第107話 余暇

リーシャちゃんの配信者計画についてはもう既にダンジョンマスター側の配信に載ってしまったので前倒しにする。ちなみにこんな世界になってしまったのに配信を見る奴なんているのかという話だけど、融和派のダンジョンマスターに保護された人々は大体暇なので配信を見たり創作活動に従事したりと結構余裕がある。


まあダンジョンマスター視点、ダンジョン内に居てくれるだけで良いし何なら森フィールドの食糧を提供しても収支的には特に問題ないからな。得られるDPの半分の消費だけでも無償で米と味噌汁程度なら提供出来る。パイロープの街の温泉宿のダンジョンマスターも畑を拡張して色々と農作物を育てるみたいだし、農業に手を出すダンジョンマスターは多い。面倒な作業は全部ゴブリン達がやってくれるし。


それこそ畑だけ用意して住まわせる人達に農作業やらせても良いし。ある意味究極の共同体だから、共産主義では駄目だったコルホーズが成功するんじゃないの?ダンジョン内での農作業の利点は、余計な害虫が発生しないことだな。虫が発生したらモンスター扱いになるのでダンジョンマスターがどんどんDPに変換していけば良いし、病害の発生率も低いだろう。


掲示板を覗けば大体どこのダンジョンもダンジョンマスターがいる階層は水田も作っているらしいし、わりと活発に情報交換もしている様子。……前の周だと融和派ダンジョンは複数階層分を全て水田や畑にしていたから日本の食料自給率改善したんだよなあ。1階層につき最大で1万ヘクタールあるから、例えば10階層で農作業やれば10万ヘクタール。ぶっちゃけ前の周の日本が序盤中盤で食糧とかを維持出来ていたのはこれが大きい。


害虫は発生しない。疫病発生率は低い。雑草が生えればダンジョンマスターが別途売ることで一括削除が可能、収穫物に関しては昔自分がトイレ代わりにしていた収納箱に入れておけば長期保管が可能。となると、滅茶苦茶楽な農作業になりそうだな。


衣食住の内、食と住の安定供給をダンジョンマスターが可能な以上、自治領のように前の周もなってはいたんだけど今周は独立国家化している。というか蜘蛛系のモンスターから丈夫な糸も入手可能だし、衣の提供もしていくダンジョンは多そう。謎動力のネット回線も引ける以上、移住して来た住民達の娯楽の一つに動画投稿サイトがあっても特段不思議じゃないというかむしろ無い方が違和感。


マルチTVの現在の評価としては、当然ながら既存プラットフォームは文句を言ったり著作権の侵害を受けている人は批判しているが、ダンジョンマスターが保護した人員達からは概ね好評だし順調に人を増やしている。


そのうち会員制にしたりDPの徴収や金銭の徴収を始めるかもしれないけど、渋谷のやべー奴の主目的がそこじゃないのは広告を絶対に設置しない宣言から金儲けではないことだけは確か。まあ順当に行けばユーツーブやチックトックすら追い抜くポテンシャルはある。


『……ダンジョンの告発、も増えて来たな。

名古屋のダンジョンは保護した者同士で強制的にカップリングを成立させていってるのか』

『強制的な結婚と子作り推奨は色々と思い切っているのじゃ。

……そうでもしないと、日本人は増えないからの』

『前の周の2077年の日本の出生率0.3切りはもはや国として破綻してるんだよ。というか破綻したから2078年以降そういう統計すらないし。

……たぶんダンジョン出来てなくても延々と出生率や出生数は減っていってただろうな』

『前の周の2025年段階の日本人の出生数は63万人で、これはそう変わらないじゃろ。渋谷のやべー奴が殺しまくったとはいえ、前の周の被害者数と比較したら今周の日本はマシじゃしな。

……そこから出生数50万人を下回るまで5年かからなかったのじゃが、今周はどうじゃろな』


融和派ダンジョン内の様子も、都合が悪ければ流出する世の中。名古屋のダンジョンマスターは強制結婚というか男女での相部屋を強要し始めたのでなかなかにえげつない。ただこうでもしないと増えないのは前の周でも立証済み。


2016年に100万人割れ、2019年に90万人割れ、2022年に80万人割れ、2024年に70万人割れ。ここから3年毎に10万人ずつ減ったら2050年までには0になるな。


いつか緩やかになるはず、というのは昭和期の超願望的な出生率の予測を見て、その後どうなったかを考えれば緩やかになることはないと理解出来るだろう。というか前の周では凄惨だった。独身や子供がない家庭への極端な増税で何とか延命はした。それでも最後は65歳以上の高齢化率が50%とか異次元な値になっていたが。


……ダンジョンマスター的には赤ん坊でも人が増えると貰えるDPが増えるわけだし、産めよ増やせよをして欲しい。そういう政策に振りきるダンジョンマスターも多いだろうし、融和派は協調して産ませる方向に世論を誘導しそうだ。

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