第七夜

 こんな夢を見た。

 

 「もうすぐ戦争が始まる」

 誰かの声が聞こえた。

 

 そこはどこかの学校の敷地のようだった。

 一面に濃い霧が立ち込めている。

 校舎の前にロータリーがあり、枝に対して幹が異様に太い木が植えられていた。

 僕の役割はその木に登って敵を探している人と、連絡を取ることだった。

 

 上を見上げると、確かに枝分かれの始まり辺りに腰掛け、遠くを見張っている人影があった。

 彼に合図を送ると、枝を落としてくれた。

 僕はすんなりとキャッチする。

 それは同じ方を見ろという合図だった。

 

 その方向に視線を向けると、霧の向こうに巨人の影が見えた。

 形こそ人型をしているが、全体的には哺乳類というよりは甲殻類のような印象がある。

 その前方の地面に、大きなクレーターができていた。

 こちら側が大損害を受けているらしい。

 

 「我々が勝つには、あれを探すしかない」

 

 木の上の仲間が、妙に大人びた口調で言った。

 

 頭の中で「あれ」が大砲のようなものとして像を結ぶ。

 そこで僕の次の役割が、「あれ」を探すことに決まったのを理解した。

 何かを引きずった跡のような細長い窪みが、校舎の裏手から校庭の奥に向かって続いている。

 幅はおよそ1メートル半。

 両横にY字形の足跡がある。

 どうやら「あれ」とは生物らしい。

 

 霧に煙る校庭に向かって歩き出す。

 窪みは校庭を斜めに渡り、テニスやバスケットといった様々なスポーツのコートがあるエリアへと続いていた。

 それらを区切るネットがいくつも倒されている。

 その更に向こう、青白い霧に完全に閉ざされた場所に、巨大なナナフシのような姿をしたものがいた。

 色は飴色。

 巨人のいる方角を向いていて、身体を斜めに起こしている。

 まるで自身が生きている砲台であるかのように。

 同時に僕は、このナナフシの化け物が、探していた「あれ」であることを悟った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る