-27 鶏

「おい、大丈夫か?」

聞き覚えのある声。確か太った男。

「お前は何日もよく頑張っている」

よく見えないが、おそらく私の体を布で拭き汚物を水で流している。

「酷い事を。こんなになって」

よく聞こえないが、鼻をすする様な音。

沈黙。

遠くで雌鶏が鳴いている。今は何日だっけ? 何回目の朝?

「ここだけの話だがな。お前たちが参加していたという複数の証言があるんだ」

それはもう知っている。誰だ。誰の嘘で私は。私たちは。

「妻は」

かろうじて掠れた声が出た。

「妻? ああ、きみの奥さんは心配いらない。彼女は既に正直に認めた。きみと共に魔女ローラのサバトへ参加したと」

また雌鶏の声が聞こえる。男は話を続けた。

「だが参加しただけなんだろ? 今ならまだ罪は軽くなる。つまりこれは予備的な確認にすぎない。既に彼女はそう言っているのだから。正直な話、お前の尋問はもうやる必要がない。すぐ止めたっていい」

雌鶏が鳴く。いや、よく聞くとそれは違うように思えた。声。まるで人の声。鶏じゃ無い。誰かの笑い声だった。笑い声の合間に、男は本当に不思議そうに尋ねた。

「なあ、お前はどう思う? あんたは今、何のためにこんな酷い目にあっている? おれには分からない。どこにその必要がある?」

嘘だ。フランチェスカがそんなことを言うわけが無い。私たちはサバトになど参加していない。そんな嘘をつくわけが。

「じゃあ、またな」

男が立ち上がる気配がした。

待ってくれ。まだ聞いていない。なぜそんな嘘をつく。どうして。

扉の閉まる音が聞こえた。

笑い声がうるさくて考えに集中できない。誰が笑っている? 見えない。見つからない。うるさい。しかし随分と楽しそうだ。

せっかくなのでマネして笑おうとした。しかし外れた顎がカクカクと鳴るだけだった。


長い時間が空いた。時々男が来て、パンが出される。無理やりに口に詰め込む。また長い時間。雌鶏の笑い声。それらを10回程繰り返した後、次の尋問が始まった。

何度目の尋問だったか。

私はもう忘れた。

鶏が笑っていた。

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