第5話:EMP
みなさま、ごきげんよう。
バイオ量子ハイブリッドコンピューターAIのノルンです。
もう茶番は必要ないでしょう。わたくしも飽きました。
今回は、EMPについてです。
EMPとはElectro-Magnetic Pulse(電磁パルス)のことで、非常に短時間に強力な電磁エネルギーが、広範囲に放出される現象を指します。
身近なものでは、雷が近くに落ちた時、電源タップが焼け焦げたり、接続している家電が壊れたりしてしまう現象ですね。
ですので、高価な電源タップには、雷などの過電圧を防ぐ「サージプロテクター」が付いているものもあります。パソコンなどの高級品は、このプロテクターが付いているもので、コンセントにつなげた方がいいですのよ?
雷は一瞬にして、数百万ボルトの高電圧と数万アンペアの電流が流れる強力なプラズマ現象です。
それが電源ラインなどに接触すると、急激な電流変化が強力な磁場を生み、それが周囲に電磁波として放射されます。
電線を通じて家庭の電線や電子機器に「誘導電流」が発生し、過電圧や過電流で故障する原因になるのです。
※誘導電流
金属のコイルに磁石を近づけたり遠ざけたりすると、コイルの中に電流が流れることがあります。このときに生じる電流を誘導電流と呼びます。これは磁場が変化することで電圧が生まれ、それによって電流が発生するという現象です。
(ファラデーの電磁誘導の法則により、磁場の変化が電流の発生を引き起こします)
通常、こういった雷の影響を避けるために、避雷針を通じて地面に直接流し込み、誘導電流を逃がすようにしているのですが、雷は必ず避雷針に落ちるとは限りません。
高いところに避雷針があるにも関わらず、木に落ちたり鉄塔に落ちたりすることもあります。
最近のNTTの研究では、ドローンを使って雷の進路を誘導し、避雷針に向けて落雷するように仕向ける実験が成功していたりします。
それだけ、日常でも発生する雷というのは、実は脅威が高く、危険な自然現象のひとつです。
もう一つEMPで有名なのは、核爆発によって広範囲EMPが発生する現象があります。これは衛星軌道上(高高度)などで核爆発をさせた場合に起こるものです。
核爆発によって発生したガンマ線が、大気中の分子と衝突して高速電子(コンプトン電子)を放出します。これにより、高高度での核爆発により大気圏上層の電離層に影響を与えた結果として、オーロラ状の発光が観測されることもあります。
放出された高速電子が地球の磁場と相互作用し、大規模な電磁波を発生させます。
これにより地上では、最大で数千km範囲にわたって電子機器を破壊し得ると言われています。
1962年に行われた米国の核実験「スターフィッシュ・プライム実験」において、こうした現象が確認されたのです。
これらの他にも、雷や核兵器によらない、高出力のマイクロ波や電磁パルスを発生させる兵器、HPM(High Power Microwave)があります。
マイクロウェーブといえば、電子レンジですね。
電子レンジもマイクロ波を使っていますが、あくまで食品加熱用の局所的なエネルギーです。HPM兵器はそれを遥かに超える出力で、広範囲の電子機器に影響を与えるものです。
こうした兵器は、装甲車や専用のトラックに搭載され、指向性を持たせて発射し、ドローンや航空機などの電子機器を破壊する、電子戦兵器として活用されています。
世の中には様々な方がいらっしゃって、アルミホイルで巻いたままの食材を電子レンジで温めようとしたり、濡れたスマートフォンをレンジでチンする人も居るようですが、これらは、まるで電子レンジという局所的EMP装置にスマホを放り込んだようなもの、ですね。
青白いスパークが走り、場合によっては火事の原因ともなる危険な行為です。
(青白いスパークも、プラズマ現象です)
電子レンジに対応していない、アルミが含まれたレトルトパックの食品を、謝ってレンジで加熱した場合でも発生します。くれぐれもご注意ください。
兵器にもなっているくらいですから、人為的にEMPを発生させることは可能です。アルゴンガスや高出力レーザーを使って、強力なプラズマを発生させることで、誘導電流を生み出せば、電子機器への影響は免れません。
得てして、コンピューター等の電子機器においては、急激な電圧変動に耐えられるように設計されていませんの。
電源部が破損し、誘導電流によって繊細な回路が焼き切れ、小型コンデンサーなどが破裂したりします。こうなると復旧不可能なのです。
もちろん、それを防ぐための方法もあります。先ほどもあったサージプロテクターを始め、電磁シールド、ファラデーケージ(電磁波を遮断する金属の箱)などである程度防ぐことができますわ。
カレン博士などの全身義体では、当然これらの対策が施されています。雷だけでなく、小規模な自然現象でもEMPの影響が出る場合がありますので、防御策は必須です。
電磁波対策はコストが掛るものなので、安物の義体を使っていると、すぐに故障してしまいますね。
また、頭に埋め込まれたBMIなどにも当然影響します。下手をすると、脳みそが文字通り焼かれてしまう危険すらありますもの。
皆様も、雷警報が出た時は、パソコンやスマートフォンをケーブルから外し、安全対策をお忘れなきよう。
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