第3話 魔法薬はあきらめた
私は、アレルギーを発症するまでは朝はパン食でした。
すぐ食べられて美味しいし便利です。
パンと牛乳は朝の定番食。
近所のジャムおじさんみたいなおじいちゃんのパン屋さんが大好きです。
山切りになってる食パンとかカリカリ部分が多いメロンパンとか、ほわほわの甘食とかいくらでも食べられます。
でも、転生した私は小麦を食べたら救急車です。
私は医師にすがる思いで聞きました。
「アレルギーは治らないんですか? 治療できないんですか? 私は小麦はもう一生食べられないんですか!?」
『残念ながら、子供のアレルギーは成長と共に改善されることは多いのですが、大人のアレルギーはほとんど治ることはないです』
「私、小麦を食べたら死ぬんですか……?」
『アナフィラキシー症状はありましたが、救急車で運ばれてくれば大丈夫ですよ』
アナフィラキシー。
アレルギー物質に対して体が過剰に反応し、命の危険がある症状のことです。
ミステリーなどでこの言葉を覚えた人も多いでしょう。
そう、被害者の『死因』に使われる用語です。
私もそれが頭をよぎりました。
『心配ならエピペンが出せますが持ち歩きますか?』
エピペンとは、アドレナリンが入った簡易注射器のことです。
私のように、血圧が低下してしまった場合には有効です。
ただ、これを打てば治るということではなく、あくまでも一時しのぎ。
救急車が来るまでの、時間稼ぎといったもの。
あれば安心ですが、再びそういう状況に陥ったとき、果たして私は自分でこの注射を打つことができるのか?
まわりに打ってくれる人がいるか?
そう考えたとき、周りにもこれを打つ責任を負わせるのもためらわれるし、気の弱い私には無理だな……と思いました。
私は、エピペンをあきらめて強めのアレルギーの飲み薬をもらうことにしました。
アレルギーを治す薬はないし、起死回生の薬も覚悟が足らずに所持できない。
魔法薬をあきらめた私は、小麦除去生活に突入です。
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