第二十一話:幻の獣との遭遇
俺たちは、音の正体を探りながら慎重に森の奥へ進んだ。周囲の緑が濃くなり、木々の間から差し込む光がまるで神秘的な舞台のように見える。緊張感が高まる中、心臓の鼓動が耳に響いた。
「気をつけろ。音は近づいている。」リュウが低い声で言った。
俺たちは身を固くし、周囲の動きを感じ取る。小枝がパキパキと音を立て、草がざわめく。やがて、俺たちの視界の先に、何かが姿を現した。
「見て!あれだ!」リョウが指差した。
そこには、巨大な影が立っていた。毛がもこもこした体に、獰猛な目を持つその生き物は、まさに「幻の獣」と呼ばれるにふさわしい存在だった。体長は人間の数倍あり、力強い脚が大地を踏みしめている。
「こ…これは本当に幻の獣だ!」アキラが目を丸くして言った。
その獣は周囲を警戒し、俺たちの方に視線を向けた。瞬間、俺の背筋が凍る。大きな目が、俺たちをじっと見つめている。
「静かに、動かないで!」リュウが囁いた。
その瞬間、幻の獣が吼えた。大きな声が森に響き渡り、俺たちの心臓が高鳴る。獣は一歩踏み出し、俺たちに向かって近づいてくる。
「どうする?戦うのか?」リョウが緊張した声で言った。
「まだ様子を見よう。こちらが攻撃的に出ると、反撃されるかもしれない。」リュウが冷静に答えた。
獣は更に近づいてくる。俺たちは息を潜め、その動きを注視した。すると、幻の獣が俺たちの存在を感じ取ったのか、一瞬立ち止まり、鼻を高く掲げて匂いを嗅いだ。
「こっちに気づいている!」アキラが声を上げる。
その時、リュウが決断した。「動かないで、待て!」
突然、幻の獣が俺たちに向かって突進してきた。俺は思わず剣を構えたが、リュウが叫ぶ。「待て、待て!攻撃しない!」
獣は俺たちの真横を通り抜け、森の奥へと走り去っていった。思わず息を呑む。俺たちは静まり返り、何が起こったのか理解できないでいた。
「逃げた…のか?」リョウが呆然として言った。
「どうやら、ただ通り過ぎただけのようだ。」リュウが冷静に分析する。「俺たちを敵だとは認識しなかったのかもしれない。」
「でも、幻の獣を見たのは初めてだ。こんなに近くで!」アキラが興奮気味に言った。
「確かに。でも、あれが本当に幻の獣かどうかはわからない。近づきすぎると、危険だ。」リュウが警告した。
俺たちは、その後も警戒を怠らずに森を進むことにした。もう一度、その獣が現れる可能性もある。緊張感が漂う中、周囲の音に耳を傾けながら進んだ。
さらに進むと、またしても異様な気配を感じた。周囲が静まり、緊張感が高まる。
「今度は、何か違うものを感じる…。」リュウが呟いた。
すると、背後から大きな影が現れた。俺たちは振り返ると、先ほどの幻の獣が再び姿を現していた。しかし、今度は獣の顔に怒りの表情が浮かんでいた。
「まずい、逃げろ!」リュウが叫び、俺たちはすぐにその場を離れた。
獣は追ってきた。俺たちは全力で逃げながら、森の中を走り抜けた。枝が顔に当たるが、そんなことは気にせずに進む。リュウが先頭を走り、俺たちはその後を追った。
「どこに行く?森を抜けるのか?」アキラが声をあげる。
「そうだ、森の外へ向かう!そこが安全だ!」リュウが叫んだ。
必死に走り続けたが、獣は俺たちを追い詰めてくる。その瞬間、俺の心の中に決意が芽生えた。
「みんな、俺が食い止める!」俺が叫び、立ち止まった。
「なにを言っているんだ!逃げろ!」リュウが驚いた声をあげる。
「いいから、行け!俺が時間を稼ぐ!」俺は剣を構え、獣に向かって立ちはだかった。
獣が俺に向かって吼える。その声は、俺の心に響く。しかし、俺はそのまま獣に向かっていった。逃げるのではなく、立ち向かうことで仲間を守る。
「リュウ、アキラ、リョウ、早く行け!」俺は叫びながら、剣を振り下ろした。
獣は俺の存在に気づき、吼えた。その瞬間、俺の心は燃え上がった。仲間を守るため、俺は戦う。
「これが俺の決意だ!」俺は全力で獣に立ち向かう準備をした。未知の冒険が、今まさに始まろうとしていた。
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