第150話 結婚式

リーシャちゃんは今年の2月に15歳になったばかりなので、結婚についてはまだ2、3年は先だろうなと思っていたし、その心づもりだった。しかしながら異世界の風習的に、リーシャちゃんは既に行き遅れ判定が出ており、リーシャちゃんからさっさと腕輪寄越せと言われたら渡さざるを得ない。というか腕輪をしていないことが異世界側で、リーシャちゃんがよく絡まれる最大の理由である。日本側はまあ、修道服姿だとコスプレイヤーにしか見えないから?


ちなみに本来この腕輪を渡す儀式は成人前にやるのが異世界側では一般的だそうで、随分と早いとは思うけど成人と同時に結婚するのが一般的ならそうなるか。大体は両家の親立ち合いの元だけど、双方共に親が居ないからそこら辺は気にせず腕輪を渡した。


そして結婚式自体はこじんまりとした規模で、パイロープの街の教会で実施。……わりとこういうのはどこの世界でも一緒というか、大まかには地球側と一緒だろう。夫婦で同じ器の酒を飲んで、キスして踊って2人で壺投げて終了。本来なら成人式とセットで実施するからかわりと手早く終わった。


……壺を投げるのは何で?と思ったけどどうやらここで大きな壺を2人でぶん投げて割っておくことで子供が流産しないようにと願う伝統行事みたいなものだった。厄除けというか願掛けみたいなものか。それ以外は大体真っ当。お酒は異世界のものなのに地味に度数が高かったせいで、そこそこ飲める方だと思っていた自分は半分どころか1/3も飲み切れなさそうだったが、リーシャちゃんがわりと酒豪なので全部飲み切っていた。


結婚式の衣装が夫婦共に薄手のものだったのは何というか「さっさとヤれ」感溢れる。……こういう世界なのに、子供の数は大体2人か3人が基本だから人口は微増レベルなんだよなあ。子供が4人以上のご家庭を現代日本レベルでほとんど見ない。


とにもかくにも、これでリーシャちゃんとは夫婦になった。そして全てが終わった後のベッドの上で、リーシャちゃん側から焦っていたことを告げられる。何か最後の勇者から色々と言われていたみたい。『あいつ女にすぐに飽きる』とか『踏ん切りがつかないタイプだからさっさと迫りなさい』とか。あいつエスパーかよ。


「私としても同い年の子が妊娠したと聞いて焦ってましたし。

今日はドッペルゲンガーではないんですよね?」

「……いつから知ってたの?」

「2周目の勇者さんがこのダンジョンから出て行った後ぐらいに掲示板経由です」

「何で……ああ、放り出したからかな」


最後の勇者は本当に自分の事をよく知っていたみたいで、まあ今のリーシャちゃんのポジションにいたならダンジョン経営にすら深く関わっていた可能性がある。ドッペルゲンガーを多用していたことも把握していたのだろう。そのことをリーシャちゃんに告げ口されていた。……もうこれ、リーシャちゃんに隠し事って無理な気がする。


互いに互いから離れられなくなったし、それでも別に良いと思える相手なので不安はないけど最後の勇者がどういう心情なのかは気になる。……前回の2周目の自分はたぶん、最後の勇者に時間を撒き戻させるために自殺してるっぽいし。恐らくだけど、時間を撒き戻せるのは1人1回なのだろう。2回目は使えないのを確認したし。もう一度、最終勝利者をゲット出来る感じはしない。


あとリーシャちゃんに打ち明けてないのってテンコやパープルを妊娠させていることぐらいかな。……それもまあ察してそうな気はするし、それでも傍に居てくれるのなら都合が良過ぎる気もする。


「少なくとも私は、3回救われているんですよ。

イツキさんがそもそもこちら側の世界に来なかった場合は、たぶん監禁されてたんですよね?」

「いや自分にそれを確認する手段はないんだけど……2周目の勇者から聞いた?」

「……監禁された勇者が居たことは教えられましたし、恐らくは私達が出会った街で、あの人に捕まっていたんだと思います」

「……まあ可能性としてはそれなりに高かったかもしれない」


ベッドの上でリーシャちゃんと会話を続けるけど、リーシャちゃんは不老を取るのだろうか。最後の勇者は1周目でも強くて自分の指示に従いながらダンジョンをどんどん攻略してDPを稼ぎ、迷いなく不老を取ったっぽいんだけど、リーシャちゃんはまだまだDPが足りないし、融資して取ってくれるかは分からない。


リーシャちゃんは記憶が戻っている勇者だし、知り合いや友人はそれなりにいる。不老を取れば、まず間違いなく見送る立場になるだろうし、ずっと若い姿のままいることで今の素直な性格からどんどん変容もしていくのは容易に想像できる。


でもまあ、今からそんなことを気にしても仕方ないか。少なくとも今は幸せだ。

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