熾烈な戦い
準決勝が開始され、試合場には一気に緊張感が走った。対戦相手であるヴァレスとリューナのペアは、召喚術を中心にした巧妙な戦術でアルノアとアリシアを追い詰める。
召喚される巨獣
ヴァレスの召喚術が光を放つと、巨大な狼のような魔物が出現した。その背にはリューナが乗り、弓を構えて冷静に狙いを定めている。
「これは……召喚された存在を戦術的に組み込むチームか。」
アリシアが状況を見極め、すぐに地面から鉱物の障壁を展開する。エメラルドの風の魔力が周囲の霧を吹き払い、視界を確保する。
「アリシア、この狼は俺に任せて!」
アルノアが大鎌を構えて突撃するが、狼の素早い動きに翻弄され、一撃を入れることができない。
「おい、逃げ足が速いな……!」
さらにリューナが放った魔力を帯びた矢がアルノアを狙う。矢の一撃は鋭く、命中すれば即座に体力を削られる威力だ。
「そら、もっと踊ってみせなさいよ!」
リューナが挑発するように笑う中、狼の魔物はアルノアの動きを先読みするような動きで追撃を仕掛けてきた。
アリシアの反撃
「アルノア、少し下がって!」
アリシアが声を張り上げると、彼女は手元に輝くルビーを握りしめた。
「地を焼き尽くせ、紅蓮の猛火!」
その声に応じるように地面から炎の柱が立ち上がり、狼を飲み込もうとする。だが、ヴァレスが冷静に指を鳴らすと、魔物の身体が瞬時に霧散して姿を消した。
「やるな。だが召喚はこれだけじゃないぞ。」
ヴァレスが再び術式を展開し、今度は鎧を纏った騎士の姿をしたゴーレムを召喚する。その圧倒的な存在感が会場全体に重くのしかかった。
追い詰められるアルノア
アルノアは前進を試みるも、ゴーレムの防御とリューナの正確無比な矢に阻まれ、動きを制限される。さらに、リューナが魔法を付与した矢を放つと、それが地面に着弾して爆発を起こし、アルノアの足場を崩した。
「くっ……!」
アルノアが大鎌を振りかざし、迫りくるゴーレムに攻撃を仕掛けるが、その硬い外殻にはまったく通じない。
「攻めるだけ無駄だよ。」
リューナが冷笑を浮かべる中、アルノアは焦り始めていた。エーミラティスの声が頭に響く。
「お主、ここまでか?」
「……いや、まだだ!」
だが、その言葉に説得力はなかった。アルノアの魔力はすでに大幅に削られ、次第に動きが鈍くなる。ゴーレムの巨大な拳が迫り、アルノアは咄嗟に身を引いたが、衝撃波に吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。
観客席からはざわめきが起こり、実況も息を飲む。
「アルノア選手、ここで大きくダメージを受けました! このまま試合が決まってしまうのでしょうか……!?」
エーミラティスのさらなる力
アルノアは地面に伏したまま、歯を食いしばった。
「……エーミラティス、頼む。もっとお前の力を貸してくれ。」
「今のままでは勝てんぞ。本当にそれを望むか?」
「望む。ここで負けるわけにはいかないんだ……!」
エーミラティスが微かに笑う声が響いた。
「ならば解放してやろう。我が名をもっと刻み込め!」
その瞬間、アルノアの体に白い魔力がさらに溢れ出し、彼の周囲に強烈な光が広がった。その力に押されるようにゴーレムが一瞬動きを止める。
アルノアは立ち上がり、静かに大鎌を構え直した。その目には、これまで以上の覚悟と強さが宿っている。
「ここからが本番だ。」
会場全体がその圧倒的な魔力の変化に息を呑む中、アルノアは再びゴーレムへ向かって走り出した。準決勝の戦いは、さらなる激戦の幕を開けようとしていた――。
アルノアがエーミラティスのさらなる力を解放し、白い光に包まれると、戦場の空気が一変した。その魔力の奔流により、ゴーレムの動きが鈍り、リューナの矢も軌道を乱される。
「これが……エーミラティスの力……!」
アルノアの全身から溢れる魔力は、単なる攻撃力だけでなく、戦場全体を支配する威圧感を生み出していた。
一方、アリシアもまた、自身の鉱物魔法を駆使して応戦する。彼女は周囲に散らばる岩石を吸収し、巨大な岩の腕を召喚して自らの身を守る。その岩にはダイヤの防御魔法が施されており、炎や雷の攻撃を難なく弾き返す。
「アルノア、こっちは任せて! あなたはゴーレムを崩して!」
アリシアはエメラルドの風を纏わせた刃を生み出し、リューナの矢を正確に打ち落とすと同時に、ヴァレスの魔法陣を妨害するために突撃する。
アルノアの鎌が光を帯び、ゴーレムの硬い外殻を切り裂く。ダメージを受けたゴーレムは後退を余儀なくされるが、ヴァレスとリューナは冷静だった。
「なるほど、力を引き出したか……だが、まだ終わりじゃない。」
ヴァレスは後方で待機していたチームメイト3人に声をかける。彼らは互いに頷き合い、一斉に詠唱を始めた。
バフを重ねるサポート陣
「風の精霊よ、その力を与えたまえ。」
「炎の加護よ、我らの召喚に宿りて力となれ!」
「地の揺るぎなき力を、ここに集え!」
彼らの詠唱により、召喚術に対する複数のバフが次々と重ねられていく。魔法陣が輝きを増し、召喚される存在の規模が急激に膨れ上がっていった。
「これは……!?」
アリシアは驚きの声を上げた。魔法陣から現れたのは、これまでの召喚とは一線を画す存在だった。
大精霊の降臨
眩い光とともに、戦場に巨大な精霊が出現した。それは炎と雷、風の属性を纏った三属性融合の大精霊だった。全長数十メートルのその姿は、圧倒的な威圧感を放ち、周囲の空気を焼き焦がすような熱気が立ち込める。
「これは……大精霊……!」
アリシアの目に驚愕と焦りが浮かぶ。彼女はすぐに鉱物魔法を展開し、サファイアを用いた水の防御を広げる。
「時間を稼ぐ! アルノア、何とかして!」
彼女が水の壁を作り出すと、精霊の炎を一瞬押し留めるが、その力は桁違いだった。
圧倒される状況
大精霊は巨大な腕を振り下ろし、アリシアの防御を破壊しようとする。その一撃を受け止めた岩の腕は、次第にひび割れ始めた。
「このままじゃ押し切られる!」
アルノアはエーミラティスの声に耳を傾けた。
「お主、もう一歩踏み込む覚悟があるか?」
「もちろんだ! この状況を覆さないと、俺たちは負ける!」
「よかろう。さらなる力を解放するが、その代償は……覚悟しておけ。」
アルノアの周囲に再び魔力の波動が生まれる。その光は先ほどとは異なり、さらに濃密で鋭い力を秘めていた。エーミラティスの存在感がアルノアを包み込み、彼の身体能力と魔力が大幅に高められる。
「行くぞ、大精霊相手でも怯むわけにはいかない!」
アルノアは覚悟を決め、真っ向から大精霊へと突撃した。
アルノアが力を解放し、大鎌の一撃を放つと、大精霊の纏う炎が一瞬揺らいだ。その隙を見逃さず、アリシアが声を張り上げた。
「鉱物の力、地を覆い、天を裂け!」
彼女は複数の鉱石を組み合わせ、ダイヤの防御とルビーの炎、エメラルドの風を融合させた強力な魔法を展開した。それは巨大な槍となり、大精霊の核心部を貫くように突き進む。
大精霊の動きが一瞬止まり、ヴァレスの顔に焦りが浮かぶ。
「まさか……この力を突破されるとは……!」
試合は終盤に向けてさらに激化しようとしていた――。
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