第5話 なんか読み込むっぽい①


スキル詳細は簡単に読めるんかい!肩すかしを食らった俺は若干テンションが降下していた。


いつの間にかこのタブレット操作のすべては試練のような作りをしている、と決め付けてかかっていた。

さらには、それを一歩一歩着実にクリアしている自分に自信めいたモノを感じていた。なんなら「俺って試練を物ともしない選ばれし者なんじゃね…ちゃんと考えずスルーした奴等はマジで乙w」なんて選民思想に似たマインドを持ち始めていたのだ。


「はぁ、恥ずかしいわ」


よく考えたら俺が他の転生者に勝っている点なんてしょうもない。


転生許諾の文言が消されているから何だと言うのだ。今から俺だけ転生を拒否できるワケでもない。


何個かTipsを読めたから何だと言うのだ。こうやって肝心のスキル詳細は読めるのだからなんてことはない。


少しの成功体験だけで驕り高ぶっていたようだ。あ、でもケモ様に2回も会えたのは完全にアドだよな。元気だそ。



はぁ〜、そんじゃ一個ずつ見て行きますか。

スキルの説明書きをよ〜。



【初級剣術の心得(120):

剣術の師範代から得た一月分の剣術指南の経験を得ます。短剣・片手剣・両手剣の扱いにボーナス効果が発生し、各装備のスキルツリーを初めから有します。スキル〈スラッシュ〉を即時習得します】



剣術の師範代って、誰なんだ…。そんで一月分の経験を得るってのは具体的に何なんだ。なんかこれ教わった気がする!みたいな感覚が芽生えるとか?それとも脳内に一月分の修行の記憶が1秒で流れ込んでくる的な?


なんか、腑に落ちんな…。実際に習得してみない事には完全に理解することは叶わないのかもしれん。


そういうの、キャラクリする側からしたら厄介なんだけどなぁ…。まぁ良い、それよりさらに気になるのはスキルツリーという単語だな。


【各装備のスキルツリーを初めから有します】という文言を見るに、スキルツリーというものは最初から生えまくっているものではないという事がわかる。


初級剣術の心得を習得したことにより、転生開始直後には短剣・片手剣・両手剣のツリーが生えている、しかしその他の武器のツリーは未だ生えてもいないという状況が想像できる。


そこでもし、新たに槍の扱いを覚えようと思った時にはどの程度の修練でツリーが生えてくるのか。というか特定のスキル習得には「まずはツリーを生やす」というプロセスが必要だったりするのだろうか。


最後に、オマケみたいなノリで単体スキルの欄にもあった〈スラッシュ〉を即時習得している点については好感が持てる。基本的な剣術に加え、戦闘スキルっぽいものをついでに習得できるのは転生開始時には頼もしいだろう。

また、〈スラッシュ〉は剣技に属するスキルなんじゃね?という情報も手に入ったと言える。



ここで気付いた。初級剣術の心得の詳細文の中に書かれている〈スラッシュ〉の文字に対してさらに長押しをした時、入れ子構造のようにページをジャンプすることはできないっぽい。


とっておきのダブルフィンガー・ディティール・ライズ(笑)でも反応がない。そもそもDDR(略した)は文字色の違う新出単語に対して発動ができた技だったか。


ん!ほんでもって「スキルツリー」の文字の色がまた微妙〜に違うじゃねえの!


ハァ〜〜〜〜↑↑しょ〜がねえなぁもう!これはもうアレでしょお客さん!DDRッスか!

ま〜たこれでイケるんすかセンパイ!シャ!


案の定、DDRを駆使してスキルツリーに関する詳細文を読むことができた。(俺のメンタルが少し回復した)



【スキルツリー:

体系的に分類できるスキルや、発展の可能性を秘めたスキルのために用意された樹木状の図を指す言葉です。自身の行動の傾向、経験によって己の内に自然発生し、成長していきます。また枝分かれの道が現れた場合、どちらか片方のみを選ぶ必要があります】



ほ〜ん。なるほどね。

序盤の文章を見るに、別に全てのスキルにツリーが用意されてるワケでは無いっぽいな。だが、分類が似たスキルやある意味進化の余地があるスキルに関してはツリーが用意されてると思って良さそうだ。


また、分岐を選ぶというのが面白い。まるでゲームじゃないか。騎士から聖騎士、または暗黒騎士を選択するようなテンプレの感触を感じるな!!



オッケ!次行ってみよう!多分「心得」系のスキルは大体書いてあること一緒だろうからな、一気に見て行くか!




【初級弓術の心得(90):

老練の狩人から得た一月分の弓術指南の経験を得ます。短弓・長弓の扱いにボーナス効果が発生し、各装備のスキルツリーを初めから有します。スキル〈待ち伏せ〉を即時習得します】


【初級槍術の心得(80):

槍術の師範代から得た一月分の槍術指南の経験を得ます。槍・棒状武器の扱いにボーナス効果が発生し、各装備のスキルツリーを初めから有します。スキル〈スピア〉を即時習得します】


【初級斧術の心得(80):

ドワーフの戦士から得た一月分の斧術指南の経験を得ます。斧状武器・鈍器の扱いにボーナス効果が発生し、各装備のスキルツリーを初めから有します。スキル〈スマッシュ〉を即時習得します】


【初級盾術の心得(50):

憲兵の隊長から得た一月分の盾術指南の経験を得ます。盾の扱いにボーナス効果が発生し、盾術のスキルツリーを初めから有します。スキル〈シールドバッシュ〉を即時習得します】


【初級喧嘩術の心得(140):

荒くれ者のリーダーから得た一月分の喧嘩術指南の経験を得ます。徒手格闘にボーナス効果が発生し、喧嘩術のスキルツリーを初めから有します。スキル〈スラム〉〈ケンカキック〉〈ポケットサンド〉を即時習得します】




そんな気がしたけど、やっぱり濃いなぁ喧嘩術…荒くれ者のリーダーに師事してるよ…笑

ステゴロで戦う代わりに他の「心得」系よりも初期習得スキルが多いのが面白いな。それにしてもSPが高いけど。


ひとつ気づいた事と言えば、喧嘩術以外のSP値の設定方法に一貫性が見えるということ。


「心得」系の中には複数武器のツリーが発生するものが多くある。剣術なら3個、弓術と槍術と斧術は2個、盾術は1個のツリーが生える。このツリー数とSPの値段設定がほぼ直結しているように見えるのだ。


具体的にツリー1個の値段を40SP程とすれば、大体全ての値段設定の説明がつく。


単純な計算だが、結構的を得ていると思う。

それだけに喧嘩術のSPの高さが不思議だった。


戦闘など、現世ではもちろん体験したことの無い俺だが「武器」持ちの強さは素手に比べると圧倒的だろうと思う。


喧嘩術の利点と言えば、戦闘中に武器が壊れたり手元から離れてしまった場合でも使える点だろうか。しかしそもそものSP値が高級なため、剣術と喧嘩術の2個待ちなどの選択をした場合にはSPの残額が心許なくなる。


う〜ん。ハズレスキルってやつなのか、単に玄人向けなのか。






いや、そもそも武器の支給が無いんじゃね?



あーーーーーーー、なるほど。

嫌らしい作りしてるわ。確かにそんなこと書いて無かったもんな。うわー。


いくら剣術に明るい状態で転生しても、手元に剣がなければ能力を発揮できない。

その点、喧嘩術は速攻でその威力を発揮できるという利点がある。ということだ。


これは迷う価値のあるスキルかもしれん。

ただ、無事に装備を得る段階まで冒険を進めたとしてそこからはゼロスタートだ。

武器のツリーが一本も無いまま修行を始めるというのは中々厳しそうだ。

転生後の世界で偶然に武術の師匠に会う確率なんて、そうはないだろうしな。



む、むっずい…。なんとなく「心得」系から一つは選択をするべき、みたいなノリを感じるだけに…


俺は、どんな護身の術を選ぶべきなのか…?


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