機神の適合者

鐡大和

前日譚『現の神と失われた歴史』

数ある多元世界の中の一つの世界

その世界で偶然発見された一つの粒子が全てを変えた

ほんの僅かなエネルギーで核融合・縮退路を遥かに凌駕するエネルギーを継続的に発生させられる粒子

そしてその粒子の発見と同時に全世界に出現したゲートにより、多元世界・多元宇宙との接続を果たす

それにより、当時発生していたエネルギー問題が解消し、多元世界の中継点として発展することになった

その中で様々な技術・文化が融合を果たし、凄まじい勢いで文明レベルが上がっていく

そしてこれらの全ての大元となったこの粒子、弾丸のような勢いで発展する世界の『引き金』となった粒子は『トリガー粒子』、通称T粒子と呼ばれるようになった


その過程で製造されたT粒子炉を使用した様々な車両や建造物が製造され、別世界から導入された人型重機を徹底的に解析、それを元に新規開発された人用強化外骨格『エグゾスケルトン』、大型人型重機『マシーナリー』

それらはあっという間に普及し、日常に当たり前に見られる風景になっていった


やがて人々は宇宙へ進出し、新たに発見された様々な星系へ入植を初め、新たな星を故郷とする世代が生まれ始めた時、奴らは現れた

最初は星間航路を航行する艦船が未確認の生命体に襲撃される事件が各所で多発し始めたことが始まりだった

初めは海賊によるものと考えられていたが、それにしては被害が増えすぎている

その中で、偶然発見した『とある生物』が捕獲された

いや、捕獲してしまったのだ

その個体は、言うなればビーコンとしての個体

数ある並行世界の中で最も多くの世界と接続しているこの世界を奪い取りにかかってきたのだ


奴らはやがて確認されている全ての世界に同時に出現するようになり、被害も大きくなっていった

そのうち『禍神』と呼ばれるようになった奴らに対抗するため、全多元世界で構成された対禍神連合機関『全界連合』が結成された

そして全界連合対禍神の全面戦争、後に『人神大戦』と呼ばれる戦争が勃発した

その中で、エグゾスケルトンから発展したパンツァーフレーム、通称『PF』とマシーナリーを武装し、戦闘を可能にしたタクティカルドライブ、通称『TD』

禍神とまともに戦えるようになったとはいえ、未だ多くの世界を奪われている状態

その中、とある研究者によって提唱されたとある計画『神機計画』

PFを原型として、神の能力・権能の一部を移植し、擬似的にその力を行使できるようにするというもの

その計画は即座に承認され、多元世界に存在する数多くの神々との合同作業により『始祖機』と呼ばれるPFの完成形が多くの世界で製造された

その多くは予定通り、製造に携わった神々の『権能』やそれに似た『概念』を行使することができ、そうでなくともそれに比例するほどに強力な兵装を有することとなり、押されていた戦線を巻き返すことに成功した

その中でも『須佐之男』と呼ばれる機体とその量産型である『レギオン』の活躍はとても大きく、僅かな戦力で数ある戦場の中でも最大規模の戦場を完全に制圧し、世界を奪還するほどの活躍を見せた

そして観測に成功した禍神の世界と思われる世界での決戦の後、多大な犠牲と引き換えに世界連合は、100年に渡る人神大戦に勝利した。


しかし、その直後にそれは起こった

『終焉の大災害』

文明に致命的なダメージを与えるには一つで十分過ぎる大災害が全ての世界に同時に複数発生、その中でも特に強力な災害『次空断裂』の影響が最も大きく、これにより全ての多元世界を繋ぐゲートが閉鎖されてしまった

やがて行き場を失った神々や人々はなんとか稼働していた宇宙港からそれぞれの選んだ星へと向かい、その星を揺りかごとして眠りについた

エネルギーの供給やリアクターが停止したオービタルリング・軌道エレベーターは動力が停止、同時にほぼ全ての記録が消失

これにより、ほぼ全ての情報が失われたこの時代は『失われた歴史』と呼ばれるようになった


しかし、その痕跡は未だに世界各地に残されている

とある国には当時の宇宙港の廃墟がほぼ完全な状態で

とある国には当時の兵器廠の生産施設が

そして、とある国には


始祖機たちの眠る研究施設が、残されていた

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