妄想ドラマ⑧

第4話 外事警察2025：絆の裂け目

--

宇都宮での事件が一段落し、公安部外事第4課の作業班はまた新たな案件に取り掛かっていた。今度の捜査対象は、街の外れにある古びた工場。この工場は、密かに違法な活動の温床として使われているという情報があり、公安の内偵が始まった。

登場人物

金井静子（キムラ緑子）

年老いた工場の所有者。表向きは、地元の工場で長年働き詰めの苦労人として知られているが、裏では違法な活動の管理を一手に引き受けているという噂が絶えない。かつての同僚たちや元従業員からも敬遠されており、「工場の女帝」と陰で呼ばれることもある。

青木咲子（内田有紀）

工場で働く従業員であり、静子の信頼を受けている唯一の人物。青木は幼い頃に両親を失い、静子に半ば引き取られるような形で育てられた。静子を母親のように思いながらも、その冷酷さに内心で恐れを抱いている。

田代勝（伊東四朗）

静子の兄で、かつては地元で尊敬される商人だったが、現在は体調を崩し、引退生活を送っている。時折、静子に工場を訪ねるが、過去の因縁から距離を置いている様子。かつては何か大きな事件に関与していたようだが、今はその秘密が深く隠されている。

片山洋介（薬丸裕英）

勝の息子であり、静子の甥。商売の才を受け継ぎ、静子が管理する工場に出入りしている。表向きは貿易関係の仕事をしているが、工場で行われる違法取引のいくつかに関与しているとの疑惑があり、公安の調査対象となっている。

工場の影と家族の秘密

住本と松沢は、工場に潜入するために内偵を進める。住本は、金井静子の持つ影響力と恐ろしさを調査の中で認識する。表向きは地元の顔役として振る舞うが、裏では冷酷無比な手腕を発揮し、工場を運営している。静子は、異常なまでに家族に固執する一方で、田代勝や片山洋介にも厳格な管理を敷いており、家族であることを武器にして利用しているのだ。

一方、松沢は青木咲子と接触することで、静子が長年築き上げてきた関係の裏側を探る。咲子は静子の信頼を得ているが、同時にその抑圧的な影響力に苦しんでいることが徐々に明らかになる。咲子は住本に対し「私はここで育てられましたが、逃げられるなら、逃げたいんです」とこぼす。

謎の兄弟愛と裏切り

静子の弟・田代勝は、かつてこの工場で働き盛りの時代を過ごしたが、兄弟間で何らかの事件が起き、それ以来、二人の関係は冷え切ってしまった。しかし、彼らの過去には未解決の事件が絡んでおり、それが今も静子の支配欲をさらに強める要因となっている。

片山洋介は、叔母である静子の意向に逆らうことができず、違法取引の一部に関与しているが、父親である勝との関係にも複雑な感情を抱いている。洋介は父親を尊敬する一方で、その過去の秘密に迫りたいと思っているが、静子の圧力により自由が奪われていることに苛立ちを覚えている。

住本の介入と工場の破綻

住本は静子を追い詰めるため、片山洋介に接触を図り、家族の絆に囚われる彼に「家族の影に隠れていては、自分の人生は掴めない」と告げる。洋介は住本の言葉に動揺しつつも、自分が叔母に利用されていることを痛感し、協力を決意する。

工場での違法取引の現場を押さえた住本と松沢は、静子と咲子の対立を利用し、二人の間に亀裂を生じさせる。最終的に、静子は公安による強制捜査の結果、工場が摘発される寸前まで追い詰められる。咲子は工場の未来に疑念を抱きつつも、静子との決別を決意する。

結末

静子が長年築き上げてきた工場は、違法取引の証拠が揃ったことで公安によって閉鎖され、彼女は法の裁きを受けることとなった。家族の絆を利用して権力を握り続けた彼女の時代は終わりを告げる。

片山洋介は公安との協力を通じて新たな人生を歩み始める決意を固め、父・勝との和解を目指す。住本はまた一つ、裏社会の影を抑え込むことに成功し、次の任務に備える。家族愛と権力の対立が生んだ悲劇の果てに、公安の冷徹な正義が再び輝きを放つのだった。

---

工場という一つの舞台が、家族の複雑な絆と欲望の象徴として描かれ、そこに公安の捜査が深く絡み合う事件が幕を下ろした。