(7番目)
そうして授業後に高校の校門前に立っていた充輝だったが、やはり名前すら不明な状況では無謀すぎる方法だったようだ。現に渦中の高校生らしい人物は一向に見つからない。むしろ『カッコウほーむ』について知ってはいても、使用していない生徒達しかいなかったのだ。更には子供とはいえ、この学校の生徒ではない人物が何度も声をかけている姿は異様だったからだろう。声をかけさせてくれるどころか、次第に距離まで置かれるようになってしまう。それほどまでに追い詰められていた。
その時だった。周囲からの視線に耐えられなくなっていき、俯いてしまった充輝にこんな声が聞こえてきたのは…。
「…大丈夫?顔色、良くないみたいだけど?」
「あ…。」
「というか…君って隣町の中学生だよね?もしかして迷子?」
「いや、この場合は迷子っていうよりも『誰かを探している。』って方が正しいんじゃ…。」
「え~?決め付けは良くないよ?何かで間違えてこっちの方まで来たけど、戻れなくなったって可能性もあるわけだし。」
「あ~、はいはい。そうかもね。」
「…納得してないでしょう?愛の意地悪。」
「…。」
身も心も疲労していた自分に声をかけてくれた事は嬉しく思えたが、2人で勝手に会話し続けていたのだ。充輝は無言でその様子を見守る事しか出来ない。すると何も言えずにいる事に気が付いたらしく、今度は愛から口を開いた。
「ごめんなさい。勝手に話し込んだりしてしまって。それで…この学校に何の用?この子の話じゃないけど、あなた隣町の中学から来たのよね?」
「あ、うん…。その…よく分かり、ましたね?」
「分かるよ~。だって持っている鞄、指定のヤツじゃん。まぁ、使い込まれたって感じがするけど。」
「あ、ああ…。姉さんのお下がりのヤツだから。えっと…用っていうのは、その姉さんに関する事です。少し前に『カッコウほーむ』で姉さんと一緒にいたはずの人達を探しているんです。この学校に通っているはずの人、らしいから。」
「…ん?姉さん?」
「もしかして…夜にピアノ演奏をしていた子かしら?あなたのお姉さんって…。」
「はい。知っているんですか?」
「知っている、も何も…。」
充輝の話から彼が真歩の弟である事。更には探している人物についても自分達である可能性に何となくでも気が付いたからだろう。愛は思わず言葉を詰まらせ、視線もさまよわせてしまう。そして充輝の話で翔子も愛と同じ考えに至ったらしい。一瞬、何かを考え込むとこう口にした。
「ちなみに何で探しているの?君のお姉さんと一緒に『カッコウほーむ』にいたと思う人を。」
「はい…。その…お願い?をしたかった、んです。また姉さんと会う事を。姉さんもそれを望んでいると思うから。」
「どうしてそう思うのかしら?お姉さんがそう言ったの?」
「い、いえ…。特には言われてません。でも…何となく分かるんです。やっぱり姉弟だから。」
「そう…。」
今は同居している事で弟のような存在がいるが、元々は一人娘だからか。充輝の言葉で理解出来ない部分はあった。それでも彼の言葉に何故か納得もしてしまったのだろう。愛は充輝の言葉に何も返す事が出来なくなる。むしろ愛に出来たのは帰宅していく充輝の後ろ姿を無言で見つめる事だけだった。
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