい?」
「はい、3人お願いします。」
競売が行われる場所は長い廊下に部屋が何部屋もある平屋造りだった。
部屋に入ると今日出品されるであろう物や生き物が並んでいて、売り手がその説明をしていた。
「ホワイトドラゴンの皮だよー!これで装備一式作れば物理耐性、魔法耐性、各状態異常を防ぐとことができる逸品だよ。50万シーロ(5000万円シーロ)からスタートの品だよー!」
「これは本当にドラゴンの皮なんですか?」
「あたりまえだ。商工組合の鑑定書付きだ。この競売は商工組合が競売品全てを鑑定して偽物が混じることはない。」
それなら安心だ。
「この宝箱は収納魔道具ですか?」
「おう、そうだよ。なんと脅威の100m四角が収納できる魔道具だ。
100万シーロスタートだよ。」
「それはすごい。」
「指輪のように小さなものに魔法を付与するものよりも大きなものに付与するとその効果が向上するらしいので指輪の収納量に比べて大きいと聞いたことがあります。」
「なるほど。そうなんだね。」
「サトシ様、ミスリルよりも上のオリハルコン以上の装備品は武器防具屋ではほとんど入手できません。今回出品される品はぜひ入手したいです。」
「そうだね。任せるよ。」
「そろそろ競売が始まります。
こちらへお集まりください。
出店者も番号1から順に準備始めてください。」
「おっとそろそろ行こうか。
なんだかワクワクするね。」
「そうですね。
雰囲気にのまれないように、気を付けないといけませんね。」
僕が管理しているわけではないが、かなりお金はあるみたいで、希望の品は落札することができた。
ホワイトドラゴンの皮 150万シーロ(1億5千万円相当)
収納の宝箱 200万シーロ(2億円相当)
オリハルコンの剣10万(1千万円相当)他オリハルコン品多数
匠の腕輪 50万シーロ(5千万円相当)
技巧の匠スキルが付与された腕輪。装備者はまれにハイクオリティの品を製造することができる。
スキルの書(縮地) 30万シーロ(3千万円相当)
この書を読んだものはスキル縮地を習得可能。縮地:短距離を高速移動することができる。練度によりその距離を延ばすことができる。1回使用すると燃えてなくなる。
鑑定レンズ 100万シーロ(1億円相当)
人、物に関わらずその価値、使い方、名称がわかるレンズ。
競売はとても面白く、ファンタジーな品をたくさん見ることができ満足することができた。
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