第11話 人恋しさ




 重たいような軽いような、柔らかいような硬いような、不可思議な感覚だった。


 かでは少年をお姫様抱っこしてはそのような感想を抱きつつ、ゆったりと廊下を歩いて、風呂場の手前にある部屋の襖に足の指先を器用にかけては引き開き、畳の上に少年を下ろして物置から自分の布団一式とは別に用意してあった布団一式を抱えると、敷布団を畳の上に敷き、その上に少年を寝かせて、掛布団を少年の胸から下へ乗せ、少し休憩と少年の顔の傍らで胡坐を掻いて少年を見下ろした。


(十歳前後。かあ。まだまだ成長するって事だから。そりゃあまだまだ肉体も定まらないって事だよね。そりゃあ、抱えたら不可思議な感覚がするってもんだよねえ。こんなにちっこいんだから………まあ。多分。僕が花に変えられないって信じたみたいだし。僕の他に花に変えてくれるかもしれない生物が居る事も知ったみたいだし。起きたら出て行くよなあ。うん。よかったよかった。これでまた平穏な日々が戻って来るってわけだ。この子が出て行ったら、あの孤樹こじゅって判定者にも煩わせる事もないし。どうせどこかに監視役を置いてんだろうし、この子が出て行ったらもうここには来ないだろうし。あの生真面目な顔からして監視役を置くぐらいの事はしてるでしょ。監視役がどこに居るのかはさっぱり分からないけど。僕は老いない死なないだけのただの人間だし。ぐうたらな人間だし)


 楓はやおら身体を倒しては腕を枕に、横寝の体勢になって少年を見つめた。

 くうくうかあかあ。

 くぅくぅかぁかぁ。

 くぅうくぅうくぅ。

 とても健康そうに心地よさそうに深くふかく眠っている。


「………眠気って確か、うつるんだよね」


 うつらつらつら。

 少年を見ていて眠気が生じた楓は、風呂を後回しにしてまずは眠る事にした。


(僕はただの人間。だから。人恋しくなっちゃったのかな。君が五百枝いおえっていう嘘の名前を名乗る理由は何なのか。どうして花になりたいのか。どうしてそんなにギラギラしているのか。知りたくなるのも人恋しいから、なのかな? う~ん。でも。追究したら面倒な事になりそうだし。回避一択。人恋しさ、さよなら。だよねえ)


 目を瞑った楓はあっさりと意識を手放したのであった。











(2025.3.4)



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