第21話 なんか分かってきたっぽい⑥


〈商売人の知識〉もご多分に漏れず、問い合わせ型のスキルだった。


問い合わせの内容を考えるためにまずは、スキル詳細文を読み直す事にするぜ!



【〈商売人の知識〉(20):

商売人の知識を即時習得します。国ごとの商品の相場、運送ルートの地理まで商売に関わる多くの知識を得ます。残念ながら、人種族以外のマーケットの知識は得られません】



【国ごとの商品の相場】か・・・

ようはある国の物価は高騰こうとうしていて、またある国では下落げらくしているみたいな。そういう物価関連の話なのかな。まあ地域ごとに手に入りやすいモノの違いとかはあるはずだから、商品によってはそういった要素もあるだろうけど。




そんで・・・じゃあ一体どんな問い合わせを行えば分かり易い情報が手に入る?





経済にうとい俺でも聞いたことがある言葉で、ビッグマック指数しすうというものがある。


あの超有名なファーストフードが、世界各国では一個いくらで売られているのかというヤツだ。


日本では一個500円以下で買えるビグマが、海外では2倍の値段でしか買えない・・・的な。こういった状況を見て、なんとなくその国の経済状況を図れるっていうアレ。



これを検証に利用できないだろうか?



例えばファンタジーで良く登場する食べ物に「黒パン」がある。

こいつをビッグマックに当てはめて検証を行うというのはどうだろう。





ちなみに何故ファンタジー世界で良く食べられるのが白パンでなく黒パンなのか?ということについて、気になって調べてみたことがあるのだが・・・


黒パンは白パンに比べて独特の酸味があり、硬く、保存が効くらしい。

また主原料となるのは小麦でなくライ麦で、そのライ麦は小麦と違って悪環境下でも簡単に育ってくれるとのこと。寒冷地帯とかでもグングン育つんだとか。


つまり簡単に育つ原料を用いた、おいしさでは白パンに劣るも保存も効くし栄養価も高い庶民の食べ物。それが黒パンなのである。


こういった点が中世ほどの文明レベルの生活とマッチしていると感じられ、創作世界ではよく採用されているのだと思う。


テンプレ通りであれば、この異世界でもポピュラーな食べ物なんじゃないか?黒パンは。あとついでだし白パンの価値も検証しとくか。






よし!問い合わせ実施!!

「イグラシアの主要な人間族の国家における、黒パンと白パンの価値について」教えてくれ!!










――リンエット共和国


―黒パン、12カパー

―白パン、40カパー




――クデス帝国


―黒パン、8カパー

―白パン、90カパー




――サンフューラ王国


―黒パン、20カパー

―白パン、50カパー







おお、行けた!!やっぱあるんやな黒パン!笑

ほんで白パンたけえ~。やっぱ庶民の食べ物じゃないっぽいな。




ん?てかお金の単位がどの国も同じ「カパー」で統一されているんだな。


つまり国ごとに独自の通貨があるとか、そういう面倒くさそうなルールは無いっぽいな。貨幣価値とか、為替レートがどうのみたいな、そういうの俺弱いから助かるぜ。




てか代表的な人の国、マジで三者三葉さんしゃさんようってやつだな。共和国、帝国、王国って・・・。個人的に「帝国」があるのが異世界テンプレだな~って感覚だわ。


確か帝国の皇帝っていうのは一国の王様とかのレベルじゃなくて、別の国を植民地支配して「統治」しているみたいな存在なんだよな。なんか好戦的そうなイメージがあって怖いかもな・・・


でも黒パンは三か国で一番安い!逆に白パンは一番高いというのはどういう理由なんだろう。庶民に優しく、富裕層には厳しい・・・そういった政策を行ってる国なのであれば逆に優しそうなイメージに変わってくるかも・・・



王国はまあ、王様がいてワンマン支配してる国なんだろうけど・・・共和国もあるんだな~って感想だ。共和国って言ったら、たしか血筋じゃなくて選挙で国のリーダーを決めている国だったハズだ。


異世界にしては、進んでるやないの。この国も気になりますねえ。





・・・あ。今更だけどカパーって「カッパー」か、つまり銅貨ってことだよな。


分かり易く金・銀・銅貨で統一されてるパターンかな?そこらへんは何て問い合わせたら分かるかな・・・「人族が使う貨幣の一覧」とか?





あ~~、なるほど頭に浮かんだわ。このパターンね!



カッパー×100 = シルバー×1

シルバー×100 = ゴールド×1

ゴールド×1000 = デヴォン×1



で、デヴォンとな・・・これ俺知ってる!

〈鉱物学の知識〉に出てきたヤツだ。「デヴォン鉱」・・・いわゆる希少石でありながら、美しさと高い硬度の両方を備えた凄いヤツ。美の神と同じ名前だとかなんとか・・・


・・・うーん鉱物学、やはり豆知識ってかんじのスキルだなあ笑




そして紙幣はどうやら使用されていないようだ。つまりこの世界は硬貨というか金属そのものに価値を見だしている段階の文明レベルってことだ。


じゃあデヴォン鉱は相当な資産価値のある鉱物なんだろうな・・・ほ、掘り当ててえ・・・





え~、あとはアレか!【運送ルートの地理】についてだ!

これはデカいよな~。地図、だもんなほとんど。


じゃあちょっと大きく出ちゃいますか。

俺は「世界地図」を問い合わせするぜ!!!










お、おおお。

脳内に浮かんだのはどことなく地球の地形にも似た4つの大きな大陸、そして島々・・・。マジで世界地図が浮かんできた、が・・・ん・・・?


部分的に、細部の「書き込み」が違うような・・・?

具体的に言うと4大大陸のうち、地図上で最も右手の大陸。これだけかなり詳細に線が書き込まれており、拡大するよう念じてみると国名や国境のようなものまで見えだした。すげえ。


しかし、それ以外の大陸には書き込みが少なく、輪郭も若干フワフワしている・・・情報量の差が歴然となっているな。


これはもしや【人種族以外のマーケットの知識は得られません】の文言的に考えても、「人間の支配領域」がこの大陸に集中しているということなんじゃなかろうか。


なるほどね、覇権種族と言えど世界を征服してやったぜ!みたいな状態では無いということだ。まだまだ「未開の地」的な土地が多く存在していたり、異種族にガチガチに占領されていて近づけない土地があるとか。そんなところだろう。



人間の支配する大陸の名は・・・ダーウェン大陸と言うようだ。人族の国家の名前が次々と頭に浮かんで来る・・・



リンエット   

イートヴォー  

アートレ    

サンフューラ  

スーフェム   

ウーセクス   

リウフュ    

オタチ     

パニエ     

クデス

ノルシー    

・・・

・・




これは埒が明かんな。俺は国々の位置関係、特産物の情報や黒パン指数などに絞って情報を集め、〈商売人の知識〉の検証を終わらせることにした。






・・・






はあ~~~~~~~、なんかしんどかった。

急に「現実」を噛み締めた気分だ。今までのキャラクリは言わばゲーム的というか、家の中で引きこもって粛々と作業を行う感覚だったけど・・・


かなり「世界」の情報が溢れだしてきて、急に家の外の世界を意識し始めてしまった。そんな気分だ。


俺はマジで転生するんだ。イグラシアとか言う、ファンタジーの世界へ・・・





でもようやく、《種族一覧》のページに足を進めることができる。やっぱり若干ワクワクしてしまうし、悪神様の調査クエストの事もある。早く読みてえ!あらゆる文言を・・・!





〈竜語〉と〈水語〉を宿題にしてしまったのが心残りではあるが、俺は次のステップへと足を踏み入れることにした・・・









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