1988名古屋妊婦切り裂き殺人事件、警察が隠蔽した真相をあばく

ケイ

はじめに

【注意!この作品はノンフィクションです】


 いまを去る36年前、1988年3月、名古屋でわが国犯罪史上まれにみる凄惨な殺人事件が発生した。

 臨月の若い妊婦が白昼、アパート自室内にて何者かに首を絞められて殺された。犯人は妊婦の腹部を切り裂くと、中から生きたまま胎児を抜き出した。そればかりではない。胎児の代わりに腹部に電話の受話器を突っ込む等して遺体をもてあそび、その後財布を奪って逃走した。

 夕刻帰宅した夫によって現場の惨状が発見され、病院に搬送された胎児は奇跡的に一命をとりとめた。

 この事件は、その猟奇的手口が地元住民ばかりでなく、全国を震撼させた。愛知県警は大量の捜査員を投入、事件の早期解決をはかった。だが、結局犯人は逮捕されないまま、2003年、殺人の公訴時効を成立させてしまった。

 記者会見で愛知県警は「犯人の手掛かりを一切得ることができなかった。そのため時効成立も仕方がない」と釈明した。

 だが、「手掛かりがなかった」は真っ赤な嘘である。

 県警は実は、捜査の初期の段階で容疑者を一人の男にしぼりこんでいた。だが逮捕に踏み切るだけの証拠をそろえることができず、容疑者をずっと泳がせていたのである。

 そして事件から二年後の1990年、容疑者は犯行に着手。

 だが被害者はからくも逃げ延びた。

 そればかりではない。容疑者の身元を知るに至ったのみならず、県警の犯罪捜査の恐るべきスキャンダラスな手口をも、被害者は知ってしまったのだ。

 すなわち愛知県警は、緊急救助を求める被害者の110番通報に対し、故意に警官の派遣を遅らせ、被害者を容疑者によって殺害させようとはかったのである。

 それにより容疑者を別件逮捕し、妊婦事件本件解決という手柄を立てようとした。

 そのときの被害者とは私である。

 私はこの事実をわが身の安全のために長らく口外してこなかった。だが、時効成立が迫った2001年、意を決してインターネット上にホームページを立ち上げ、社会に広くこれを告発した。

 ホームページ公開は2010年まで断続的に行い、総計10万を超えるアクセスを得た。また5誌に過ぎないもののマスメディアの取材も受け記事として紹介された。

 ホームページのURLは当初より県警に告知してあった。捜査当局幹部二名の実名をあげたものにも関わらず(★この点に特に注目)、県警は名誉毀損罪で私を逮捕することもせず、またホームページを削除せよとの勧告すら一切しないまま、10年の間、告発を黙認し続けた。

 本作品は、その告発文を冒頭に置き、そのあとに今回(2024年)新たに書き上げた詳細な手記を収録して、15年ぶりに再開復活させたものである。

 告発文は原稿用紙60枚に満たない長さで、読み終えるのに15分とかからないだろう。それだけでも事案の概要を知るには十分だ。

 だが、興味を持たれた方は続く手記にも目を通してみてほしい。告発文では語らなかった事実を多く書き込んでおいた。

 容疑者は犯行現場のすぐ近くに、2024年現在ものうのうと暮らし続けている。犯行当時23歳、現在60歳。さまざまな経緯から、警察同様に私もまたこの男が真犯人であると確信している。冤罪ではない。そう確信する理由は、告発文には書かれていない。手記の方に書いた。

2024年10月執筆

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