─オーク2─
─神楽。
心の中で名前を呼ぶ。すると少し離れている所に居たはずの神楽が目の前にスっと現れる。
神楽が右手を前へ差し出してくる。
凪は差し出された手をそっと取り手の甲へとキスをする。
神楽は人の姿から徐々に光の粒子となり、凪の右手へと集まっていく。
光がおさまると右手には日本刀を思わせるような形をしており、全体的に赤を基調にし、黒い縁取りがされ熱を帯びていた。
「神楽……なのか?」
゛はい。凪様の神楽です。゛
脳内へと直接声が聞こえてくる。てゆか 凪様のってなんやねん…
「グッ、、」
なん、だ?突然身体に異変を感じすぐにステータスを確認する
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山本 凪 17歳 レベル5 人族
HP 45/60 MP 33/45
攻撃 26+50
防御 20+50
素早さ 31+50
運 35
侵食度 5%
スキル 精霊召喚、精霊武装
-神楽
称号 世界を壊す者
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満タンだったはずのMPが激しい速度で減っていくのがわかる。
「クソっ、燃費が悪すぎるぞ!!」
先程までオークの身体にまとわりついていた火は神楽が消えた事により既に鎮火され、鼻息を荒くしてこちらに突進してくる。
ふぅーー。
凪は息を吐き自身を落ち着かせた。
平和な現代で刀なんて持ったこともない凪は、以前剣道の授業で習った事を思い出し、上段の構えを取りオークを見据える。
左足を前に出し、刀を上に構える。
オークが近づいてくる…
ギリギリまで引き付けろ…
「ここだァぁぁぁあー!!!」
凪は神楽を真下に振り下ろした。
スパンッ。
手元から刀が消え、神楽が姿を現した。
「オークは!?」
「御安心を。そこで真っ二つになっています。」
神楽が指をさす方に目を向けると頭から竹を割ったかのように綺麗に二つに切り裂かれており、切った部分は焼け焦げ血が出てくる気配もなかった。
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
「倒した、のか?」
凪はその場に腰をおろし安堵する。
少し経つとオークの体は消え、灰と光る石だけがその場に残った。
「大丈夫ですか?」
「ふっ。」
神楽の顔を見て少し笑ってしまった。
いつもの無表情な顔ではなく、余程心配なのか眉間に眉を寄せてこちらを見ている。
「あぁ、大丈夫だ!ありがとな。」
「い、いえ。私はなにもできませんでした。」
顔を曇らせ申し訳なさそうにしている。
「そんな事ないぞ。神楽が居なけりゃ今頃お陀仏だ。」
頭を撫でてやり、嬉しそうな顔をしている神楽を見てほっと一息をつく。
少し休憩をし、落ち着いたので立ち上がろうとするが、MPが少ないせいなのかうまく立ち上がることができない。
「凪様?魔石は使わないのですか?」
そんな凪の状態を見て神楽が疑問を口にした。
「魔石?」
これ!と言わんばかりに光る石に向けて指をさしていた。
「使えば魔力が回復します」
「これって魔石だったのかよ…」
と言うか神楽さん…もっと早くに教えといてよ。
「どーやって使うんだ?」
「食べます。」
は?今なんて言った?
「だから食べます。」
「いや、俺口に出してな─」
「出さなくてもわかります。」
あ、そうですか…。まぁサイズ的には飴玉を少し大きくしたぐらいだから、食べられなくはないだろうけど。
そういやゴブリンを倒した時にポケットに入れておいたやつがあったよな。
ポケット中からゴソゴソ。とゴブリンの石を取り出した。
とりあえず食べてみるか……?
勇気を振り絞り一個だけ口に放り込んで、舌の上で転がしてみるが、味はしないな…でもって舐めていても溶ける気配がない。なんか、ビー玉を舐めている感じだ。
「凪様。舐めていても魔石は溶けませんよ。」
「……。」
凪は神楽に指摘され少し恥ずかしくなったのかガリっ。ボリっ。と音をたてながら噛み砕いた。
「ステータス」
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山本 凪 17歳 レベル7 人族
HP 70/70 MP 5/60
攻撃 33+50
防御 28+50
素早さ 39+50
運 50
侵食度 8%
スキル 精霊召喚、精霊武装
-神楽
称号 世界を壊す者
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「確かに少しだけど回復してるな。ゴブリンの魔石一個で5程度だが、ないよりマシだな」
え?と言うか5??MP0だったって事?だから急に刀が消えて人の姿に戻ったって事か。
ここに来るまでにゴブリンは数体倒してきたので
魔石はまだ残っていた。全てを口に放り込むみ噛み砕いた。
オークの魔石はまだ取っておくか。
いつでも食べられるようにポケットに仕舞う。
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山本 凪 17歳 レベル7 人族
HP 70/70 MP 38/60
攻撃 33+50
防御 28+50
素早さ 39+50
運 50
侵食度 8%
スキル 精霊召喚、精霊武装
-神楽
称号 世界を壊す者
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「よし、とりあえず大丈夫だろ。」
ステータス画面を閉じ先程襲われそうになっていた女へと視線を向ける。知らない顔だな…一年か?
彼女の周りには水溜まりができており、どうしたものかと頭を悩ませる。
「おい、大丈夫か?」
「ひっ…あ、だ、大丈夫です。」
ひどく怯えてるな。まぁ無理もねぇか。目の前で火出したり刀振り回しる奴が居たら誰だってこうもなるか。
「とりあえず前を隠せ色々と見えてる」
「ッ……!?」
彼女から視線を切り周囲を見回す。
すすり泣く声が微かに聞こえるから生きてはいるみたいだけど……こいつらどうすっかなぁ。
「あの…」
ん?あぁーさっきの子か…
「どうした?」
「私、一年の
「気にしなくていい。それよりもあのブタの化物は一体だけか?」
「い、いえ、先程までもっと居たのですが一体だけ残してどこかに行きました。」
やっぱりまだ仲間がいるのか…一階に居なかったって事は上に居るのか?
「俺は用があるから移動する。お前はここの連中を頼む」
「え…どこか行っちゃうんですか?」
女の顔が徐々に絶望した顔に染まっていく。
そりゃ怖いだろうが俺も目的があってここに来たから、悪いが構ってる余裕はない。
「知り合いが上に居るかもしれなくてな、行かなくちゃならないんだ。一階にはさっきの化物もいないみたいだし、逃げるなりなんなりしてくれ」
「わ、わたしも…」
なにかを言いかけてる途中で、凪は彼女から視線を切った。
正直連れてってほしいと言われても困る。
オーク一体であの強さだ。何体もいるなら尚の事連れては行けない。
凪は返事もせずにそのまま部屋を出ていった。
「私もあんなふうに強く……。」
少女の言葉はドアが閉まる音と共に掻き消されるのであった。
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