第74話 交流

せっかく話が出来るダンジョンマスターと会えたのだが、向こうは自分のことを追いかけて自分の庇護下に入るのが1番生き残る確率高いと判断してこの地に入り口を作ったとかギャンブラーが過ぎる。いやまあ自分もこいつのこと殺す気は起きないから賭けには成功している上、現時点で自分の次に生き残る確率が高いダンジョンマスターになったけど。


初手で七尾のレシピを引ける確率というかAランクのモンスターのレシピを引ける確率自体が物凄く低かったはずだから総合的に見てかなり運の良いダンジョンマスターだ。その慧眼も含めて個人的には気に入ったのでアルミラージの肉を少し渡しておいた。


アルミラージの繁殖まではここでさせないけど、定期的にこの肉を卸していこう。現時点で凄い勢いで繁殖してるし、増やし過ぎたら売り先は作らないといけない。このダンジョンの名物にでもすれば強みが増えて遠方から人を呼べるようになるかもしれないから領主目指す自分達にとっても好都合。


「なんだこれうっま⁉︎」

「いや何で毒の警戒とかせずに食べてるんだ……」

「そんなことをしなくても殺せる相手にわざわざ毒殺を選ぶほど性格悪いようには見えないからな」

「自分への理解度高すぎない?セーブ&ロードでもした?」

「あー、そういう力を持っている勇者でもいるのか?」

「いやそれは不確定だけど。……天然か」


向こうは渡した肉に対して、七尾が空中に浮かせた後で短剣で切って焼いたんだけど七尾の時点で多芸だなあ。毒とかは特に警戒せずに食べているけど、その辺は度胸ある。ちなみに一切れ食べたぐらいだとステータスの+値は上がらないんだけど、そのうち上がるからモンスターの肉ということは察せられるはず。現状解体したのは+値が低い個体。高い個体は親側に回すからね。


「DPの上納とかは必要か?」

「要らん。貰っても使い道が無さ過ぎて要らん」

「……少なくとも億単位でDPを持っている、と考えて良いか?」

「それで良いよ。

これからは一般人も入って来ると思うけどうちの領民が中心だろうし、殺さないように」

「元々そのつもりだ」


DPの上納とかを提案してくる辺りは本当に敵対の意図がなさそう。この会話の間、テンコには向こうの心を読んでもらっていたけど内心はかなり冷や汗ものだったらしい。まあ絶対的な戦力差がある相手に平静を装っていただけでも結構凄いとは思う。ついでに言うと、絶対的な戦力差があると本当に最初から分かっていたことも凄い。


一応夕食に誘われた体で来ているので、その後はアルミラージの肉を使った料理をテンコが振る舞い、軽く互いの半生を語り合ってお開き。この人は高校卒業後、定職には就かず、パチンコと競馬で今まで生きて来たらしい。何ならアルバイトをやっていた時期もほとんどなく、その2つが軸で43歳まで生活保護の世話にならず生きて来たとか中々に末恐ろしいものを感じる。


最後に名前を聞き出すけど偽名を使われたからもう少し仲良くなってから本名は聞き出そう。まあ自分も偽名のイツキを名乗ったんだけど。……一応この世界、呪いとかもあるから名前が割れていると面倒なことが起きやすいんだよな。


「ただいま。とりあえずここのダンジョンマスターは良い人そうだったよ」

「肉も食べさせてもらえたのじゃ。ついでにお土産で肉をもらってきたから2人も食べるのじゃ」

「わあ、美味しそうなお肉です。って、これアルミラージのお肉じゃないですか⁉︎」

「……美味しいの?毒とか入ってない?」

「ゆかりは心配症じゃな。ここで毒を仕込むようなダンジョンマスターならまず儂達が生きてないのじゃ」

「不安ならリーシャちゃんが最後に食べる形にすれば安心じゃない?毒の回復も出来たよね?」

「よほど強くない限りは解毒出来ますが、大丈夫そうに見えますよ?」


ダンジョンマスター同士での会談も終わり、アルミラージの肉を手土産にして持って帰ったらリーシャちゃんが1発で見抜いて来た。たぶん食べた経験があるんだろうな。アルミラージ自体はこの世界、森林とかに生息しているし、高ランクの冒険者のパーティーであれば難なく狩れる。


ゆかりは毒の警戒をするフリをするけど、リーシャちゃんは前に毒矢が刺さった時も自分で解毒して、自己治癒までしているから例え毒が仕込まれた食事を食べても何とかなるタイプ。


……そう考えると、前当主が若くして死んだのに毒って関係無さそうだな。というかリーシャちゃんが傍に居た状態で死んだってことは回復魔法が効かなかったということで、暗殺手段は結構絞られてくる。


リーシャちゃんは話し辛いかもしれないけど、前当主が死んだ時の情報を聞いて暗殺手段に目処を付けてから証拠を漁ろう。

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