異世界で奴隷になった女さんの戦い(物理)の記録
新川キナ
第1話 ドーンしてバーン!
夕方の五時になった。その日の仕事が終わった私は帰宅する。途中でスーパーに寄って惣菜を購入するのも忘れない。そして自宅のアパートに到着したら、さっさと化粧を落とした。今日はもうこの後どこにも出る予定はないからね。
お風呂も、ささっと入って夕飯を食べて準備は万端。
「さぁ今日もやるぞー!」
そう言って私はVR機器を立ち上げて、そのまま流れるようにヘッドセットを被る。
ゲームの名前を『ファイターオンライン』。通称を『ファイオン』という。
そう。私は三十三歳を目前にした今。没入型ヴァーチャルリアリティゲームに夢中になっていた。
彼氏や旦那はどうしたって?
いねぇよ、そんなの。
そりゃね。頑張っていた時期もありましたよ。
でもね。全然なんだもの。
そんな時だよ。このゲームに出会ったのは。元々はキックボクササイズが始まりだった。そこから暇つぶし用にとゲームもするようになったんだ。
そして気がつけば私は現実から逃げるかのように、どっぷりとハマった。
ちなみに没入型ヴァーチャルリアリティゲームというのは、仮想空間の中に意識の全てを潜り込ませるタイプのゲームのことを言う。
この没入型ゲームを始めて、かれこれ五年になろうとしている。今日は、まだ誰もフレンドはログインしてない。しかたがないので一人でメインのストーリーを進めることにした。
私のゲームでの職業は仙術士だ。
仙術士は素手による超近接攻撃に加え、仙術と呼ばれる癒やしから補助や攻撃系の術を使用し、更には自身を強化する気功術まで使える万能職だ。ただし多彩故に育て方を間違えると器用貧乏に陥りやすい職業となっている。
普通。オンラインゲームにおいて最強足り得るステータスとは特化型と呼ばれるタイプのステータスでバランス型は弱いのだ。何をするにも中途半端だから。だが私はやりたいようにやる。それがマイ・ジャスティス。
ゲームを始めて一時間ほどした頃。
ピロンとゲーム内にメールが届いた音がした。
「何だろ?」
メールを開けてみると、そこには五周年記念と題した文字が。差出人はエルリアル神とある。このゲームの遊びを司る神の名だ。彼から届いた内容は五周年を記念してテストサーバーで、新キャラクターで遊んでみないかの文字。
「面白いかも」
というわけで私は一度ログアウトして、案内に沿ってキャラを作る画面に移動。自分の分身であるテストサーバー用のキャラクターを作成した。
「性別はもちろん女性。種族はドワーフと人間のハーフ。名前は本名のリサでぇ。髪の色は赤で長さはショートボブがいいな。瞳は緑。肌はピンク味がかった白色でぇ。年齢は最小の十三歳」
身長は高めに設定する。理由はドワーフとのハーフにしたからだ。普通設定だと身長が少し低くなってしまう。
そんな感じで、トントントンと決まっていく。
次に能力だ。
「最強とは無縁のバランス型! 私はゲームが楽しめれば良いのだ!」
というわけで今回も当然のように仙術士になることにした。
「こんな感じかな!」
というわけで、自分のキャラクターが出来たので、ドーンと決定キーを押した。
その瞬間。私の視界がバーンと暗転したのだった。
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