第158話 亀裂
東京駅のダンジョンマスターがダンジョン間輸送を初めてから3日目。初日、2日目と上手く行き、それなりの量の荷物を運んだところでその事件は起こった。自分がテンコにタブレットを渡しているのと同じように、東京駅のダンジョンマスターはワーキャットにタブレットを持たせている。現場でトラックを配置したり、段ボールを召喚して作業させていたところ、別のダンジョンマスターに魅了されたようだ。そのまま手持ちのDPとワーキャットの権限で扱える荷物やダンジョン内に配置していたモンスターを根こそぎ奪われた模様。
タブレットに関しては、本人にしか扱えない設定が出来る。そしてダンジョンマスターは配下のモンスターにある程度権限を委譲出来るし、自分もテンコに予算となるDPを分け与えたり、配下となるモンスターの召喚や特定階層の内装を弄れる設定にしている。一応、誰かに奪われても起動は出来ないのだが、本人が催眠や魅了等で操られている場合は別だ。それこそダンジョンマスターが寝ている間に、権限内の全てを奪うことも出来る。
自分の場合はテンコに分け与えているDPなんて割合的にはかなり少ないのだけど、現在進行形で発展していってるダンジョンの幹部格というかエースモンスターだとそうもいかない。それこそ半分ぐらい預けていても不思議ではない。現場のリーダ格だったワーキャットは一応それなりに育成していた個体みたいだったが、融和派だったこともあり比較的弱い存在だ。
何より、油断していたのは大きいだろう。ワーキャットは人気のあるモンスターで、モフりたいという顧客は多い。ダンジョンマスター側も人気取りのために、触ろうと近づく人間に対しては好意的に接するよう指示を出していただろう。もう敵意のある存在が早々入ってくることもない状況であり、結果魅了に引っかかったわけだ。
ワーキャット自身も格闘戦ならかなり強いし、運動神経は良いから武器を持たせたらそれなりに戦える部類なのだが、絡め手には弱い。要するに、毒や魅了への耐性が低い。……ステータス以上にこの毒や魅了への耐性って重要だな。
タブレットを操作するワーキャット自体が操られてしまったのだから、移譲していた権限内で好き勝手されてしまうのはしょうがない。だけど全体の総資産の3割を奪われたのは大きいな。タワマンは一部解体されてDPに変換され、3日目朝の分の商品を丸々パクられ、移譲してした全DPでシャーペン1本を買わされた東京駅のダンジョンマスターは掲示板で悲鳴を上げている。
……商品を奪われてしまった以上、払った商品分のDPを返却して貰えないかもしれないし、こういう際の保険なんて作ってないんだから悲惨。監視カメラの動画を共有してくれるけど当然仮面をしていて誰か分からないような風貌になっている。あ、こいつ外に出るタイプのダンジョンマスターだ。確か、サキュバスのダンジョンで会ったことのある奴。
あの男、魅了を使えるのか。滅茶苦茶高いスキルではないけど、本人のステータスが高くないと通じないから、通じる相手なら直接殴った方が早いというスキル。あのワーキャットに通じた辺り、かなりの数のモンスターを狩っているのかな。
……そう言えば、スキルとかは使えば使うほど消費魔力が減り、威力が増す仕様だった。そしてその成長は、同じスキルの撃ち合いが1番効率良かったはず。剣術スキル持ち同士で殴り合えば双方が成長するように、魅了スキルもまた撃ち合いで成長するはず。
魅了が使えるサキュバス相手に魅了合戦をやれば、スキルの練度はかなり上がるはず。ということはあの酔っ払いのおっさん、魅了のスキル上げのためにサキュバスのダンジョン通っていたのか。いやリーシャちゃんに手を伸ばした辺りはシモの処理も兼ねていただろうけど、サキュバスダンジョンは魅了のスキル上げの場として1番効率は良かっただろうな。日本円の調達に関してはそこら辺の人間に魅了を使えば、隠し家ぐらいは確保できるだろうしやりたい放題してるな。
……これは、ダンジョン間輸送の雲行きが怪しくなってきたな。ダンジョンマスター自身が現場で対応なんてし始めたらそれこそ暗殺チャンスになってしまうし、最奥のダンジョンマスターの部屋から配置とか一々全部頑張るか、権限の範囲を絞るか、入場の方を厳しくチェックするか。ベストは魅了されないほど強いモンスターを配置することだけど、それが出来るなら苦労はしない。
今回の件で東京駅のダンジョンマスターは信用を下げないためにも商品分のお金を取引先に補填したけど、違約金みたいなお金とかまでは払わなかった。……この手のトラブルが続くようなら成立しないんだけど、流石に警戒していたら連続して起こるようなことはないかな?
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